第115回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その47~中小中堅製造業のDXはこう考えよう!(1/2)

コロナ禍がDXの実践を後押ししますが、中小中堅製造業の経営者から「DXをうまく俯瞰(ふかん)し、具体的にイメージを共有したい」という要望が寄せられています。その答えとして「ECM+SCMの実践こそが中小中堅製造業のDXである」と説いています。その考え方を2回に分けて説明します。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その47~中小中堅製造業のDXはこう考えよう!(1/2)

緊急事態宣言のおかげで街中はすっかりDry City(お酒が飲めない街)となってしまいました。アメリカの禁酒法時代さながら居酒屋はシャッターを下ろしています。こっそり酒を飲ませる店もあるようですが、私はシャリ金とホッピーがあれば梅雨も盛夏も乗り切れそうです。でも、アメリカの友人に盛夏を乗り切るためのお酒を頼みました。これは来月に紹介できると思います。

DXというトレンドを中小中堅製造業に当てはめてみる

コロナ禍がDXを後押しして、コンサルティングの中でも話題になります。経営層に「御社のDXをどのように考えていますか?」という問いには「それはDigital Transformation でしょう」「???」という問答が続きます。「具体的に全社で共有できるイメージは?」という問いに関しては「うーん……」となります。

「何かビジネススキームを変革しなくてはいけない」という気づきはあるものの、全社で「わが社のDXはこれだ!」と共有できる状態まではなかなか至っていないのが現状と感じています。

DXそのものが大変広義なテーマですので、中小中堅製造業という「製造業ニッポン」を意識し、私なりに焦点を絞りました。まずは結論から述べたいと思います。それは「ECM(Engineering Chain Management)+SCM(Supply Chain Management)の実践」です。
理解を促進するために、そのイメージを描きました。図を見てください。

中小中堅製造業のDX(Digital Transformation)イメージ

SCMの限界があらわになりました

SCMの一般論はいまさらなので行いませんが、5月、6月にそのSCMに関わる重大事件が起きます。
日本の大手自動車メーカーが部品供給不足で1週間以上ラインストップしてしまいます。皆さんもご存知と思いますが、車制御用の半導体不足がその原因です。あのSCMの優等生であった(はず)の日本の大手車メーカーが部品不足でラインストップしてしまうのです。ましてや今回は大震災というような天変地異があったわけではありません。

半導体メーカーの火災などのアクシデントはありましたが、それに備えるためのSCMではなかったのではないか? という疑問が湧いてきます。「本当にSCMやっていたのかな?」という疑問さえ同時に湧いてきます。
知人も含め今回のラインストップの原因を尋ねて深堀りしますと、下記のような気づきに至りました。

  1. 全世界的な安全運転制御およびEVトレンドで、制御用(CPU)および電力制御用半導体が逼迫(ひっぱく)していた。
  2. コロナ禍でロジスティクスが停滞して、安全在庫需要が世界中で発生した(過剰需要)。
  3. 生産ライン事故を起こした日本の半導体メーカーに偏った部品採用であった。

ここで重ねて疑問が湧いてきます。
1、2項はそれこそSCMの腕の見せ所のはず。「全世界で取り合いになったら」という仮説に基づいてのSCMはその真価というか実力が問われるはず。想像力の欠如でしたという言い訳はできません。しかし、気になるのは特に3項です。

確かに生産ライン事故を起こしたメーカーは古くから車制御用CPUに注力したユニークな存在でしたが、それを採用していたメーカー側の「代替品=セカンドソース」としてのSCM対応はどうしていたのか? つまりA社品が駄目ならB社品という選択は用意されていたのか? 代替品設計といっても、そのままコンパチブルな物からピンアサインやソフト変更までに至るものまで設計要素に関わる幅は広いと思います。であれば、代替設計は明らかに設計責任として、設計部門の担当業務です。

しかし、前出の図を見ると代替品設計ってSCMで定義されるどの部門で実行するのだろうかという疑問が湧きます。
そうです、「ここがSCMの限界だった」といえるでしょう。つまり代替品設計を実行できる設計部門がSCMの原則部門には含まれていないのです。

SCMとは設計成果物を「正」とした考え方であった

設計部門から降りてきた設計成果物に対し、それを「正」としたSCMは設計成果物に対する疑義は原則として存在しません。
そもそも、その設計成果物は「十分に正たる過程を経ている」という原則にのっとっているのです。

大手製造業の設計部門はレビューを何度も重ね、確かにその原則は当てはまるかもしれません。それでも、先に述べた現象が起きます。
ましてや、中小中堅製造業の設計部門に、そこから出される設計成果物に対し常に「正」を求めることは、現実として厳しいということになるでしょう。

しかし、「『正』に近づける努力」はあってよいはず。それが「ECM」なのです。
SCMの限界がコロナ禍であらわになったとはいえ、今後も必須なマネジメントです。ただし、コロナ禍がそれだけでは不十分であり、特に中小中堅の製造業には、単純なSCM対応ではなく、一歩進んだ多次元的な発想が必須であったことを教えてくれました。

中小中堅製造業の多次元発想ECM+SCMとは

「中小中堅製造業のSCMはなかなかうまく成就しない」「いやいや、あれは大企業のテーマでしょ」等々の声は皆さんも耳にし、同意しているのではないでしょうか。

「現実は設計部門から降りて来る設計成果物を、何とかこなしてモノつくりしているのが実際です。とてもSCMまで手が回りません」という本音も聞こえます。「しかし、今回のコロナ禍で製造業ニッポンが抱える部品供給の脆弱(ぜいじゃく)さを知り、やはりSCMの重要性は認めます」という反省も同時に多く聞くのです。

であれば、中小中堅製造業のSCMを成就させるためにも、新たな考え方が必要です。

それが「ECM+SCM」という多次元対応です。「中小中堅製造業のSCMを難しくしていた原因は、設計部門の設計成果物にあった」という前提に立つ考え方です。

蛸壺(たこつぼ)設計がもたらす、似て非なる設計成果物を漫然と下流側に流していたとすれば、それはSCMのコンセプトに正面からあらがうような図式になっていたわけです。

結論からいえば、「ECM+SCM」という一気通貫モデル。これが中小中堅製造業のDXというビジネススキーム変革の具体的な目標であり、全社共有するイメージになると考えています。
次回はECMの具体的な考え方とSCMとの相互作用を述べてみたいと思います。

以上

次回は7月2日(金)更新予定です。

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製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin SMILE V」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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