第110回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その42~上流側(設計)と下流側(生産)との相互理解のために不可欠なプロセスとは?

コンサルティングの中で、上流側と下流側とが摩擦熱を最も発するプロセスがあります。私は行司役としてその摩擦熱をうまく放熱させることに専念することとなるのですが、しかし、それは相互理解への一歩を踏み出した証しでもあるのです。そのプロセスとは?

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その42~上流側(設計)と下流側(生産)との相互理解のために不可欠なプロセスとは?

謹賀新年

新型コロナ禍、非常事態宣言発出の検討がなされる厳しい年初となりました。私は引きこもって、お正月をよいことにホッピー・金宮を鯨飲気味です。これはこれで幸せですが、今年の中小・中堅製造業を取り巻く環境を想像しますと、少し気がかりでどこかに酔いきれない自分がいました。健康という基本を揺るがす新型コロナ禍では何が起きても不思議ではないと思います。
本コラム愛読者各位にはご自愛を願って、共にこの難局を乗り越えましょう。

下流側の気付き

お預かりしている各社のコンサルティング過程の前半で、大切な要件となる「あるべき姿」の抽出をプロジェクト全体で考え、まとめ上げます。設計部門のみならず全社効率向上のためには、上流側と下流側の一気通貫を前提とした「あるべき姿」にその解を求めていくことになります。

そのあるべき姿と現状の「差異」を認識して、その「差異」を「どのような方法・リソースで何年かけてなくし、そのあるべき姿を実現するのか?」という命題を得ます。今まで全社的に俯瞰(ふかん)した経験が少ないプロジェクトメンバーには新鮮な体験ですが、それ故、苦しいプロセスでもあります。

しかし、このプロセスは初めて上流側と下流側が相互の役割を意識しながら検討することをプロジェクト全体として求められますから、いろいろなことがあらわになっていきます。

「なるほどそうだったのか!」とか「やっぱり!」という類いの事柄です。結果、存在しないと思っていた上流側と下流側との「壁」もあらわになります。まずは壁が認識できれば、それはそれでこのプロセスの収穫といえます。

ほとんどのプロジェクトメンバーは設計部門を中心に生産部門の中心スタッフも混成されています。私のコンサルティングを必要としているわけですから、設計部門が本来果たすべき付加価値に至らない(BOMも構築されていない)設計成果物で生産側はモノつくりを行うことを必要とされ、いわゆる、生産部門の「尻ぬぐい補完生産」を強いられています。

あるべき姿を追求すればするほど、下流側は気付くのです。今まで、わずかな疑問を抱きながらも、何となく漫然と行っていたモノつくりに対し「わずかな疑問は大きな問題だった」と……。

そのとたん、下流側の積み重なった思いは解き放れるのです。
上流側に対し、「今まで提案していたことが正しかった!」とか「設計部門の仕事を押し付けられていた」とか「設計部門が優遇されている」等々。これまで見えなかった壁の主因となる生産部門の「被害者意識」(確かに被害者ではある)が、ここぞとばかりに設計部門プロジェクトメンバーに対して、先ほどの言葉とともに、突き刺さります。

私は、個人攻撃にならないかぎり、この「圧力放出」は遮らないようにしています。意見の空中戦もやむなしです。
ここは行司役としての私のバランス感覚が問われます。例えば、もし「谷口さんはやはり上流側の人だ」という印象を抱かれるとこれからのコンサルティング指導の大きな障害となってしまうからです。本音としても、ここは大切にしているところです。

下流側の声なき声を顕在化することで、人知れず下流側で行ってきた属人作業の存在を認識できる良いプロセスとなります。そして、その作業は大変重要なのですが、皮肉にも下流側に大きな負担を強いている事実を知るのです。

上流側もその存在を認識できて、不本意ながらも下流側に負担を掛けている実際を知ることで「本当の設計効率改善とは何か?」を考える好機となっていきます。

上流側にも言い分がある

上流側つまり主体となる設計部門プロジェクトメンバーにも言い分があります。
特にプロジェクトメンバーの構成年齢は比較的若く、彼・彼女らの言い分とは、「何を設計成果物として下流側に流せばよいのか」という「しきたり」を先輩から受け継ぎ愚直に実行しています。設計部門は多忙が常態化しており、「決して我々が楽をしているとは思っていない」というものです。この言葉にうそはありません。しかし、それ故、問題の根が深いのです。

この「しきたり」というのが問題の根源で、現状否定を無力化する要因です。「しきたりの否定」のきっかけを下流側の気付きから得てほしいと思うのです。

私が設計者をやっていた頃(40年も前ですが)の「そんなこと下流側にやらせておけ、それより早く設計をこなせ」という設計部長の言葉を思い出します。その積み重ねの結果が「しきたり」として確立され、設計部門の効率化改善に目を向ける機会を奪ってしまっていることに気付いてほしいのです。

全社効率改善への相互理解

下流側も上流側が多忙であることは分かっています。プロジェクト全体として「上流側も下流側もこんなに多忙で、それなりに一生懸命やっているのに、なぜこのように徒労感や無駄が多いのだろう?」という気付きが得られれば、相互理解のための建設的なプロセスであったといえるでしょう。

上流側と下流側の間の見えない壁の存在を認識し、その壁を崩してこそかなう、一気通貫という姿を相互にイメージできることが、先述した「あるべき姿」をプロジェクト内で共有することになるのです。

多くのプロジェクトはそのあるべき姿と現状との差異、落差を冷静に見つめることになります。そして、その大きさに慄(おのの)くのです。
しかし、同時にプロジェクトメンバーの目つきも変わっていきます。
それは現状否定の目つきとでも言いましょうか……。

これこそが、上流側と下流側との相互理解へのプロセスが求める結果なのです。

以上

次回は2月5日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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