第108回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その40~「図面管理からモノ管理へ」これが設計効率改善の一丁目一番地

コンサルタントとしてお預かりする設計部門の初期状態として、設計効率を向上させる試行錯誤を行っている途中であったり、行った痕跡であったり、それぞれの内容を知る機会があります。しかし、多くの事例に「根本的な誤り」が存在しています。ではその「根本的な誤り」とは何でしょうか? それを掘り下げてみたいと思います。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その40~
「図面管理からモノ管理へ」これが設計効率改善の一丁目一番地

10月下旬になって秋の深まりを感じる日々が続きます。今年初の「金宮お湯割り」を頂きました。三冷ホッピーのジョッキの汗から金宮お湯割りのユラユラ湯気へ。小生のお酒の「衣替え」です。三冷ホッピーはプロ野球シーズン終了とあわせて出番が減っていきます。

図面が命(いのち)から抜け出せない。

さて、冒頭の設計効率を向上させる試行錯誤のうえでの「根本的な誤り」についてですが、いずれの場合も設計成果物としての図面(図番)の存在に視野を奪われてしまっていることが問題の根本原因です。

しかし、なぜ、図面にとらわれてしまうのでしょうか?

図面管理システムというファイル管理システムが多くの製造業には具備されていますが、残念ながら、そこには設計成果物として図面が一番重要なアウトプットであるという「勘違い」が存在します。

図面さえあればなんとかなるという「図面が命」志向から脱却できない結果がそうさせるのです。

もちろん、図面は設計成果物として重要ではありますが、一番ではないということです。もう一度図面の役割を考えましょう。

図面は何を目的にしているのか……?

そうです、人間に対し、その部品・ユニットをつまり「モノ」を具象化することを目的としています。逆に、図面を直接理解することができないIT(ICT)からすれば、図面は理解できない設計成果物です。すなわち、図面が設計成果物の主体を占めているということは人間が常に介在することを求めることと同義です。「人間の介在=非効率」から脱却することはできないということです。ITの力を得て効率化を図るための仕組みとして常々述べている流用化・標準化設計プラットフォームですが、図面はあくまで人間に対する情報の一端でしかないわけです。

従って、このコラムで何度も述べているBOMの役割はそのプラットフォームに対し、図面の代替情報としての存在になります。

端的に表現すれば……、

  • 人間:図面
  • IT:BOM

という関係になります。

このようなことをいうと「図面は将来なくなるの?」という質問が出てきそうですが、答えとしては「すぐになくなりはしないが、流通する図面はどんどん減っていく」と考えています。実際、外注に部品製作を依頼するに当たり、CADから直接外注のNC製作設備にCAD情報を直結して、図面流通が行われていない実例が増えています。そうです。人間が介在しない限り図面は不要なのです。

まずはこの関係に気付きを得て「図面が命」からの脱却を意識のうえでも、実際の管理手法のうえでも改革を図る必要があるのです。

「モノが命」を目指す!

ITの力を得て効率化を図るための基本情報となるBOMですが、そのBOMを構成している要素情報は何でしょうか?

それは「モノ」です!

製品を構成するユニット、そのユニットを構成する部品という親子関係を示すBOMですが最後は全て一つ一つの部品に行きつきます。ここで重要なのは製品もユニットも末端部品も全て「モノ」であるというところへの気付きです。

BOMを活用するための一丁目一番地はその「モノ」を指し示す「品目コード」の制定と管理ということです。従って、BOMはその品目コードの親子関係と必要数量が組み合わさったITが管理する情報となっていくわけです。

「図面は一体どこに行ってしまうの?」と心配する必要はありません。ITにとっては不要な図面ですが、その管理はしっかり行ってくれます。人間用に「品目コード」の「従属情報」として図面を管理してくれます。

そうです、BOMでは図面はあくまで従属情報で、これは「BOMがあれば図面はなくてもモノづくりは可能」という基本コンセプトにのっとります。

ITからすれば「人間が図面を見たい時は、図面はここにありますからいつでも見てください」という感覚です。図面は品目コードにひも付いてぶら下がっているので「最新版」がいつでも閲覧できるのです。

これこそが、ユニークな品目コード一つ一つが指し示す「モノ」をBOM構築と相まって管理することが一番大切なことと訴求しているゆえんなのです。そのためには図面管理からモノの管理への意識改革が必須となるわけです。

「図番を品目コード体系として制定してしまう」場合の落とし穴

品目コード体系が制定されていない製造業でも図番体系は、多くの場合制定されています。

ただし、そのルールは多くの場合あいまいになっており、とにかく図面一枚に図番一つという状態がほとんどです。既にここには、モノの管理として破綻する要素が存在しています。

一つの品目コードが指し示すモノは一つです。ユニークであることの絶対原則です。

であれば、一つの図面に表現されているモノが一つである必要があるのです。これを「一品一葉図面」と呼びます。しかし、残念ながら一品一葉図面を維持している製造業を見たことがありません。

典型的なのが、相似形状の部品の寸法を代数表現して別表で表現した図面(これを「バリアント図」と呼びます)。手書きをしていたころの作図時間節約術の名残手法です。この場合一つの図番が多数のモノを表現しており、品目コードとしては不適です。最低でも一品一葉に書き直しておのおのに新図番を与え、品目コードとして代替する必要があります。

さらに、厄介なケースは……、

一品受注型製造業で散見される、一つの受注の都度発番される「工事番号」でくくられた図面群です。

例えば、工事番号を「12345」としましょう。その工事に必要な図面は、その工事番号でひとくくりとされ枝番管理されます。

  • 12345-01
  • 12345-02
  • 12345-03

となるわけです。

ここには二重苦が存在します。それは一品一葉図面の保証がないことと、ほかの工事番号で使われた図面が流用設計されると新たな図面番号が付与されて、同じモノが複数の図面番号を保持することとなり、重複した状態となってしまうことです。これではモノの管理として最も大切なユニーク性を失ってしまいます。

これらの説明から、図番を品目コードとして代替することに反対はしませんが、品目コードとしての必要十分条件を満たすにはそれなりの努力が必要となることは理解してもらえると思います。それだけの努力を払うならば、新たに品目コード体系を新設してモノの管理を行う。そして、人間用の図面はその品目コードの従属情報とし、それらで構成されたBOMを構築する方法を私は強く推奨するのです。

再度述べます。

「BOMさえあれば図面はなくともモノづくりはできる!」のですから。

以上

次回は12月4日(金)更新予定です。

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製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin SMILE V」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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