第17回 「シングルE-BOM・マルチM-BOM」の具体例

シングルE-BOM・マルチM-BOMの考え方の基本を理解したところで、具体例をもとにもう少し掘り下げてみましょう。
モノつくりをつかさどる環境がM-BOMの形態を変化させるわけですから、その環境の精査は不可欠です。
法律、文化、宗教、人件費、外注環境、調達環境等々ここを誤るとせっかくの構築したM-BOMも「使えないM-BOM」という悲しい顛末になってしまいます。
従って、今回は環境精査が正しく行われたという前提で話を進めたいと思います。

理解を促すために典型例を下に図化します。

解説をします。
まずは基本を支えるE-BOMの存在の重要性は何かといえば「完成度」が必要十分条件です。
何度も述べていますとおり、基が悪ければどこまで行ってもM-BOMは良くなり様がありません。
完成度の高いE-BOMが存在してこそのマルチM-BOMなのです。E-BOM構築の能力を軽んじてM-BOM構築に進むことはモノつくり工程の破たんを生み出し兼ねません。従って再度、その重要性を認識いただきたいのです。

それではマルチM-BOM構築の開始です。

  1. 国内生産(J)の場合
    国内生産の特徴は、外注の多用を許す環境です。自社設計品であっても購入品として扱うことが可能です。
    その意味の詳細は前回のコラムを参照していただくとして、結果、E-BOM≒M-BOMという形になります。
    ただし、内製化の進んだ製造業では全く趣を異にするM-BOMになることも前回説明しました。
    再度、読者の頭の中でレビューをしていただきたいと思います。
  2. 国外(タイ)生産(T)の場合
    タイの場合、日本国内の様に外注製造業が成長しておらず、ましてや納期管理には頭を悩ませる現実です。
    おのずと日本からの重要アセンブリー調達やサブ・アセンブリーとしての中間仕掛品を持ってのモノつくりとなります。
    図の【1】に示す品目名称がそれらに当たります。
    ここはとても大切で、E-BOMにはない新たなモノつくりの形態が発生することになります。
    これこそがモノつくりの環境差がもたらした新たな品目なのです。
    従って、その品目には一意の認識を行うためのユニークなコードとしてE-BOMにはない新たな品目コードが発生し、中間ユニットを指し示す品目コードとして付与されることになります。
    これが【2】の品目コードとなります。

さらに、運用ルールとして検討しなければならない事項があります。
それは「つくり」が異なるアセンブリーの認識・弁別の有無です。
この例の場合
E-BOM上のP010120-1 ベースプレート黒というアセンブリーに対して
M-BOM(T)ではP010200-1という新規品目コードが付与されています。
このことは、アセンブリー仕様は同様(外見・性能同一)であっても「つくり」が異なれば品目コードを変えて管理するというルールの存在を示しています。
これはトレーサビリティ重視の考え方であり、最近のトレンドでもあります。
品目コードをたたけばどこで作られたか判明する仕掛けです。国内生産でもコスト低減目的から海外生産アセンブリーを逆輸入調達して生産。
結果、同一仕様アセンブリーが工程内・市場内に混在することも想定し、この様なルールで運用している製造業が増えてきているわけです。

賢明な読者からは「では、その親の品目コードはそれぞれ変えるべきか否か」という質問が出ましょう。
そこはまさに各社のルールで運用すべきと考えます。
あえて私見を述べれば、構成するアセンブリーが同一仕様(代替可能)であれば親の品目コードは変える必要はないという物です。
読者はどの様にお考えでしょうか?
これらの変遷を経てタイ生産の場合はE-BOM≠M-BOMとなることになります。
いかがでしょうか?シングルE-BOM・マルチM-BOMの意味合いとその重要性に共感頂ければ嬉しく思います。

次回は5月10日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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