第134回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その63~地ならしコンサルタントとは? ~流用化・標準化設計に向けてDXとしての初動はどうあるべきか~

DXとして流用化・標準化設計の必要性に気づき、PJ(プロジェクト)を発足させたが、「さて、ここからどのように進めるの?」となります。その導きのための「地ならしコンサルタント」ですが、その狙いや目標を述べます。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その63~地ならしコンサルタントとは? ~流用化・標準化設計に向けてDXとしての初動はどうあるべきか~

謹賀新年 皆様にとって良き年でありますようにお祈りいたします。 2023年 元旦

お正月は無条件に良いですね! 朝から晩まで誰にかまうことなく飲めます。ホッピー、キンミヤ、それにめでたいお正月のために買い置きしていた「お年玉酒」に手を付けます。今年はフィンランドで買ってきた「Vodka(ウオッカ)」があります。冷凍庫に入れてトロミを付けていただきます。お正月の青空のように透き通った味わい、古希になったご褒美です。

地ならしコンサルタントとは

DXを意識しながらの流用化・標準化設計の実現には、最終的に何らかのICTとしての仕組み(流用化・標準化設計プラットフォーム)を導入することになります。
しかし、今まで多くの設計部門は「仕組みさえ導入すれば何とかなる」という、とんでもない誤解にあらがうことなく導入してしまっていました。仕組み(多くはパッケージ)のメーカーは決められた指導メニューを淡々とこなし、「はい、それではがんばってください」と去っていきます。

残されたPJ(プロジェクト)メンバーは「ところで、何となく使い方は分かったけれど、情報としての中身はどうする?」となるわけです。「だれか考えて」「こんなに忙しいのに無理」となり、PJメンバーも一人抜け、二人抜け……、末路は想像どおりです。

結果、その仕組みは未稼働となり、経営側から「無駄な投資」だったと酷評されてしまいます。つまり、経営側、設計部門、そして仕組みのメーカーの三者ともども不幸な結果として終わってしまいます。

そこで、私は数年前から「地ならしコンサルタント」という活動を前面に押し出して、流用化・標準化設計への改革に向けての基礎作りを目標にしたコンサルタント活動を開始しました。例えていえば、最終的に導入する仕組みを建物とすれば、その建物を支える地盤、土地の整地にあたります。どの会社もお預かりした当初は「大きな岩がゴロゴロ、さらに泥沼で足を取られることも」と、とても建物が建つ状態ではありませんでした。岩を除き、土地改良をPJメンバーと共に進めて、整地を進めていきます。まさに「地ならし」です。

常に2~3社をお預かりしていますが、昨年末にも1社の地ならしが終了して、いよいよ建物(仕組み)をどうするのか? というステージとなりました。「大変だったが、整地を進めることはできそうだ!」というPJメンバーの目の輝きは私にとって最高のリワードです。この地ならしコンサルタントが目指す結果としては、以下の四つです。

1. 「ICTによる仕組みではなく、そこに入れる情報が大切なのだ。この準備ができていなければ結果は同じだ」との気づきを得ること

2. この情報とは……

  • 2S(整理・整頓)された過去の設計成果物と2Sの手法
  • モノを表す一意の認識コードである品目コード体系のあり方(品目コードさえ分かれば図面が無くともモノつくりができるという確信)
  • 検索や技術検討に必要なモノに付随した「属性情報」の考え方
  • 自社的(自社の製品に合致した)BOM構築のあり方
  • E-BOM、M-BOM、S-BOMなどのBOMのカタチとその役割の理解
  • 流用化設計から標準化設計へ移行することの重要性

つまり、どのような仕組みを導入するにしても、これら情報が整っていなければ稼働しないという気づきなのです。

3. 中期経営計画との整合。流用化・標準化設計という改革がしっかりと経営計画実現の施策として存在していること(トップダウンの形成)

4. 設計部門のモチベーションプランニング(やる気の醸成)の必要性理解

少なくとも、PJメンバーの考え方、方向性の一本化や、使命感も含めてのやる気の醸成は確認できるようになります。しかし、これで最終章ではありません。

地ならしコンサルタントには続きがあります

これまでのコンサルタントをフェーズ1と呼んでいます。あくまで考え方やモチベーションに関わる、いってみれば机上での導きです。この後、フェーズ2というステージが待っています。

それは……
たしかにPJメンバーが立っている土地の地ならしはできたようですが、全社的にはどうでしょうか?
抵抗勢力はもとより、設計部門全体、さらに全社に渡る地ならしはこれからです。

少なくとも設計部門全体が「これなら仕事が楽になりそうだ、がんばろう!」というモチベーションの獲得に至らなければ流用化・標準化設計改革は成就しません。となれば、具体的な流用化・標準化設計プラットフォームに設計成果物の2Sの実際の手法や範囲、代表製品のBOMを構築して「ほら、こんなに流用設計が楽になります! その延長線上には標準化設計が見えてきます!」と見せて納得、共感してもらう必要があります。これができて初めて設計部門全体の地ならしができたといえるのです。まさにPoC(Proof Of Concept=概念立証)ステージです。それによって設計者に肌でメリットを感じてもらう必要があるのです。

「設計者は自分のメリットにならないことはやりません。でもメリットを感じたら自らやってくれます」という私の決まり文句の根拠はここにあるのです。
弊社としましても、このPoCステージの重要性に着目し、それをかなえるメニューを取りそろえる努力をしています。PJメンバーのPoCによって設計部全体の「これなら苦労はあるが行けそうだ。何より設計が楽になりそうだ」という合意形成ができれば、めでたく地ならしコンサルタントはフィナーレを迎えることとなります。

流用化・標準化設計プラットフォーム(PDMなど)の未稼働率は8割という記事を見たことがあります。
投資の多くが無駄になっているということです。その主因がどこにあるのかは、今ここでお話ししたことによるものと考えています。これは仕組みを導入する側、仕組みを提供する側の双方に大きな課題として投げかけています。

特に中小・中堅製造業の限られた人材リソースでの環境ではなおさらでしょう。その意味で、その打開策の一助として「地ならしコンサルタント」の実施にまい進したいと思います。

今年は「地ならしコンサルタント」元年にしたいと思っています! 古希ですががんばります(笑)

以上

次回は2月3日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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