第133回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その62~ExcelによるBOM構築の限界~BOM構築の重要性は理解しているがExcel運用の限界に悩む~

BOM構築の重要性は理解し、全社効率を高めるためには必須であると認識している製造業からの相談が増えています。それは、社内PCにインストールされているExcelを手っ取り早くBOM構築のツールとして使用してしまった結果、いろいろな問題を抱えてしまったという話です。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その62~ExcelによるBOM構築の限界~BOM構築の重要性は理解しているがExcel運用の限界に悩む~

今年もこのコラムで1年を締めくくることができました。ご愛読を心から感謝いたします。

一方、コロナは第8波の兆しが見えてきて、ひょっとしたら年末年始のキンミヤ&ホッピーは再び一人飲みになってしまうかもしれません?
チョット気に掛かっている「ビアボール」。アルコール濃度16%とか。ソーダで割らずに、そのままストレートで飲んでみたいです。普段飲んでいるホッピーの濃さと同じくらいかもしれません……。どうりでキンミヤの減りが早いわけです(笑)

ExcelでBOMを構築するとは?

BOM構築することが必要だと設計部門で認識した場合、必ず「どうやって?」ということになるでしょう。
「誰かBOM構築のトライアルをやってほしい」ということになって、白羽の矢が当たったスタッフは「では、どうやって構築するか?」に悩むこととなります。

今、存在するアプリケーションでBOM表現が最もたやすそうに見えるのがExcelです。どう考えてもWordでもパワポ(PowerPoint)でもなさそうです。もっとも、この時点でDB(データベース)の必須性に気付くケースは今回のコラムの対象になりませんが、多くの事例を眺めてみるとやはりExcelでの展開となってしまうのです。「まずは手元にあるアプリでやってみるか」という発想は、結果の共有しやすさという現実も含めて理解できます。

机上のイメージから、まずは設計部門全体で共有(閲覧)できるExcel上でのトライアルは、BOM構築の「はじめの一歩」として良いプロセスと考えています。

しかし、問題は「ではこのままExcelで運用しよう!」となってしまうことです。
ここからExcelで構築された「BOMのような」設計成果物が生産管理システムの有無に関わらず展開され、そのままExcel設計成果物が蓄積されていきます。

そのようなことを繰り返していくと「BOMを構築しているのに共有化が進まない、似て非なるユニットができている、共有してもいろいろな不具合が生じ、重ねて生産側の混乱が生じている」などなどの問題発生に悩み、おのずと全社効率も落ちていくわけです。

ExcelによるBOM構築の事例を見ると……

今まで多くの事例を見てきましたが、典型と思われる例を挙げてみたいと思います。まずはトップの行に並ぶ「項目」です。これを眺めていると上流側・下流側でどのような「やり取り」が行われているのかが見えてきます。

1. 行番号

一意の認識の品目コードがあっても行番号が必要となります。「何行目の部品」というコミュニケーションツールとなっているということでしょう。フィルター機能などを駆使しても検索機能は限定的でやはり行番号ということになってしまいます。

2. 階層(レベル)

BOM構成の階層(親子孫……)を示します。数字が少ないものがユニットと認識されますが、サブユニットなのか構成部品なのかよく見ていかないと見落とします。ここで重要なのはBOM構成のキーポイントである「親子関係」はこの階層という数字のみで表現されており、人間がその関係を読み取り解釈する必要があることです。これは致命的欠点といえます。

3. 品番(品目コード)

品目コード体系を保持している場合は記載されますが、多くの場合いろいろな問題を抱えた体系です(工事番号+枝番、部位+コード、可変長コードなどなど)。品目コード体系がないところは「図番」です。この場合間違いなく「図面が命」のモノつくりです。

4. 品名

モノを表す品名という属性情報です。ただし命名規則は野放図状態です。例えば「モーター」「モータ」「電動機」「駆動機」+大文字・小文字混在という表現で混とんとしています。

5. 仕様

ここは大きく二つの流れになります。

社内設計品
材料、表面処理、特記事項など、図面に記載されている仕様項目と合わせて主に調達情報となります。
購入品
これはメーカーのカタログ番号を転記します。しかし、転記時に-(ハイフン)、スペースなどを入れたり、落としたり、タイプミスも含めて存在し、結果同じ購入部品が異なる品番で存在することになります。

6. 必要数

必要数と単純に説明できません。あるユニットの必要数を1から2へ変更した場合、「その構成子部品は2倍となるのか?」「いわゆる所要量は手計算?」「マクロで自動化?」、このルールがしっかり決められていないと手配される部品数が倍になったり、半減したりで大変なことになります。

以降は下流側に対する情報が主体となります。

7. 購入単価

果たしてこの単価の精度はいかに? というところですが、「最終購入単価」「目標単価」「標準在庫単価」などなど何らかのルールが必要です。毎日とはいいませんが、ある周期で生産管理側にある情報によってアップデートが必要です。この手作業仕事は大きな負担でしょう。

8. 購入先

外注、ベンダー、商社も含めてどこから買うのか、作らせるのかが書かれています。渡り外注(板金、メッキ、塗装)のような場合、購入先1、2、3と並んでいる事例も見ました。

9. 内・外指示

社内生産なのか外注も含め購入するのかの指示です。

10. 在庫

在庫品として常在している部品です。

まだまだ購買部門の情報を含めると項目はどんどん膨らんでいきますが、このくらいで止めておきましょう。とにかく、このExcel表を設計成果物として上流側・下流側で共有するわけです。

なぜExcelでBOM構築してはいけないのか?

結論から言えば、ExcelはDBではないからです。
2項のLV(階層)情報を使って親子関係を表現しても、その親子関係は情報として保存されません。その意味では平面的に羅列した「部品表」と何ら変わりはありません。

従ってBOMの正・逆展開などのご利益にはあずかれません。つまりBOM構築の目的が果たせないということです。

DBによって構築されたBOMはDBのテーブルに品目コードによって保存された「モノ」が製品やユニットの階層情報とともに自分の親や子の情報がそれぞれひも付けられている状態ですから、Excel上に表現されたBOMとは全く異なるわけです。

次は最新版管理ができないということです。特に複数の設計者が勝手にダウンロードして勝手に作業して上書きすることが予想され、どれが最終E-BOMなのか? ということになります。

もう一つ、ダウンロードが際限なくできてしまうということは、似て非なるユニットが設計不具合を持ったまま増殖してしまう可能性もあります。

最後に、流用設計としてユニットを流用しようとした場合、DBであればそのユニットの親品目コードのみを引用してくれば良いのですが、Excelではユニット全体をコピペ(コピー&ペースト)して持ってくる必要があります。部品構成の多いユニットの場合、コピペを忘れた部品やコピペ範囲がはみ出して余計な部品を構成してしまい、下流側が大混乱する事例をたくさん見ています。

BOM構築の必要性を感じ、手短なExcelというアプリでトライアルすることを否定するわけではありませんが、Excelの限界をしっかり認識して、設計成果物として本番使用する前にDBとしての仕組みである流用化・標準化設計プラットフォームの検討を進めてください。

以上

次回は1月6日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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