第21回 E-BOMとM-BOMの境目(さかいめ)

関西の漫才ネタに「鳥人間」というのがあって頭が人間で体が鳥の話。
この話で好きなのが「人間と鳥の境目見せたろかー!」というツッコミのくだり。何か、その境目、妙にそそられます。YES⇔NO、0⇔1、善⇔悪 等々ロジカルに峻別できる場合はよいとしても、アナログ構造の人間の周囲には白⇔黒の間のいわゆるグレーゾーンという範囲がいつもつきまといます。

今回はそのグレーゾーンとしてのE-BOMとM-BOMの境目(境界)にある問題を考えてみたいと思います。
このグレーゾーンへの考え方はお預かりしている会社のプロジェクトメンバーからも質問が多く、多様な考え方が存在してよい部分だと思います。

既に何度も「E-BOMとは?M-BOMとは?」と解説をしましたし、グローバル化が求める「正」となるE-BOMからモノつくりの環境に応じた「複数」のM-BOMの存在を「シングルE-BOM・マルチM-BOM」という表現で詳しく述べたと思います。

第17回 「シングルE-BOM・マルチM-BOM」の具体例

まずは直接、設計部門からM-BOMをアウトプットできる能力を持つ組織を目指すことが、納期、マンパワーに限界のある中小中堅製造業では理想でしょう。
設計者がしっかりとモノつくりも考えてE-BOMからM-BOMまでを構築するわけですから、手配、モノつくり環境も熟知した設計者のみが、それを可能とします。

反面、そんなスーパーな設計者居るの?という質問が返ってきそうです。
理想なので追求を諦めてほしくは無いのですが、たしかにM-BOMを完成させられる設計者は少数派でしょう。
実際は生産技術やそれに類似した部門や個人(人間情報コネクタさん)が設計部門と生産部門との「境目担当」として存在しているわけです。

ここでモノつくりの場合分けをしてみましょう。

  1. 内製化が進み、ほとんどの部品、ユニット、総合組立が自社内で完結する
  2. 部品単品レベルは外注で製作し、ユニット、アセンブリー、総合組み立ては自社で行う
  3. 部品、ユニット、アセンブリーまで外注で製作し、総合組み立てのみ自社で行う

1:はE-BOMとM-BOMが明確に分離され、M-BOMは内製化に伴うモノつくり情報が多層に渡って付加され、その役目を如何なく発揮します。
従って境目というグレーゾーンは存在しないといえます。

2:はすべての部品を購入品と見なしE-BOMとM-BOMが近似する例です。
従ってこの場合も境目というグレーゾーンは存在しないと言えます。

問題は3:の場合です。
このモノつくり環境の場合、E-BOMという設計の意図に基づいた構成情報に対して、下流側のフロントエンドとして存在する購買部門は、外注手配のための発注情報が必須となります。
すなわち、E-BOMに構成されている部品を外注の製作能力範囲で再分類する必要があります。そして、外注ごとの取りまとめ情報の意図に基づいたBOM構成が必要になります。

さらにこの構成情報は外注の繁忙や能力に伴う転注により変化をします。
これは明らかにM(Manufacturing)側が求める構成情報では無く、EとMの「境目」に存在する購買部門が求める構成情報といえます。

この様なモノつくり環境の場合、Eでも無くMでも無いグレーゾーンを補う「境目構成情報」としての存在はありだと思います。
つまり購買部門が外注手配の意図に基づいた構成情報を新設する必要があると考えています。

この構成情報を「P(Purchasing=購買)-BOM」と呼んでみましょう。E-BOMの設計意図とP-BOMの外注手配意図との関連性はほとんどなく、購買部門のローカルな構成情報として存在すればよいと考えます。

ただし、その構成の組み替えは、先述したように外注の事情に応じて、迅速にかつ自由に組み換えができる様にその仕組みを考える必要があります。

さらに(製番毎の)製造原価の積み上げという側面からも、購買の実態に合致したP-BOMはその存在価値を高めます。

E-BOMでもないM-BOMでもないグレーゾーンの「境目」に存在するP-BOMは能力の高い外注環境の整っている製造業ニッポンではしっかりと考える必要があると思っています。

次回は9月6日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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