第27回 構成部品数と標準化設計との関係を考える ~その4~

今月は、「構成部品数と標準化設計との関係を考える」のまとめとして、「その4」となります。

昨年12月掲載の「その3」に引き続き考えていきましょう。製品の構成部品数が少数で、構成部品各々に付加価値が存在し、差別化の要素も内在している場合の想定でした。

今回は、「その3」で述べた「営業部門の意識改革に呼応できる設計部門の具体的な改革とは」という視点で進めましょう。

構成部品数が少数の設計を行っている時の設計者の標準的な発想は、その最終製品の全形を示す、例えば組立図の横に構成する部品を部品表として「メモ書き」してしまえばことは済むのではないか?というものです。

たしかに製品は製造できるでしょうが、私は、その代償の存在と大きさに気づいてほしいと常々思うのです。

極端な例としては、すべての構成部品が一枚の図面にすべて書かれている場合さえあります。
そこまで行かなくとも組立図はすべて共通で「わずかに異なる」構成部品のみメモ書き部品表で書き換え、最終製品の差異を表現している実際を多く見ます。もちろん「わずかに異なる」構成部品の図面はそのつど新規に書かれます。

このメモ書き部品表がいかに罪深いのか・・・考えてみましょう。
私はこのメモ書き部品表を「設計成果物の属人化」と呼んでいます。それは流用化・標準化設計とは真逆の行為と結果です。

つまり、組立図とメモ書き部品表という属人情報が表現する「閉じられた設計成果物」となるわけで、その存在を他の設計者が知って共有する機会を尽く失わせる結果になります。
設計者自身でさえ記憶の及ぶ範囲で個人的流用はしますが、あくまで記憶の及ぶ範囲であって、構成部品の少なさをよいことに「調べるのも面倒だから書くか」と似て非なる設計を繰り返すわけです。
さらに下流側からの価値ある不具合訂正依頼の情報があっても設計担当者のみへの属人情報と化し、共有されず、他の設計者が同じ過ちを繰り返します。下流側の徒労感はいかばかりかと想像できます。

何度も本コラムで述べましたが、設計者としての最低限のモラルとして新規設計(図面)を出図することへの責任と新規設計がもたらす下流側への負担をここで意識してほしいのです。
逆に言えば、不要な新規設計(図面)を無くすことは在庫低減や保守業務、さらに下流側の効率を高めることに直結するのです。

経営マターとしてこの問題を放置したままで、製造業としての全体効率を高めることはできませんし、いくら下流側を磨いても全社的な大きな効率改善には結びつかないのです。

では、どのように改革していけばよいのでしょうか・・・
まずは、一品一葉の図面とBOMの構築を目指すべきです。
もちろん、BOM構築を可能とする仕組み、ルールは当然必要十分条件となりますが、考え方から説明しましょう。

構成部品の少なさをよいことに、一枚の図面にてんこ盛りの情報を集約して表現する設計成果物をまず止めることです。
「わずかな差」なのだから図面で表現しないで文字情報で伝えるという誘惑に駆られることもあるでしょうが、その文字情報を図面にメモした瞬間から属人情報となってしまうことにも気づくべきです。
その様な文字情報は他の設計者は検索もできませんし、存在さえ認識できません。

BOMを構築して、「わずかな差」を「属性情報」という設計者全員に共有できる形にすべきなのです。
その属性には「なぜこのわずかな差が必要なのか?そのわずかな差は何を仕様上にもたらすのか?
そのわずかな差をどのように実現するのか?(製造するのか?)製造治具等の共通性は担保されているのか?」等々、BOMを構成する部品が持つ品目コード(一意に表現されたコード)に紐つけられる属性情報がいかに大切かを知って、理解をしてくだい。
そうすれば、ようやく流用化設計のとば口に立つことができます。まずはここまでの理解を設計部門で共有してください。

構成する部品が少ないから多品一葉図面とメモ書き部品表でも製造できてしまう。
だからずっとこの方法でやって来た。でも、「気が付くと何度も何度も似て非なる設計の繰り返しとその設計成果物の累積であった」という反省と、「最近儲からなくなってきて、かつ、設計工数も足りない。
何とか全社効率を高めたいが、設計効率の低さが諸悪の根源の様な気がしてきた」という気づきを無駄にしないために、一刻も早く流用化・標準化設計の実現という改革のプロセスへ設計部門全体を持ち込んでいただきたいと思います。

さて、「その1」から「その4」まで通していかがでしたでしょうか?
製品を構成する部品数でおのおのアプローチは異なりますが、少なくとも構成部品数の多い、少ないがBOM構築への向き不向きとは何ら関係がないことを理解して頂けたなら嬉しく思います。

製品が複数の部品で構成されている以上BOMは必須なのです。
そして、そのBOMが流用化・標準化設計実現への重要な要素であり根本でもあるのです。
さらに付け加えるならば営業部門の密接な関与と意識改革も同時進行で推し進めるべきなのです。

次回は3月7日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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