第111回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その43~対面コンサルとリモート・コンサルとの狭間で……

コンサルを生業(なりわい)とする私には、年初の緊急事態宣言発出はまさに出鼻をくじかれる出来事でした。お預かりする製造業も生産現場を守るために外部訪問を厳しく制限する場合が増え、コンサルの開催形式が対面からリモート方式への変更を余儀なくされます。おのずと私はリモート・コンサルにチャレンジすることになります。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その43~対面コンサルとリモート・コンサルとの狭間で……

ウイルス不活化用途でエチルアルコールの生産量が全世界的に新記録を樹立している様子。最近は毎日手に噴霧するアルコール(約80度)と口に入れるアルコール(25度)と、どちらの方がアルコール量が多いのか? という疑問に駆られます(笑)。このエチルアルコールのほとんどは糖類発酵蒸留酒の純度を限りなく高めたもの。おいしい水で割れば(割り水)立派な甲類焼酎となるかもしれません。ですから「金宮」の原酒が消毒用に消えませんように……と願っているのです。

製造業の生産部門はエッセンシャルワーカーの典型

緊急事態宣言発出後、企業は70%のリモートワーク(在宅勤務)の実現を求められています。いわゆるデスクワーク主体の企業には可能性を感じる数値ですが、製造業の現実を考えると少なくとも生産現場では不可能です。生産現場とは「モノつくり」という「モノ」を対象にした働きですから、その「モノ」が目前になければその働きは成立しません。

その意味ではエッセンシャルワーカーの典型だと思います。しかし、上流側と呼ばれる「設計部門+間接部門」を主体としたグループはリモートワークの実現を躊躇(ちゅうちょ)することなく真剣に考えるべき時期に来ています。

従って、製造業の経営者はエッセンシャルワーカーと生産現場を守るための感染防止対策とリモートワークという新しいビジネススタイルの実現を同時に考えていくことを迫られることになります。

その意味では、真逆の発想でそれらを実現する必要があり、経営者の悩みは深いと感じています。

避けたい経営判断は、その悩みから逃れるように上流側もエッセンシャルワーカーと捉えて、「全員出社!」としてしまうことです。結果、コロナ罹患(りかん)発生で設計部門が二週間閉鎖の憂き目を見る羽目になった実例も見ました。

リモートが可能な上流側を一刻も早くリモート環境にして集団罹患を防ぐことは、製造業をコロナ禍から守るための必要かつ十分な施策と考えています。

設計部門のテレワークの考え方やあるべき姿は既に本コラムで述べていますので参照してください。

第102回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その34~設計部門のテレワークできていますか?

第103回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その35~設計部門のテレワーク考察~設計者はテレワーク設計をどのように考え、感じているのか?~

コンサルをリモートで行って分かったこと

コロナ禍対策を真剣に考え、上流側のリモートワーク(在宅勤務)を実現しようとしている製造業はまずはウイルスを持ち込むであろう要因から排除します。

従って感染流行地域から越境してくる訪問者は、いの一番に訪問禁止となります。
その矢先に東京からやって来る外部コンサルタントの私が存在します。

そして、間もなく、プロジェクトリーダーから「コンサルをリモートで実施することは可能ですか?」というメールが飛び込んできます。私からは「私も初めての経験なので断言はできませんが、コロナ禍の収束が不明な現在、あらゆる手段での継続を試みましょう」と返事をします。想像できたことは「コンサル現場という改革の熱を共有する雰囲気は得られないだろうな」ということのみで、まさに手探りでした。

その手探りという試行錯誤の結果を述べます。

Microsoft Teamsでやってみました。

  1. メンバーの理解度が全く把握できません。
    対面ではだいたい顔色をうかがっていると理解度が把握できますが、解像度の悪い画面を通しての把握は厳しいです。
    従って、何度も「分かりましたか?」を連発。ミュートもあって「無言」が続きます。
  2. 丁々発止(ちょうちょうはっし)と渡り合うような議論は無理。
    ホワイトボードを前に「あーでもない」「こうでもない」と持論を戦わせることは難しく、双方にフラストレーションがたまります。資料の共有はできますが1:Nの関係でN:N(資料を並べて比較検討・水平閲覧)は絶望的。
  3. メンバーに対するけん制ができません。メンバーも全員が集中できているとは限りません。
    昔、居眠りをしている生徒にチョークを投げてくれた先生のごとく、プロジェクトの熱量が下がらないようにけん制をかけるのも私の大切な指導です。

結論として、「一応、コンサルを実行しました」というレベルにとどまります。プロジェクト全体のニーズが「決めごとの再確認」という程度であれば目的達成は可能でしょうが、意見齟齬(そご)のすり合わせなどにはもどかしさを感じ、時間も必要としてしまいます。

どうしたらよいか苦慮していましたが、別にお預かりしている会社のプロジェクト事務局責任者が提案してくれた方法を試しました。

Microsoft Teams+TV会議システム併用(二元方式)=情報量の手段を増やす

  1. 資料共有とオブザーバー参加はMicrosoft Teams。音声とホワイトボードやN:N資料共有はTV会議システム併用。
    やはり高解像度(HD)の大画面は、ホワイトボードや資料の水平閲覧にはありがたいです。視野が広がるといいますか、プロジェクト全体を俯瞰(ふかん)できる安心感もあります。
  2. 欠点はプロジェクト・メンバーの在宅参加はできず、TV会議システムのある会社まで集まってもらう必要があります。その点ではコロナ禍対応としては課題を残しますが、越境者(私)との隔離対策としては機能します。
  3. 二元方式ばかりでなく情報量を増やす手段は5G+4K・TVなど、将来発展の期待を持てますが、在宅でリモート実行可能になるまでにはコストも含めて相当の時間を待たねばなりません。

これら試行錯誤からのフィードバックはリモート・コンサルというケースのみならず、リモート・社内ミーティングにおいても同様の結果を共有できるのではないかと考えています。

今後も知恵と工夫でリモート・コンサルの品質向上を目指す必要性を感じています。生業(なりわい)としている私の新たなノウハウ確立は必須だとも感じています。

対面コンサルという長期にわたる経験値に後ろ髪を引かれ、「リモートはあくまで副次的、補完的手段」と考えがちな自身に対し、今後は「対面が副次的、補完的手段へ世の中平均が変わっていく」といさめています。

以上

次回は3月5日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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