第113回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その45~コンサル現場の議事録を考える

改革を進めた証として、議事録を作成しています。私の場合コンサルティングをアシストしてくれる弊社スタッフが作成する議事録と、コンサル先のプロジェクトメンバーが作成する議事録の二本立てを基本とします。一見、無駄のように見えますが、そこには仕組まれた効果が存在します。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その45~コンサル現場の議事録を考える

桜が満開です! コロナ禍、残念ながら桜花の下での宴会はご法度なので、シャリ金とホッピーとをステンレス製・マイ水筒に入れ、シャカシャカ振り準備完了!
テクテクと桜を愛でながら、それをズルズルっと頂くのです。最近のマイ水筒は飲み口に工夫があって、良い塩梅の量でシャリ金ホッピー・ミクスチャーが喉を通過します。うまい! きれい! のお花見です。

そもそも議事録を作成する意味は何なのか?

交渉事の場合と改革を共にするコンサルの場合とでは、その存在意義は大きく異なると思います。「言った、言わない」の水掛け論を防止する、つまり争いごとへの抑止としての存在は交渉事の場合認めますが、改革コンサルが求める議事録の働きは私の場合、大きく異なります。

まずは弊社アシスタントが作成する議事録とPJ(プロジェクト)メンバーが作成する議事録の二重作成の意味から考えてみましょう。

弊社アシスタント作成議事録に求めるもの

まずは私のコンサルとしての導きのコンセプトを理解して、「ここが肝」をしっかり捕捉して明記することです。
さらに、「このように方針やルールを決定した」「一度決定した方針やルールをこのように変更した」という試行錯誤のプロセスの捕捉も大変重要です。
さらに、PJからの発言や気付きも捕捉してPJ全体の成長を確認できることも必要です。

これらをしっかりとどめた議事録は将来PJがいろいろな判断の迷いを生じた時、読み返してもらい「改革の原点」として足元を見つめ直してもらうためのものとして存在してほしいと思っています。

PJメンバー作成議事録に求めるもの

重要な付加要件として議事録作成はメンバーの輪番制としています。これはとても重要です。
とにかく、多くは求めてはいません。変な、ひな形の押し付けもしません。唯一、お願いしていることは「素直に」です。「ここは重要だ」とか「決定事項だ」と感じたところを記録してほしいと伝えます。

二つの議事録を比較すると何が見えてくるのでしょうか?

弊社側の議事録は最終的に私の加筆修正を経ての結果ですので、私の意志として存在することになります。その意味では正となる議事録です。一方、PJ側の議事録の内容は「ピンからキリまで」という比喩が当てはまる、それは、それはバラエティーに富んだものです。一番驚いた議事録とは……。

A4、30ページ余の議事録を渡された時です。そこには立錐(りっすい)の余地なく文字が並んでいました。そうです、私のしゃべった言葉を全て録音して、文字に起こしたのです。これを議事録というかどうかは別として、この速記録のような記録物をどのように評価すべきか? 悩みましたが、「この文字列の中から優先順位を付けて要約してほしい」と依頼したら、まともな議事録になって返ってきました。「一言も聞き漏らすまい」という切迫感がそうさせたのでしょうが、逆にメモのような内容もあって、何が書かれているのか本人のみぞ知る的な議事録もあります。

とにもかくにも、メンバーおのおのの個性や考え方、さらに参画意識までもあらわにしてくる議事録です。
しかし、そこから私は多種・多岐に渡る大変重要な「サイン」を得ることができるのです。
以下にその「三大サイン」を述べてみます。

(1)コンサルとしての導きや考えが伝わっているのか?

正となる議事録と比較しながら「ここは試験に出ます!」と冗談交じりにスポットライトを当て、理解を促していた項目が捉えられているのか否か。もう一つの要素は、今回の議事録当番が捉えられていないのか? もしくはPJ全体に理解が及んでいないのか? ということになります。
いずれにしても私には、それを確認して、PJ全体に捕捉が可能になるまで復習を実施することになります。この不理解の発見は大変重要な役割です。何より、私のコンサルとしての導き方に問題を発見する事もあるからです。セルフフィードバックとしても重視しています。

(2)PJメンバーの訴求力の優劣評価

PJメンバーは自部門に戻れば「宣教師」として改革の方針や状況、考え方やルールの統一を自部門スタッフに対し図る必要性に迫られます。この活動は改革の成否と直結します。その「宣教師」としての力量、つまり訴求力は議事録から推し量ることができますし、結果を裏切りません。
しっかりとした文章力や肝の捕捉力そして問題点の発掘は議事録に歴然と現れます。残念なことにPJリーダーが必ずしも最も優れているとも限りません。ですから、私はリーダーの補佐役発掘にこの議事録評価結果を大いに利用します。
文章力と訴求力とは確実につながっています。文章力つまり端的に表現できる能力なしにはリーダーシップは発揮できないということです。

(3)抵抗勢力の発見

PJメンバーが必ずしも改革への賛同者とは限りません。賛同しなくとも疑問符が付いたままメンバーに選ばれ、今一つの改革にのめり込めていない、あえて言えば仮メンバーの早期発見です。仮メンバーからの議事録内容には明らかに私の導きに対する抵抗感を漂わせます。
もちろん、不理解から由来している場合もあり、それらは補講などで補っていくことで良い方向に向かいますが、会社のさまざまなところに不満をもって、意見や不満を重ねていた社員が「彼は会社に対し問題提起をしたがっている」と誤解されてPJメンバーに選ばれてしまった場合や、長年存在する設計者に多いのですが「俺たちはこれでやってきた」という一種の自負心が抵抗勢力としてのきっかけを作ってしまう場合もあります。
私としては、彼らを一刻も早く発見してPJ正メンバーとして活躍してもらう必要があります。しかし、どうしても難しいと判断したならばメンバー交代も他のメンバーに悪い影響が及ぶ前にできるだけ早急に行うべきだと考えています。

導く側、導かれる側の双方の同時議事録はこのような改革プロジェクトの進捗(しんちょく)のみならず、会社運営の意識擦り合わせのいろいろなケースに利用できると思います。私もコンサルタントとしての生業は長くなりましたが、「伝わったと思っていたことがいかに伝わっていないか、理解されていないか」をこの同時議事録からいまだに学ぶのです。

以上

次回は5月7日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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