第20回 中小・中堅製造業設計部門の流用化・標準化設計の実現を妨げるものとは! ~その2~

前回に引き続き流用化・標準化設計の実現に向けたプロセスで起こりがちな事例を紹介したいと思います。
前回は流用化設計⇒標準化設計というステップがとても大切であることを述べました。
今回はプロジェクト(PJ)を立ち上げ設計部門の業務改革の中心に据えてはみたもののうまく機能しない、つまり流用化・標準化設計を実現できないというケースを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

プロジェクト・チームという名の「烏合(うごう)の衆」にしないために。

何か社内に新たなことを起こす時、プロジェクト(PJ)・チームを都度立ち上げることを「良し」としている経営者を多く見ます。
何かと言えば「PJ立上!」
御社はいったい幾つのPJが同時進行しているのですか?と質問したくなります。

このようなPJに参加している「させられている」スタッフは、「私って幾つPJ持っていたっけ?こんなに忙しいのにまったく!」という感覚です。

何のために、何を、何時までに、どのように、と5W1Hとならずも最低限の目的意識とモチベーションを持って臨んでもらいたいとは思うのですがPJ乱発のツケは重く、設計部門改革プロジェクトの展開はさまよえるままに回を重ねるごとに参加人員が減り、残存スタッフに負荷ばかり増えるという悪循環に陥ります。
その結果、そして誰も居なくなった・・・終了!と相なるわけです。

それでもPJに参加している設計者を私は責められないと思うのです。
何のためにここに居るのかわからない設計者に「いまの仕事を差し置いても、参加してくれ」とは言い難く、ましてや設計部門改革という難度の高いPJという特化した専任業務部隊を強いているわけですからなおさらです。
難度の高い業務を遂行する以上、スタッフに求められる能力や取り巻く人事環境もPJ編成要件としてレベルの高いものを要求されます。

私は下の三つの編成要件をいつも提起しています。

  1. 次期設計部門責任者と幹部候補(世代交代を目論む)
  2. 経営者直轄(人事権関与とリソースに対する判断を速く行う)
  3. 設計部周辺部門の参加(営業、購買、生産部門、特に営業部門の理解と協力は必須)

【1】は必ず存在するであろう抵抗勢力(NOとは言わないがやらない設計者)との対峙(たいじ)を迫られるわけで、【2】の後ろ盾をもらいながら抵抗勢力への理解促進や最悪の場合その排除を試みます。
実際に抵抗勢力の権化であった現設計部長を退かせるという大任を果たしたPJ責任者も居ました。これからの世代を生きていく設計者自身に、その設計環境を自ら改革実行させるという視点が大切であり、この視点はまさに経営者マターです。
同時にPJにモチベーションをもたらし、改革のエンジンとして進捗への原動力となってもらうスタッフ群です。

【3】は標準化設計移行に対し、利害が伴う部門の理解と協力を得るためです。
「何やら設計部門がやっているみたいだ」という周辺部門の無関心(=非協力)を無くし、設計部門改革がもたらす設計情報の付加価値向上という生き残り策を自部門への改革に繋げてもらうための参加でもあるのです。

このことは大変重要で、せっかく設計部門の改革がなされ設計成果物の付加価値が高まっても、それを受け取る下流側に滞りがあっては、「設計情報の付加価値を上げて全社整流させる」という本質には届きません。
従って設計部門の改革を誘い水にして全社改革に結びつけるという長い視点に立った企ても重ねて経営者マターであると考えています。

参考書を買えば勉強ができそうな気がする…
PJを立ち上げれば改革が進みそうな気がする…

経営者(層)がこのような認識のままでいる会社のPJはいつまでも「烏合の衆」のままなのです。

次回は8月2日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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