第25回 構成部品数と標準化設計との関係を考える ~その3~

本年も最終月になりました。中小製造業全般で眺めますと少し状況はよくなってきたという感触ですが、それに伴う利益は・・・?という疑問が払拭(ふっしょく)できません。
前回で最終製品の構成部品数が「多数」の場合を終え、構成部品数が「少数」の場合に考察を移しましょう。
構成部品数が少数という具体的な製品を想像してみたいと思います。

1:製品そのものはシンプルな構成(少数だから当たり前?)だが構成部品の中に要素技術やノウハウが集中する。構造や仕組みは容易に理解できるが、素材や加工レベルの特化ノウハウで他社追従を許さない。

2:前回まで話題にした多数構成部品製品の一構成部品として存在する。例えは油圧・空圧関連部品や電機制御関連部品はその典型で、繰り返し量産を前提とする。

中小中堅の製造業として注目すべきなのは「1」の例でしょう。特化ノウハウでニッチな市場を相手にその市場占有率は高く、自ずと付加価値も高い。
その付加価値の高さの中には個別仕様という「お客様の言うとおり」に設計生産している場合が多いのも特徴でしょう。

ただし、企業30年説(企業にも寿命があり、優良企業とはやされても盛りは30年までという説)はこの業態にも存在し、気が付くと競争相手が現れ、誇る、いや生命線である高付加価値が脅かされ、儲からない。
重ねて個別仕様という「お客様の言うとおり」の形態は残り、儲からない利益をさらに圧迫する。「昔は儲かっていました」という前回の話題と通ずる現実です。

製品構成がシンプルだけに設計成果物によるモノつくりへの情報伝達は不要で、大きく括れば外形図(組図)と仕様を下流側に渡せば下流側に在るノウハウで製品が完成してしまうというモノつくりです。
この環境は最終的に何をもたらすでしょうか?想像力を働かせてください。

まず、個別仕様という受注形態ですから「営業部門」の関与を除外するわけには行きません。
競争相手が出現するわけですから、今までのお得意様にひれ伏して「お客様のおっしゃることは何でも聞きます」という受注確保スタイルとなります。
これ自体は悪いことでは無いのですが、一つだけ条件があります。
それは「何でも聞きます」への対価=利益の確保です。ほとんどの場合、この確保ができていません。営業部門に言わせると「そんなことできるわけない!したら、失注する」となるでしょう。

「利益(=付加価値)なく何でもいうことを聞く」というモノつくりの末路は想像に難くありません。
「お客様の言うとおり」の受注はひたすら技術部門を多忙にし、似て非なる類似製品がお客様ごとに存在する様になります。

「昔儲かっていました」という成功体験は「大福帳カネ勘定」からの脱却を図るタイミングを失わせ、結果、原価捕捉や全社効率を高めるための数字指標捕捉の仕組み構築を遅らせます。
従って、経営環境が厳しくなっても羅針盤無き航海を経営者は迫られることになります。

行く末として営業-技術-生産という仕事の流れすべて、つまり全社的な構造・意識・行動改革を行わない限り、生き残りは難しいということになります。
この場合においても標準化設計がその改革への仕掛けとなります。
特に設計部門の意識改革もさることながら、営業部門の意識改革、行動改革が大変重要になります。

「落ちてくるリンゴを拾う」御用聞き営業スタイルから「木になっている美味そうなリンゴを登って取りに行く」という営業スタイルに変え、例えば「お客様の仕様にドンピシャではありませんが、この標準製品であれば3割安く、3割早くお届けします」というPush型営業が必須条件となります。

標準化という改革は営業というお客様との接点の意識・行動改革も連鎖条件として考えていく必要があることに気づかれたでしょうか?とても大切な要件であると考えています。

「流用化・標準化設計は設計部門で勝手にやれば」などと門外漢を装っている営業部門に最も改革が必要なのです。

次回はこのケースを標準化設計によって、どのように改革していくのか・・・
具体的に深堀してみたいと思います。

次回は2014年1月10日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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