ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第132回 【特別編】生産革新ユーザー分科会 ワークショップレビュー ~部品不足・納期異常化に耐えうるBOM構築、流用化・標準化設計について考えよう!~
当社の部品構成表管理システム「生産革新 Bom-jin」あるいは生産管理システム「生産革新 Raijin」の導入ユーザー様に参加願って、「なぜ流用化・標準化設計がなかなか進まないのか?」そして「では、どのようにすれば進むのか?」を会社の壁を越えて、赤裸々に語り合っていただきました。そこに見えてきたものとは!
【特別編】生産革新ユーザー分科会 ワークショップレビュー ~部品不足・納期異常化に耐えうるBOM構築、流用化・標準化設計について考えよう!~
キンミヤもホッピーも値上がりです。とうとう1ドル=150円を超えてしまいました。金利政策の相違とはいえ、結果、多くの原材料、エネルギーなどの輸入品コストが上がるわけですから理由としては分かるのですが……。
私はかつて1ドル=80円を体験しています。「Japan as No.1」と言われていました。高くても日本製は価値があるということと理解をしていました。今はどうでしょうか? 何か製造業ニッポンの存在価値が半分になってしまったような気持ちになってしまいます。どうか年寄りの悲哀と言わないでください。
ワークショップの目指したもの
先日、生産革新ユーザー様向けのオンラインワークショップを企画・実施しました。そのワークショップで目指したものは次のようなものです。
「導入ユーザー様同士の交流と各社の取り組み事例の共有を行うことで、ユーザー様の今後の発展に必要なヒントを得ていただき、お客様満足度を高めること」
また、主催者側の当社としては、「ユーザー様の取り組み事例やニーズを知ることで、今後の製品強化や販売、サポート、プロモーション活動へのヒントとすること」というものです。
特に今回は、部品構成表管理システム「生産革新 Bom-jin」あるいは生産管理システム「生産革新 Raijin」の導入ユーザー様を中心としたワークショップとしました。
その背景にはDXというトレンドが中小中堅製造業の背中を後押しして、その具体的な目標として「ECM(Engineering Chain Management)の完成」を目指すことになります。そのECMの基軸となるBOM構築と、流用化・標準化設計への移行へのプロセスや考え方に対する問い合わせ、コンサルタント要請が大変増えているため、実際の構築に関わっているユーザー様に集まっていただき、忌憚(きたん)のない意見や思いの交換の場所を設けたいという思いからです。
Day1とDay2の二日間に分けて開催して、Day1で得た気付きや課題を自社内に持ち帰って検討していただき、その結果をDay2でフィードバック検討します。結果、各社が抱えるいろいろな問題点も俎上(そじょう)に上り、検討内容に深みが出て来たと感じています。
しかし、企業によって取り組みレベルに差があります。大きく三つに分かれるでしょう。
- すでに一気通貫システムが稼働しており、実稼働に向けて試行錯誤を繰り返しながら着実に進捗(しんちょく)している。
- システムの導入が決まり、これからの進め方に多少なりとも不安を抱えている。
- 一気通貫システムを導入して、かなりの時間を経ているが、いまだ課題が残っている。
このようなユーザー様同士を複数のグループに分けて(同じ会社のメンバーも分かれていただきました)、自由闊達(かったつ)にディスカッションしていただきました。もちろん、各グループのマネジメントを担うコーディネーターとディスカッションの捕捉を担うサブ・コーディネーターとは当社の製造SPのメンバーが担当しました。
新しい試みとして
今回のユーザー会では二つの試みを実行しました。
1.完全Web参加型
Zoomをベースに全員がWeb参加であり、当社スタッフがリアル参加でお客様がWeb参加というようなハイブリッド型ではなく、完全Web参加型です。さらにグループ討議には「ブレークアウト機能」を使って全体集会討議、グループ討議を繰り返しながら進めていきました。コンサルタントとしてありがたかったのはブレークアウトした各グループを渡り歩き、おのおののグループでのテーマや雰囲気(熱量)を確認することができたことです。それにより共通するテーマをいち早く理解できたことはありがたかったと感じています。
2.グラフィック・レコーディング
通常、このような催し物には「議事録」という文字記録が残されます。各グループにはサブ・コーディネーターが発言のメモとして記録は残しましたが、新たな議事録のカタチとして「グラフィック・レコーディング(グラレコ)」を採用しました。議事録という「文字の羅列」に代わるグラフィックによる議事録です。
一般的な議事録と大きく異なるのは、どのような事柄がディスカッションされたのか? をグラフィックで残していくことです。文字列の議事録のように枝葉まで詳細に記録はできませんが、参加されたユーザーが会社に帰って「このような内容でした。このような気付き、学びがありました」と最後まで読まれるか否か不明な文字列の議事録を共有するより、このグラレコを見せながら説明したほうが「紙芝居」的な想像力をかき立てて、リアリティーあふれる形で共有できると感じています。雰囲気や温度感もうまく伝わるような気がします。
全体を俯瞰(ふかん)して、イメージとしてその内容を端的に表現してくれる新たな手法だと感じました。
当日のグラフィック・レコーディング例
何が語られたのか?
