第53回 「保守ビジネスを考える」 その4

保守営業というフロントエンドを考える

例年より少し早く桜が開花しました。コートを脱いで肩の回りが軽くなりましたが、スギ花粉症の皆さんには五月の連休明けまでつらいラスト一カ月だと思います。ご自愛ください。

さて、保守ビジネスシリーズの四回目。今回をこのシリーズの最終回にしたいと思います。
前回は保守ビジネスの肝であるS-BOM構築の説明をしました。このS-BOMの構築により、保守ビジネス成功への根幹となる「三つの掟」(※2016年2月コラム参照)を叶えることができるようになるはずです。E-BOMから始まってM-BOM、そしてS-BOMの構築まで。「BOMの連鎖」によるメリットを「儲かる保守ビジネス」に活かして欲しいと思います。

※第51回 「保守ビジネスを考える」 その2

今月は少し設計部門から焦点を移して、保守営業について考えてみます。
そのうえで、あらためて皆さんに考えて欲しいのは保守ビジネスと顧客との接点です。ビジネススキームとしての保守営業フロントエンドの在り方です。

保守という言葉が持っているコンサバティブな印象から「待ちのスタイル」でビジネスを進めている製造業が多いと感じています。いわゆる、「待ちの営業」ということです。顧客からの保守部品要求が営業活動の始点ということです。

確かに「保守部品いかがですか?」という感じの営業は少し変です。「そんなに簡単に故障するの?」などという顧客からの反応が起きるかもしれません。しかし、良く考えてみて下さい。故障しない機械・設備はないわけで、もちろん、長寿命は良いとしても寿命は存在するのです。稼動・実働状況をしっかり調査し把握すれば、いつ頃その寿命が来るかの「想定」ができると思います。

具体的なアイデアとして、顧客別の製品の保守ヒストリートレース機能をデータベース化して確立する。そのうえで、例えば改造の有無や、その内容や稼働状況などを把握し管理する。頃合いの時期に「保守部品交換いかがでしょうか? 故障する前に交換しませんか?」という営業活動をする。これぞ「待ちの営業」ではなく、立派な「攻めの営業」です。プッシュ型のフロントエンドと言えるでしょう。
前回も述べましたが、保守業務が予算化されている保守部門が多い中で「来年の保守予算に、当社製品の保守費用を計上してください。」という提案は間違いなく顧客の保守部門から歓迎されるでしょう。

ノンキャッシュ経費計上として減価償却中、もしくは償却終了した設備を保守部門は預かっているわけで、結果、保守部門の最重要ミッションは「稼働させつづける=稼働率を維持する」ということになり、そのための費用は保守部門ミッションを維持するために「当然の費用」なのです。もちろん、その費用を安くすることには異論はないでしょうが、その「当然の費用」をしっかりビジネスにつなげていくことを考えて欲しいと思います。

「当然の費用」に計上していない、つまり「故障した時、不意打ちの費用発生が保守部門で最も恐れる出来事」です。従って、裏打ちのある保守計画予算費用計上のアドバイスはこれからの保守ビジネスのスタイルとして目指す保守営業フロントエンドの形だと考えています。

さらにもう一つの新しいフロントエンドの形として伸ばしていきたいのが「保守部品のネット販売」。販売するまでに届かないとしても「保守情報の公開サイト」は用意しておきたいですね。
イメージとしては…
あなたの会社の保守サイトに、顧客はPINコードを入れてログインし、例えば部品のシリアル番号を入れて検索できるようにしておく。すると、その製品の(顧客用)S-BOMが閲覧でき、間違いなく「欲しい正しい部品」を検索してヒット。そのまま一意の品目コードで発注できる。
これは注文を受ける側の処理としても大変有効だと思います。製品・部品に対する知識が乏しいスタッフでも間違いなく手配業務ができるようになります。

これなら、事務所の中だけでなく、保守現場でもモバイル端末経由で正しい保守部品を見つけることができます。納期・価格や生産中止による代替品情報などの付帯情報も得られるようなイメージは決して絵空事ではないと思います。

さらに、保守義務免責に関わるような生産・保守の中止情報も開示するべきでしょう。このような有機的な情報を提供する保守サイトであれば、あなたの会社の保守業務に対する姿勢に、必ずや顧客の保守部門からの支持が高まると思います。

新たな製品を売り込む手段はいろいろあると思います。その中で、保守部門からの支持を得ることが、「稼働率」を維持したい経営層の製品選定への意識に対し、上手く働きかける強みになると考えています。何より保守営業は「保守費用とのバランスも考えて、そろそろ新製品に替えてはいかがでしょう?」という提案も可能なのですから。製品を販売した後も保守という形で顧客との関係を積極的に維持していくができる。「IoTを筆頭にした、つながる製造業を目指す」というトレンドに合わせて、中小・中堅製造業も取り入れていくべき形だと考えます。

「保守ビジネスを考える」の全四シリーズはいかがでしたか?
やはり何度も説明を繰返したS-BOMの構築実現が最も皆さんに訴求したいポイントです。
「保守の視点でE-BOM・M-BOMを再構築する」という考え方を理解して、製造業の二毛作として儲かる保守ビジネスを実現してもらいたいと強く思っています。
5月からは、また新たなテーマで進めましょう。
何に致しましょう?…乞うご期待ということで。

次回は5月13日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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