第116回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その48~中小中堅製造業のDXはこう考えよう!(2/2)

コロナ禍がDXの実践を後押ししますが、中小中堅製造業の経営者から「DXをうまく俯瞰(ふかん)し、具体的にイメージを共有したい」という要望が寄せられています。その答えとして「ECM+SCMの実践こそが中小中堅製造業のDXである」と説いています。前回に引き続き、その後編です。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その48~中小中堅製造業のDXはこう考えよう!(2/2)

東京もようやく梅雨入りしました。前回お知らせしたアメリカにいる友人からのお酒がようやく届きました。やはりコロナ禍でロジが滞っているのでしょう、航空貨物で東海岸から3週間もかかりました。何が届いたか? もったいぶらずにご紹介しましょう。バーボン・ウイスキーです。「なーんだ、バーボンか」と言わないでください。ハチミツを合わせたハニーバーボンです。そうです、ですから甘いバーボンです。これをシェーブアイス(かき氷)にシロップ代わりにたっぷりかけてシャリシャリ、チュルチュルと頂きます。101プルーフ(50度強)のパンチとハチミツの優しい甘さとのコンビネーションがたまりません! かき氷で上機嫌です。お気に入りの「シャリ金」とも併せて、酷暑と予想される、この夏はシャリシャリ・コンビで乗り切ります。

1カ月たってしまいました。まずは前回のコラムをもう一度読み返してください。

第115回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その47~中小中堅製造業のDXはこう考えよう!(1/2)

イメージ図も再度下に掲げます。

図1:中小中堅製造業のDX(Digital Transformation)イメージ

Beforeコロナの悪夢が……

先月あたりから、部品購買納期が異常になってきたという悩みが聞こえてきます。特に高機能樹脂や半導体、基礎電子部品回りの納期が異常をきたしています。皆さんの会社はいかがでしょうか?

Afterコロナを見据えて、経済の立ち直りや自動車のEV移行など、特に設備系製造業では半導体系と電池系がバブルになってきたと感じています。この半導体系と電池系は高機能樹脂や高機能電子部品、それらに内蔵される半導体を多用するので現状が理解できます。

SCM(Supply Chain Management)の重要性は述べましたが、生産管理システムというICTの支援を受けてSCMの実践を中小中堅製造業であっても行うべきです。部品異常納期の改善はしばらく望めないと思います。そのような環境の中で部品所要が発生したら発注する、つまり都度発注を製番ごとにバラバラ行っても、SCMを実行して予想購買情報を基にした発注を行っている会社に部品は既に引き当てられ、都度発注の会社の納期はドンドン後回しにされてしまいます。
しかしSCMだけでよいのでしょうか? SCMの限界については前回述べました。
そして、結論としてECM(Engineering Chain Management)+SCMという「一気通貫モデル」。「これが中小中堅製造業のDXというビジネススキーム変革の具体的な目標であり、全社共有するイメージになる」と述べました。

ECMのアウトプットはSCMの源泉情報であり、全ての部門に影響する

図1を見てください。ECMを実行した成果物は製造業の全ての部門に影響を与えます。
当然、好影響、悪影響の両方があり得るわけです。ここが中小中堅製造業の設計部門に課された最大の命題です。

設計部門からアウトプットされた成果物を「正」としてSCM側が受け取れる、好影響をもたらす、つまりSCM側の効率を落とさない設計成果物としての存在であるべきです。

もちろん、目指すところは好影響であり、各部門の効率が高まって、最終的に全社効率が向上することです。その要因の主体は何かといえば、それは「流用化・標準化設計の実践」です。

結論は「ECMとは流用化・標準化設計を可能にして、それを実践すること」なのです。
流用化・標準化設計プラットフォームの構築およびその実践については本コラムの心柱であり、ここではあらためて述べませんが、先述した異常納期などに耐えるための部品標準化とBOM構築によって初期営業情報からの部品所要量のシミュレーションも可能となります。これは部品ベンダーに購買予定情報として先行部品確保に結びつけることができます。

まずは、流用化・標準化設計プラットフォームに蓄積された種々の情報を全社共有できるようにすることです。それがECMの基本です。
それによって各部門のマネジメント効率を高めていくことができるようになるのです。

部門ごとの関わりを考えますと……

営業部門、販売部門

お客様の言うとおり仕様の受け身受注ではなく、流用化、標準機種をプッシュしていく形になります。受け身受注の主因は「わが社にはこの仕様に近い製品はあるか?」という疑問に答えられないことです。製品情報がしっかりと共有できれば、少なくとも「この製品を流用しよう」となるはずです。営業スタッフが自社製品を知らない、見つけられない製造業を私は多く見ています。

調達・生産(出荷)部門

ここは言わずもがなです。ECMの効果が最も顕著に表れます。似て非なる部品や製品をバラバラと調達・生産していては原価や納期も改善できません。流用化・標準化設計によって同一部品、製品を繰り返して生産することによって、QCDに磨きを掛けることが可能となります。ロジや設置に関わる部門も同様に、梱包(こんぽう)仕様や設置条件の都度対応が減り、おのずと効率が上がります。

保守部門

「製造業は二毛作」と言い続けていますが、二毛作目の大切な利益源泉である保守ビジネスです。保守部門をもうかる部門に改革するためにはS-BOM(保守BOM)構築が必須です。これによって保守の目線で自社製品の保守部品を「正しく、迅速に」届けることが可能となります。従って、このS-BOM構築はECMの大切なテーマとして存在します。

DXをかなえる一気通貫システム

ECMの大切さ重要性は理解していただけたと思います。しかし、この考え方を具体的に実行するためにはICTの支援なしにはかないません。ECM+(密連携)+SCMをかなえるシステムを私は「一気通貫システム」と呼んでいます。
もう少しイメージを具体化するために図2を用意しました。

図2:DXを叶える「一気通貫」システムイメージ

図2のイメージ概念を述べます。

ECM

流用化・標準化設計プラットフォームによって、設計資産を全社で共有できる仕組みを構築して、流用化・標準化設計された「正」となる努力を経たE-BOMを生成します。

密連携

単純に「+」という文字で表現するのではなく、ECM(流用化・標準化プラットフォーム)とSCM(生産管理システム)とを「双方向」に密連携して、生産管理システムを正しく稼働させるためのM-BOM構築の準備を行える密連携です。双方向ですからECM側に対してM-BOM、在庫、L/T(リードタイム)、コスト情報など、設計に必要な情報をSCM側から上げることも重要です。

SCM

最終的なモノつくり情報であるM-BOMを完成させて、QCD向上にまい進します。「正」なるE-BOMから生成されたM-BOMを基に稼働していますから、SCM単独稼働で起きていた、異常納期、設計不具合、類似部品、類似製品などの弊害から逃れることができます。これらによって生産効率は大きく改善され、結果QCD向上が実現できます。

まずは自社の「あるべき姿」を定める

中小中堅製造業のDXのイメージとそれを具体的に実践するための考え方、ICT支援のイメージも併せて述べました。
DXに対するコンセプトとそれを支援するICTとの有機的な結びつきがあって、初めてDXを成就することができます。

DXやICTというはやり・トレンドに流されることなく、中小中堅製造業としての各社の「あるべき姿」をまずは定めて、全社で共有・共感することがはじめの一歩です。あるべき姿無くしてDXの成就はあり得ないと思います。

そして、その改革の原動力となる全社的なモチベーションプランニングを実行してDXという改革を成就してほしいと考えています。

以上

次回は8月6日(金)更新予定です。

書籍ご案内

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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