想定したメインテーマは、次の二つです。
- なぜ流用化・標準化設計がなかなか進まないのか?
- では、どのようにすれば進むのか?
この難題を担うコンサルタントとしても、このテーマは重く、預かる会社のPJメンバーともん絶(?)しながら死ぬほど考え抜くことになるのですが、あえて、包み隠さずこのテーマに果敢に挑戦しようということになりました。
ディスカッションされた多くの意見や感想は紙面の都合でお伝えできませんが、別途、公開可能な範囲で開催レポートとしてお伝していく予定です。
参加各社メンバーの考えとして、流用化・標準化設計の完成が容易ではないことは理解されていました。しかし……
- どこから手を付けたらよいのか?
- 設計部員を中心に全社員をどのようにリードしていったらよいのか?
- 経営層(トップダウン)と社員層(ボトムアップ)をうまく合わせるためにはどうすればよいのか?(先月のコラムのテーマです)
このあたりが現実的な悩みとして聞けました。
先述した3種類に分類される企業が上記テーマに対して持っている体験値やノウハウは大きく異なります。すでに一気通貫システムを導入して、実稼働に向けてシステムを磨いているメンバーからの発言や助言は他のメンバーからすれば「目からうろこ」の連続であったと考えています。想定したメインテーマの課題を解決する具体的な手段・ノウハウの開示であったと思います。
もちろん、各社製品も異なりますし業態も異なるわけで、「デッドコピー手法」ではうまくいかないでしょうが、流用化・標準化設計という改革を進める勇気を得ることはできたのではないかと考えています。
一方、一歩、二歩前を走っている会社のメンバーにとっては、今まで死ぬほど考え抜いて、試行錯誤を繰り返し、その結果で得た「貴重な手段・ノウハウ」を開示するだけでは、他社メンバーとのGive and Takeにならないと考えがちですが、なんと逆に理解しやすいように説明資料まで作成して、他社メンバーに丁寧に説明していただきました。いったいどのようなマインドセットからの行動なのでしょうか?
私はこのように感じ、考えました。
「BOM構築から流用化・標準化設計を実現するために苦労しながら、道なき道を切り開いてきた開拓者としての自負心が、これから自身が作った道を後から登ってくる他社の人々に対し、道しるべや注意すべき断崖を指し示している」のだと……。
他社メンバーから「大変参考になりました! ありがとうございました」の一言が、その方々の存在価値を表しているのではないでしょうか。コンサルタントとしても、その方々のような開拓者・パイオニアを多く生み出すためにもっと注力すべきだと改めて感じました。
今回のようなユーザーのワークショップを継続して開催することの重要性は私にとって大切な気付きでした。
以上
次回は12月2日(金)の更新予定です。
書籍ご案内
当コラムをまとめた書籍『中小企業だからこそできる BOMで会社の利益体質を改善しよう!』とその第二弾としての新刊『BOMで実践!設計部門改革バイブル 中小・中堅製造業の生き残る道』を日刊工業新聞社から出版しています。
BOM構築によって中小企業が強い企業に生まれ変わる具体策とコツをご提案しています。
Nikkan book Store(日刊工業新聞社)