第28回 大塚商会 実践ソリューションフェアで聞けた悩み

弊社最大の展示会・セミナーである「実践ソリューションフェア」の東京、大阪、名古屋の三大地区を終え、私のセミナーや昨年から実践している製造業相談コーナーを通して経営層からの悩みや気づきを聞くことができました。
そこから二例だけですが紹介したいと思います。

1:放置してきたツケ
ある著名な基礎機構部品メーカーの取締役からの相談でした。
形状が小さい基礎機構部品であるが故、構造も単純です。それが災いして都度個別仕様対応を漫然と繰り返し、結果似て非なる製品が氾濫。
したがって、倉庫に眠る(?)大量・多種の製品の識別(=これと、これは何が違うのか?)もできず、おのずと在庫管理も破綻しているとのこと。
設計部門では図面が塩漬け(=図面の使い捨て)になり流用化・標準化には程遠い様子。

まずは、自社製品群の識別により在庫管理(入出庫管理も含む)から始めたいという相談でした。
「なぜここまで放置したのですか?」という質問をグッと押さえて、一方、これは中小中堅の製造業の実態の一面かも知れないとも改めて感じました。
「脇目も振らず一心不乱にここまで商いをこなし、気が付いたら、この有様でした」という現実を責めることはあまりに他人事としての視点かも知れません。

さて、前置きはここまでとして、愛読者の皆さんであれば、どの様な処方せんを出しますか?
そうです!まずは「品目コードの設定」です。一意の認識ができないから似て非なる物が氾濫するのです。
そして、この品目コードの体を表す「属性」の決定です。
この属性と、品目コードさえ紐つけることができれば、在庫管理を行うための必須条件は叶います。

次は、設計部門改革です。BOM構築です。
「えっ、部品点数2~3点でもBOM構築するの?」などという愚問は愛読者からは出ないと思いますが、あえて「そうです必須です」と申し上げます。
構成する部品点数にかかわらず製品を梱包方法も含めて属性情報から識別、峻別して、関連する図面を代表とするドキュメント類や専用金型・治具の様な生産部門への情報をキッチリ紐つけられる情報構造が流用化・標準化設計に繋がります。

放置してきたツケが高いことは何度か述べましたが、そのツケの存在に気づいたのであれば一刻も早く行動を起こしPay Backすべきです。
そして、何より「ツケ」(問題先送り)をやめて、「現金払い」(都度決済・判断)での上流改革をお勧めします。

2:自力開発の流用化・標準化設計の仕組みの顛末
設備用機器設計組立製造業の社長からの相談でした。
同社には数年前、弊社からの上流改善訴求を理解しては頂いたのですが、業績(=費用)の関係で何とかその仕組みを自力開発したいという方針から、しばらくご無沙汰をしていたお客様でした。

社長からの開口一番は「自力開発を大きく誤解していました」とのこと。
「仕組みを個人で開発するのか、組織で開発するのかの大きな違いを読み違えた」というのです。中小製造業の設計部門の現実として開発スキルの凹凸からどうしても仕組みの開発には個人プレーに依存することになります。
仕組み開発を預けたのはA君としましょう。

事の顛末はこうです・・・
A君は張り切って仕組みを開発するのですが、皮肉なことに流用化・標準化設計を支える仕組みを「蛸壺(たこつぼ)開発」してしまったのです。
大切な属性情報の設定や図面、ドキュメント類の紐つけルールを始めとする基本となる設計部門での運用ルールを、「蛸壺開発」から生み出されるA君の独断と偏見により決定してしまったのです。

A君の同僚から・・・
「少しは我々の考えも取り入れてくれ」「それはA君の視点でしょ!」「それじゃ使えないよ!」
後輩からは・・・
「Aさんの様な長年の前提知識がなければ我々の様な経験の浅い設計者は上手く利用できません」
「経験の浅い設計者に厳しい仕組みです」
等々

「結局、設計効率が上がったのはA君自身と彼の前提知識以上の能力を持つ設計者のみで、新入社員や中途入社社員との壁ができてしまい人間関係までも悪くして退社してしまった。結果、その仕組みが使えるスタッフに仕事が集中することになってしまった。」という悲しい結末を聞くこととなりました。

我々がとても大切にしている仕組みの導入には「設計部門のルールを構築するためのプロセスとしての導入コンサルティング」があります。
これは、我々が第三者として、設計部門の現状を良くヒアリングし、起きている現状を正しく捉えて、経験値、暗黙知等属人情報に偏ることのない、あまねく設計者全員が理解・納得して情報共有できるルールを構築するための羅針盤として存在することを大切にしているからです。
さらに、設計者全員が理解・納得できるルールを構築するための仕組みを導くことの重要性を理解しているからです。
奇しくも、この重要性を証明して頂いた相談でした。

社長からの大変嬉しい言葉として聞けたのは「少し遠回りして要らぬ犠牲を出してしまいましたが、流用化標準化設計には何が大切か、何をやってはいけないかを知ることができました。そこで知り得たことを糧にして大塚商会と共にルールを構築して、今度は実稼働させたい」というものでした。

この言葉には我々も勇気を頂きました。

次回は4月4日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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