第114回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その46~30年体系を考える

流用化・標準化設計への改革に必須な品目コード体系ですが、私がプロジェクトチームに指示する「30年間陳腐化しない体系を考える!」つまり30年体系構築に対する、試行錯誤の実際を紹介します。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その46~30年体系を考える

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30年体系としての品目コード体系を考える

30年体系としての品目コード体系の考え方は、今までも述べてきました。

第73回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その10~ 品目コード体系(耐用年数30年以上を目指す品目コード体系とは)

今回のテーマは、30年間陳腐化しない体系、つまり30年後も使える体系を各社のプロジェクトチームがどのように考え抜いていったのか、というところに焦点を当てたいと思います。考え方のポイントを項目別にまとめてみましょう。

1.「30年後のわが社」を想像する

これが一番難しいのです。企業30年説(オンリーワンで風靡<ふうび>した企業でも30年で厳しい状態に陥るという説)を考えますと、成長し続ける企業は現行製品とは全く異なる製品群を開発し続ける必要があります。ひょっとしたら異業種に業態転換を図っているかもしれません。

私自身30年前を振り返って、その当時、現状を予測できていたかといいますと、いささか頼りないのですが、それでもプロジェクトメンバー総員の想像力を束ねて「30年後のわが社」を現在のコアテクノロジーの延長線上からまずは想像するのです。この辺りの想像力が豊かな会社、貧困な会社、その優劣は企業の先進性・積極性に直結していると感じています。真剣に「この業界の世界一になっている」と想像して、そのためには……というある企業の視点には感心させられました。

「私はとっくに退職済み」とか「わが社は存在しているのか?」などの雑念? は消して、イメージのベクトルをすり合わせていきます。なぜ、30年体系に拘(こだわ)るのかといえば、何も指示せずに体系を構築させますと、間違いなく「現状」が主役となってしまいます。つまり、現製品から抜け出すことなく、そこに大分類、中分類程度の「意味ありコード体系」を構築してしまうと現状最適体系になってしまいます。

従って、想像力の使い道として、「30年後はどのような製品群を作っている製造業となっているだろうか?」に注力してもらいます。想像ですからメンバーおのおのに多種なイメージが生まれます。必ずしもこのイメージが一致する必要はなく、「イメージされた多種な製品群全てに耐えうる品目コード体系にしよう」という考え方が重要なのです。
現状最適から将来最適に視野を広げてもらうための「30年体系を考える」という導きです。

結果、自ずと意味ありからランダム傾向の体系に移行していく結果となります。
それでも、プロジェクトメンバーを長く苦しめるのは、「生産現場で品目コードから製品・ユニット・部品・部位などを理解できないと困る」という図面命(いのち)文化から由来する思い込みです。

これこそ30年後の想像力の欠如の結果です。30年後果たして人間が生産現場でモノつくりをしているだろうか……。

そこまで飛躍しなくても「品目コードさえ分かれば図面が無くともモノつくりはできる」というイメージが確立していれば、いずれにしてもICTが解決するという確信が得られるでしょう。

2.桁数は何桁にするのか?

これも案外難しいテーマです。桁数が多ければ良いというものではありません。連携する生産管理システムとのマッチングも含めて、総合的に勘案する必要があります。桁不足になったら英数字混合とか16進数にするとかいろいろアイデアが出てきますが、バーコードやQRコードなども駆使して「手入力」からの解放をまずは考えるべきでしょう。これによって「人間が記憶できる範囲」という思考からも脱却できます。

年間にどの位「新たなモノを生み出すのか?」が想定できれば自ずと桁数は定まってきます。桁不足への安全係数としては「流用化・標準化設計への移行による新たなモノの減少」を織り込むことも大切です。

新製品開発時には「使い捨て品目コード体系=時限体系」を使い、製品化する時に再度BOM構築と正式品目コード体系に置換する方法を採用した会社もあります。これはなかなか考えられた体系だと思います。

3.図番体系との関係は?

今まで「図面命(いのち)」だった設計部門にはもん絶するテーマです。「品目コードさえ分かれば、図面が無くともモノつくりはできる」という考えは頭では理解していても、図面があってのモノつくりという長年の「習性」が、品目コード体系傘下の図番体系という主従逆転を体が受け付けないのです。あまりここを強調すると「図面は無くてもいいのか!」と怒りの頂点に達してしまうメンバーもいます。「図面を書くことが設計だ!」とかたくなに信じていた彼らにはやむを得ないのかもしれません。

図面という人間向けの情報を主体としては、いつまで経ってもICT化はかないませんし、「図面の代わりにBOM構築でICT化を急ごう」という、その辺りの考え方としての脱皮がDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれるトレンドの実際としての行動なのでしょう。
その意味が腹落ちできるように導いていきたいと常々考えています。

以上

次回は6月4日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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