ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第23回 構成部品数と標準化設計との関係を考える ~その1~
製造業も業種業態はさまざまで、設計から生産までという流れは同じであっても、でき上がるモノつくりの結果である完成製品は千差万別です。
今回から、その製品の構成部品数と標準化設計との関係をどのように考えたらよいのかを述べてみたいと思います。
大きなテーマですし、お預かりした会社のプロジェクトメンバーからも悩み、質問が多いテーマでもあるので、数編に分けてジックリと考えていきたいと思います。
部品点数を具体的な数字で分別するのではなく、数百~数千点という多数構成と、数点~数十点という少数構成に大きく分別して考えていきましょう。
今月は多数構成、つまり製品を構成する部品点数が多数である場合から始めます。
では、多数構成とは、どの様な製品群でしょうか?例を挙げてみましょう。
1:電子機器、セット電子機器
ITがらみの高機能家電から測定器まで、比較的小型ではあるが電子部品と呼ばれる微小部品の集合体が多く部品点数は万単位に及ぶこともあります。
さらに、この製品自体が次の「2:設備機器、自動機器」の一部を担う場合もあります(Ex、シーケンサー、測定機器等)。EMSと呼ばれる生産請負専門の製造業態が存在し、標準化されていることが原則のモノつくりです。
2:設備機器、自動機器
いわゆる、生産設備と呼ばれるもので、メカ系、エレキ系、ソフト系がシステムとして構成され技術範囲も広範囲に渡りチームワークが問われます。
その意味で中小・中堅製造業として製造業ニッポンのお家芸と言われる製品群です。
自ずと製品サイズも大型になってくるのが特徴です。
では順番に従って「1:電子機器、セット電子機器」の例を考えましょう。
この例は、本コラムの初期に書いた「第2回 銀座のチンゲン菜」の世界です。
液晶TVの場合、半導体を内製できるような大型家電メーカーを除けば、チップセットと呼ばれる半導体のシステム構成が多くの要素を決定し、その半導体を動作させるコンデンサー、抵抗、インダクター等の回路部品の回路乗数の決定と、それらを接続して回路を構成させる多層基板やそれらを繋ぐワイヤーハーネスの設計で概ねの全体設計は終わりです。
従って設計者に自由度が与えられるのはもっぱら外装、つまりデザイン部分と製品を制御するμCPUのソフトウエアー程度と言えます。チップセットを選択した段階で推奨回路は決まり、自ずと部品乗数も決まるわけです。
さらに設計者は使う電子部品を自由に選択することは原則許されません。
例えばチップ抵抗、コンデンサーは既に標準化されBOMには部品乗数や使用環境を満足させる「標準仕様」を認識する品目コードが並んでいるだけです。
「どこのメーカー品を使うか」の選択は資材部門に一任され、その「標準仕様」が満足されれば「メーカーは問わず、早くて安い」が選択されます。
これは時として半導体チップセットにまでおよびセカンドソース、サードソースと呼ばれる互換部品としての存在ともなります。
この業務を支える重要な機能として、生産管理システムの「一品目コード多社購買能力」が大きく問われる部分です。
これらを設計している電気系設計者は始めから材料とレシピを与えられた料理人のごとく「好き勝手」な回路設計や部品選択は許されない「縛りの強い、標準化設計の世界」に既に存在しているのです。
ですから、彼らにとっては私がセミナーで切々と説いている流用化・標準化設計の内容は「それが何か?」の世界であり、この分野の設計経験を経た設計者は標準化設計に対する理解は「当たり前」という世界です。
ただし、測定器群のように自然界や人間等との接点を持つ製品、つまりアナログ世界とのインターフェイスを必要とする場合はそのインターフェイスの設計は付加価値が高く、設計者がある程度の自由度を持って設計できる環境となっています。
とはいっても、部品メーカーの選択というよりは回路乗数の最適化を求められるわけで、アナログ回路ユニットの標準化は可能ですし、推し進めていかねばなりません。
近年このアナログ・インターフェイスの設計が可能な設計者が不足しているという皮肉な現状を良く耳にします。
標準化されているところは徹底して設計効率を上げ、このような付加価値の高い設計にリソースを持ってくる。
これこそが「脱・銀座のチンゲン菜」のヒ・ケ・ツだと思うのです。
次回は2:設備機器、自動機器の場合を考えてみましょう。
次回は11月8日(金)の更新予定です。
前の記事を読む