第102回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その34~設計部門のテレワークできていますか?

新型コロナウイルス感染症がもたらしたビジネス環境の激変は、経営層のみならずスタッフ個々にも知恵と工夫を駆使してのBCP(Business Continuity Plan;事業継続計画)の実践を迫ってきます。私は超繁忙であった一昨年前から、設計効率向上を目的とした「中小・中堅製造業設計部門のテレワークのススメ」を推し進めてきました。これはくしくも新型コロナウイルス感染症がもたらした影響において、設計部門の具体的なBCPの実践としても有効であることを証すこととなりました。端的にレビューをしてみたいと思います。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その34~設計部門のテレワークできていますか?

馴染みの飲み屋は自粛という名の下で休業です。自ずと部屋飲みになりますが、「個飲み」という静かに深く沈殿していく毎夜のようです。会話が少ない分ホッピーの茶瓶が多くなります。先の見えない、この災いが早く収束することを祈るばかりです。

私が推し進めてきた設計部門のテレワークとは

私が本コラムで設計部門のテレワークを具体的に提案したのは2018年1月からです。もちろん、今回の新型コロナウイルス感染症の影響を予想していたわけではなく、「逼迫(ひっぱく)した設計工数をいかに見出すのか?」「設計者にとっての意味のある働き方改革の在り方とは?」という大きく二つの視点からの提案です。ぜひ、その当時のコラムを再読ください。

第74回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その11~ 中小製造業・設計部門の「働き方改革」とは? Part1

第75回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その12~ 中小製造業・設計部門の「働き方改革」とは? Part2

これらの提案の根底には設計業務というのは「時間拘束」ではなく「成果主義」であるべき、さらに設計者が求める「ゾーン」という設計に集中できる思考時間への配慮というファンダメンタルズが存在しています。

つまり「会社で設計業務を行う」という物理的位置に存在する必要はなく、求められる成果(設計成果物)が提出できれば居場所は問われないという提案です。そのことはテレワークやリモートと呼ばれる「現場」に存在する必要性への否定を可能とします。

もちろん、実験や試作という時間を支える設備や環境には「現場」の必要性は認めますが、試作開発や新規ノウハウ開発という限られた設計目的に必要なのであり、流用化・標準化設計に伴う設計成果物のアウトプットには設計現場(=会社)は不要と考えています。

ただし、テレワークを可能にするためには大切な必要条件と十分条件があります。先述したコラムで既に述べていますが、再度端的に列挙してみたいと思います。

  1. 流用化・標準化設計プラットフォーム(+CADシステム)
    カタログ化された設計資産を共有し、BOMを構築して、設計成果物として完成させる。その設計成果物を評価・承認する仕組み。テレワークを支える基本的で最も重要なシステムです。
  2. 設計者のPCと上記システムをつなげるIT環境
    流用化・標準化設計プラットフォームと在宅もしくはリモートで設計業務を実行する設計者を結ぶVPN(Virtual Private Network;仮想専用線)などのセキュリティを伴ったネットワーク環境。さらにチームワーク設計を可能とするためのWebミーティング(Microsoft Teams、Zoomなど)。
    コミュニケーション物理層としてのITインフラを整えることです。
  3. 成果主義を支える透明度の高い評価システム
    これは、将来に向けてあるべき姿として捉えてください。何度も繰り返しますが、「設計業務というのは成果主義に基づくものである」という私のコンセプトです。従って、その成果を正しく評価・査定できる、つまり設計部長が鉛筆ナメナメ評価などということではなく、せめて透明度の高い評価システムの構築を目指すことです。

一朝一夕でかなうテーマではありませんが、早速取り掛かるべきテーマでもあります。この辺りの提案も本コラムで行っていますので再読してください。

第92回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その27~設計部門の評価制度を考える その1

第93回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その28~設計部門の評価制度を考える その2

第94回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その29~設計部門の評価制度を考える その3

流用化・標準化設計プラットフォームを構築しておいてよかった! という声

私がお預かりしている全ての会社の設計部門には必ず、流用化・標準化設計プラットフォームの構築を実践してもらいます。

私も含め各社とも、このコロナ禍は想像もしていませんでした。が、しかしです「設計者の思考集中(ゾーン)に合わせた設計業務の遂行」という視点は、くしくも「会社に集まって設計業務する」という行為を不要とする環境に直結させることができました。

いま、私の所には「流用化・標準化設計プラットフォームを構築しておいてよかった!」といううれしい言葉が届いています。

設計部門はモノづくりの源泉情報を生み出す部門です。その部門の業務遂行をテレワークで継続できるか否か?

いつ収束するのか全く先の見えないコロナ禍の影響下にあって、これは製造業としての存在に関わる問題であると思われませんか? まさにBCPそのものです。

こんな嘆きを聞きました。

3密防止のため、設計者を1~2名ずつ会議室に分散・分離して設計させているが、設計資料の持ち込みで会議室が全て使えなくなった。さらに欲しい設計資料や図面が散逸し、どの会議室にあるのか、探す時間が絶望的に増加してしまった……。

貴社は設計業務効率を落とさず、設計者を感染リスクから少しでも救える手段をお持ちでしょうか?

以上

次回は6月5日(金)公開予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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