第22回 ローカルBOMという考え方

前回はE-BOMとM-BOMの境目(さかいめ)に存在するBOMとしてP-BOMの可能性を述べました。
E-BOM、M-BOMという基軸となるBOMには普遍性があって、モノつくりを行っている製造業には不可欠です。
しかし、一括りに製造業といってもその業態はさまざまであり、さまざまである以上EとMだけでは実際の業務に十分なモノつくり情報を与えられるとは限らないのです。その意味から購買部門の業務形態に合わせた境目BOMとしてP-BOMの話をしました。

つまり、業務の実態に即したBOM、部門の業態に即した部門特化BOMという考え方はアリだと最近考えています。
私はこのようなBOMをローカル(局部)BOMと呼んでいます。
そして、そのローカルBOMの代表的な存在が前回のP-BOMです。
実はもう一つ注目しているローカルBOMがあるのです。

下図を見て下さい。

そのローカルBOMの名前はS-BOMです。
保守ビジネスに用途を絞って「儲かる保守」を実現させるのがその目的です。私は保守ビジネスを「製造業の第二の収穫」と呼んでいます。製品の価格は叩かれても保守部品の値段はほとんど言い値で買ってもらえます。

つまり、このビジネスをしっかりマネージすると大きな利益源になるのです。一方、野放図な成行き任せの保守ビジネスでは無駄な経費の温床に成ったり、顧客満足(CS)を失う原因にもなりかねません。

  1. 早い納期と推奨保守部品キットの用意(トラブルの早期解消)
  2. 間違いの無い、顧客が欲しい部品・ユニットの供給
  3. 電子基板ユニット等は即交換可能(動作確認済みで調整不要)
  4. 調整等が必要な場合は調整マニュアル等の完備

少なくともこれらを満足させる必要があります。
行き当たりばったりの保守ビジネスを繰り返し、納期が遅い、似ているが異なる部品やユニットの供給を繰返す。交換したが動作しない電子基板等々折角の利益獲得の機会やお客様の信頼をみすみす逃している事例を沢山見てきました。

古い製品の保守部品は設計者に聞かないと判らない。設計者はとうに退職してしまっている。古いファイルを片端から調べたが似たようなバージョンが沢山あって、どれがお客様の欲している物なのか判断が付かない。挙句の果てに、お客様に製品の写真を撮ってもらい矢印をつけてもらって「この部品ください」という注文を平気で受け取っている事例や似た部品をすべて送って「この中のどれかが適合するはずです」という経費の事など何処かに行ってしまっている事例がその実態です。

これでは第二の収穫どころか保守ビジネスが経費増を招き、お客様の信頼も失うばかりです。

上記の4条件に対応させて考えるとS-BOMの働きや存在意義は、以下のように考えられます。

  1. A製品にはA製品用推奨保守部品リストやキットがS-BOM設定されている。
  2. お客様には製品毎のS-BOMが渡されて、お客様からの注文はS-BOM上の品目コードで発注が成される。
  3. 電子基板に必要な動作確認や下調整工程の明記。
  4. 治具や調整マニュアル、送付用梱包材もS-BOMに構成されている。

ここにおいても、S-BOMに登場する品目コード数は、流用化・標準化設計の恩恵としてどんどん集約されることになります。その結果、保守在庫、見込発注等も可能になり即納保守ビジネスも可能になってくるのです。

さらにもう一つ重要なポイントは「原価=価格の分別」です。

製品に使われている部品(ユニット)と保守用部品(ユニット)は機能仕様としては同一のものです。
しかし、原価=価格はしっかり製品と保守は分別する必要があります。
保守ビジネスにはそれに関わる経費が存在します。
その経費を確実に織り込んだ原価をS-BOMの構成を基に積上げて設定し、付加価値を感じてもらえる保守部品価格を設定すべきです。
保守部品1個を特急で作った場合でも、製品のまとめ発注で設定された原価と同じ設定という慈善事業(?)も沢山見てきました。

自社の製品を長く愛用して頂いているお客様から感謝をされながら、利益をキッチリ確保できる「おいしい」保守ビジネスを展開するには、S-BOMは必須なのです。そしてその効果を倍増させるのが、流用化・標準化設計なのです。

次回は10月4日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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