第109回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その41~組立図(組図)の功罪を考える

メカ系設計を主体とする設備機器設計などに必須とされてきた組立図ですが、「モノの管理」というBOMの視点で考えると大きな問題を抱えています。もちろん、罪だけではなく功(こう)としての存在も認めますが、3D CADも浸透する中、その存在価値が問われています。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その41~組立図(組図)の功罪を考える

今年も師走になってしまいました。コロナ禍も第3波が日本中をザワつかせています。なじみの飲み屋は忘年会・新年会の予約も無く、ホッピーと金宮の仕入れを例年の3分の1にしたそうです。身近に感じる経済指標です。
巣ごもり忘年会、新年会になりそうです。

組立図の役割とは?

「何のために組立図を描くのか?」という質問を多くの設計部門で問いかけます。そうすると以下のような回答が返ってきます。

1:「組立図を描くことになっています(昔からそういうしきたりです)」

この回答は案外多いのです。作図に時間を費やす組立図を「漫然」と描いているということになります。

同時に疑問に思うのは、どのような「くくり」のルール(ユニット、ユニット群、それらを集合した製品)で組立図を描くのか? という疑問です。実態は、ほとんどが「設計者任せ」であって、設計者がイメージする「くくり」で組立図は描写されていきます。設計者ごとにユニットやユニット群の解釈が異なり、従って類似した製品であっても組立図に存在する部品数も異なってくるわけです。

2:「下流側に部品群がどのような位置や連結関係になっているのか知らしめるため」

確かに、このユニットはどの部品で構成されているのか? というBOMに似た役目を人間用に「形で表現」しているわけです。下流側の組み立て担当には組み立てるための「ヒント」としては有用でしょうが、本来モノつくりの現場には「組立指示図」と呼ばれる、効率よく組み立てるための「作業指示」が存在すべきです。一般的には生産技術と呼ばれる部門、担当が組立図からブレークダウンして作図します。しかし、量産ではない一点受注品製品はその時間が確保できませんので、やむを得ず組立図を縦にしたり横にしたり、さらに重ねたりしながら組み立てているのが実情でしょう。

組立図から組み立ての手順や必要部品を知り、取りそろえるなどの作業には生産技術代行にも似た暗黙の作業が行われて、結果、この作業が暗黙知として属人化してしまっている例がほとんどです。

3:「設計者自身の不具合チェックのため」

本来は「アタリ図面」をしっかり検証して部品にバラす時点で不具合(干渉、空振り)は解消してほしいのですが、組立図の作図によって不具合を発見することは、確かに最後のとりでとして有用かもしれません。さらにアタリ図面から3D CADへ移行する時流ではありますが、設計者の「空間認識能力」の鍛錬のためには3D CAD化に対し、もろ手を挙げて喜べない所でもありますが、この辺りの論議はまたの機会としましょう。

組立図の罪とは?

前項の三つの中で皆さんはどれが組立図の罪多き部分だと考えますか?

私は、1項と2項を挙げます。

漫然と描いていることに対しては「時間の無駄ですね」と言いきってしまえばよいのですが、そうも言っていられない大きな問題があります。それは組立図が「その図面の中に部品を閉じ込めてしまう」ことです。

先述したように組立図のくくりは設計者に一任されます。これはその設計者の設計としての視点、基準でくくられます。

残念ながら下流側の「モノつくり」の視点と必ずしも一致するわけではありません。下流側としては、外注ごとの支給部品や「モノつくりの手順のくくり」で組立図がほしいはずです。であれば、下流側には二つの手段が残されます。

  1. モノつくりの視点で組立図を描きなおす(組立指示図)
  2. 複数の組立図から必要な部品を「抽出」して、モノつくりに適応した部品リストを作る

いずれにしても人間業です。ICTが入り込む余地はありません。従って、非常に時間を要する作業を強いることになりますし、先述したように暗黙知を駆使した属人的な作業が必要とされます。先述した一点受注型のモノつくりでは特にこのような作業が定着してしまいます。

組立図という人間用の情報連携ツールは、組立指示書や組立用部品リストなどに抽出して描き直さない限り、下流側のニーズに応じて、その構成を変えることができないということです。ここが問題の根源なのです。

解決策はBOMを構築すること!

組立図ではなく、まずはE-BOMを必ず構築することです。

いまさら、釈迦(しゃか)に説法かもしれませんがE-BOMはおのおのの部品の親子関係を要素としてひも付けしているだけです。従って、その再構成は非常に容易です。もちろん、設計者ごとのユニットのくくりの認識が異なっていたとしても、最終的にルールを決めて再構築することで徐々に統一していくこともできます。

さらに大きな利点はモノつくり側、つまり下流側は受け取ったE-BOMをモノつくりの視点やつくりの事情に合わせて自由に構成を変え、新たなユニット構成や仕掛け在庫品としてのユニット構成もICTの力を借りて生成することができることです。

ご存じのようにこのように再構成されたBOMをM-BOMと呼んでいます。M-BOM化すれば一点受注製品であっても、ICTの力を借りながらモノつくり現場の事情に合わせて再構成することができて、暗黙知も顕在化させることができます。

組立図という、描かれている部品をコンクリート詰めにしてしまうような手法ではなく、構成されている部品、つまりモノを親子関係でひも付けるだけのBOMという手法で、下流側に連携する手法は必須です。

そして、人間用の組立図に代わる情報は3D CADを使って、上流側も下流側もおのおのの事情に合わせたBOMと整合した3D情報とすべきでしょう。

その意味から、今までの2D的な組立図は不要になってくると考えています。

以上

次回は1月8日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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