第107回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その39~一気通貫システム構築を下流側(生産管理)から始める場合の落とし穴とは?

一気通貫システム構築の正攻法は川の流れのごとく、上流側(設計部門)から下流側(生産部門)へ順次稼働させるべきですが、各社の諸般事情から下流側からの構築を余儀なくされる場合も散見されます。しかし、この場合、要件定義への気配りを軽視しますと、落とし穴にはまり、稼働日程が大きく遅延し、さらに上流・下流連携に支障を残す結果を招きます。「転ばぬ先のつえ」として、その実際を考えてみましょう。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その39~
一気通貫システム構築を下流側(生産管理)から始める場合の落とし穴とは?

普段は毎年6月に友人の居るフィンランドにVODKA(ウオッカ)を「仕入れ」に行きます。残念ながら今年はコロナ禍でかないませんでしたが、友人が数本送ってくれました。それがようやく到着。決して「金宮」から乗り換えたわけではありません! たまの味変というやつです。「ホッピー+VODKA=キシリトールの甘み」という公式をかなえてくれます。フィンランドのVODKAは白樺炭でろ過を繰り返しますので、白樺由来のキシリトールがしみ込むのです。その結果のご褒美になります。

なぜ逆流構築が行われるのか?

本コラムの99回「一気通貫システム実稼働への秘訣(ひけつ)」でも少し触れた、下流から上流の順番でシステム構築が進捗(しんちょく)する例ですが、理想でないにもかかわらず、なぜ行われるのでしょうか? 二大事例は以下のとおりです。

1:OSの変化も含め現行システムのサポート切れなどを目前に、追われるようにやむなく始める

2:上流側・下流側の意思疎通が希薄で部門最適を目指したローカル志向のシステム構築となってしまう

原因として指摘できることは、今までの業務フローの見直しや効率改善への働きかかけもなく、漫然と「焼き直しシステム」を目指してしまうことです。
さらに、設計部門と生産部門のコミュニケーションが悪く(壁の存在)、全社効率改善という視点が欠落します。これらにより「一気通貫システム構築という全社横断システムとは?」といったグランドデザインを描く機会を持つことなく、部門最適、現状最適を目指した構築が始まってしまうのです。

いずれにしても、経営層の関与が希薄であったり、経営指標としての指示がなかったりと先述した問題の根本原因は経営層にあるといえます。

我々、ベンダー側コンサルもこのような結果にならないように、できるだけヒアリングを重ねて、未然に防ぐ努力をしています。しかし、最後まで経営層が現れない場合もあり、結果、導入責任者とされる各部門長のマネジメント下で構築が進んでしまうこともあるわけです。

最も危険な落とし穴とは?

皆さんも同意してもらえると思いますが、優れた生産管理システムは優れたBOMを要求します。
「ジャンクIN・ジャンクOUTに成らないように正確なBOM情報をINPUTしましょう」といわれる理由です。

そして、そのBOMの構成要素である「モノ」を指し示す「品目コード」が、情報の基本単位として最も重要となります。

そこで、新たな生産管理構築にあたって、この品目コードの取り扱い方に、これも二大事例を見ることができます。

1:BOM構築は設計部門の範囲だから、今までと同じ「品名と図面(図番もしくはカタログ・コード)」で構築(焼き直し構築)

2:現行の品目コード体系で構築(これも品目コードは設計部門の範囲という発想)

この二つの事例に大きく、危険な落とし穴が隠れているのです。
その落とし穴とは結論からいいますと「品目コード体系」です。

長年の設計部門と生産部門とのあつれき(?)によって、生まれてしまった相互の不可侵気質が全社効率という視点を忘れさせてしまうのです。その結果、「全社の共通言語である品目コード体系の重要性」に対する気付きを失わせ、落とし穴に落ちてしまうのです。

落とし穴に落ちてしまった実例とは……

1の例、2の例、いずれの場合でも、生産管理システム構築も中盤になって、ある日突然(生産部長の言い分では……)技術部長から「BOM構築を考えたい」とか、「意味あり品目コードが行き詰まってしまっているので新たな品目コード体系に置換したい」という申し入れがあります。

その結果、生産管理システムの要件定義の多くの部分がちゃぶ台返しの憂き目を見ることになるのです。もちろん、いまさら逆行はできないと強行突破してしまえば、設計部門と生産部門の情報連携には致命的な欠陥を持ったシステムとなってしまいます。

それを避けるために、要件定義コンサルにまでさかのぼってやり直し、結果、余計な工数や費用が発生し、経営者にはその原因として技術部長主因説が報告されます。

犯人扱いの技術部長は「この件は数年前から頭にあり、試行錯誤していた。生産管理を更新すると聞いて、ようやく決断した」と言います。どちらの部門長にも、普段のコミュニケーション不足を大いに反省してほしいと思いますが、これで再び設計部門と生産部門のあつれきが生じてしまうことは確かです。

まだまだ、このような部門の壁が存在し、本来風通しの良さが売りであるべき中小・中堅製造業のはずですが、残念ながらシステム構築に大きな無駄をもたらします。結果、会社全体の不利益となることは自明で、最終的には経営責任として降りかかってくることになります。

先述しましたが、主因は経営層の全社システムに対するグランドデザインが不明確であることにぜひ、気付いてください。

もちろん、グランドデザインが明確であっても、現業の諸般事情から下流側からの構築はあり得るでしょう。しかし、この場合は常に上流側システムのあるべき姿を想定して下流側要件定義が進むため、落とし穴に落ちてしまうことはないと思います。

上流側は下流側を、下流側は上流側のシステムを意識して、構築するという「当たり前」を実行することです。さらに、この「当たり前」を醸成することができるのは経営層その物であると考えています。

再度述べますが、「全社の共通言語である品目コード体系の重要性」への気付きを必要十分条件として、全社システム(一気通貫システム)としての視点を忘れずに構築を進めることがいかに重要であるかを理解ください。

以上

次回は11月6日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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