第117回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その49~設計プロセス革新研究会の講師を承って~蛸壺設計への共感と反省~

公益社団法人大阪府工業協会様の主催で催行される「設計プロセス革新研究会」の講師を承りました。求めるものは「設計業務の効率化」であり、その具体的手法は流用化・標準化設計の実現にありますが、まずは現状の問題点を認識して、あるべき姿への革新を実行するプロセスを研究します。まさにECMを設計部門のDXとして実現させることです。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その49~設計プロセス革新研究会の講師を承って~蛸壺設計への共感と反省~

オリンピックが開催しました。緊急事態宣言下、副次的に期待している首脳外交はそもそも来日せず、まして、ほぼ無観客での開催です。観戦までリモートか……。
私自身、ワクチン接種も終わってこころもち強気になっていますが、変異株の若年層への浸潤もあり、「シャリ金」片手に自宅のテレビで観戦が良い判断だと思っています。

設計プロセス革新研究会

公益社団法人大阪府工業協会様が主催する本研究会は、6月から来年1月に渡って全8回で催行されます。単発催行ではなく「設計業務の効率化」という研究テーマに対して講師対参加者という構図にとどまらず、講師・参加者が問題を共有し、さらに深堀して、あるべき姿への具体的な気づきを得ていくプロセスを目的としています。

設計プロセス革新研究会(公益社団法人大阪府工業協会)

さらに講師各位も大変バラエティーに富んでおり、全ての回を通してコーディネーターとして基礎講演を行う寺倉 修氏(株式会社ワールドテック 代表取締役)と各回の個別テーマに対応する事例講演を担当する講師との二人三脚で進捗(しんちょく)させます。

私は第1回「設計部門の業務を5Sすることで業務の効率化」と第8回「流用設計は設計者からチャレンジを奪うものではない」の2回を担当します。ほかの回もおのおののテーマに対し製造業ニッポンの現場で鍛え抜かれた講師各位が事例講演を行います。傾聴に値する貴重な時間だと思います。

一方、聴講側で私を驚かせたのは一社で13名も参加されていたことです。真剣に設計効率改善に全社的に取り組む姿勢がうかがえます。経営層のトップダウンとして「このままの設計部門では生き抜いていけない」という危機感の裏打ちがあっての多人数参加だと感じました。

コロナ禍もあってリモート参加が9割を超えますが、講師側から聴講側へという一方通行ではなく、ランダムなグルーピングを行ってブレストから得たグループごとの質疑応答も潜在する意見や考え方の顕在化を進め、大変有機的な意見交差をもたらしていて、多くの気づきを得ていくプロセス展開となっています。

私も単発のセミナーは数知れず催行してきましたが、本研究会のような長期展望やバラエティーに富んだ(視点が豊富な)講師群のもたらす実例の展開は初めての体験です。

設計部門の改革という重く困難なテーマは一回だけの講演で具体的なプロセスを理解することは難しいと思います。
私が「設計部門の地ならしコンサル」と呼んでいる一年から二年にわたるコンサルタント業務はまさに今回の研究会が目指すものに類似していると考えています。

設計者同士の気づき=設計者からのボトムアップ=「こうありたい、こうあるべき」の形成なくして、設計効率改善という「言うは易し、行うは難し」の改革は成就し得ないと思っているからです。

蛸壺設計としての気づき

講演後の大切なフィードバックとして聴講者各位からの質疑やアンケートを拝見する機会を得ました。
特に多くの反応を頂いたのは「蛸壺設計」でした。

蛸壺設計とは……

本コラムを愛読していただいている皆さんは「蛸壺設計」が設計効率改善を阻害する根本原因であることは理解されていると思いますが、今回の研究会に参加して「蛸壺設計」に強い気づきを得られた聴講者が多くいたことをあらためて認識しました。

  • 蛸壺設計って、私のことでは……。
  • わが社の設計部門のスタイルそのものです。
  • 蛸壺設計、耳も胸も痛いです。

このような反応が聞け、書かれていましたが、いずれも設計者自身の吐露にも似た反応です。

「何か無駄なこと多いなー」とか「このままのやり方でいいのかなー」という一抹の不安を抱きながらも、日常の厳しい出図納期に追われて不本意ながらも蛸壺設計を続けてしまっているというのが正直な現状でしょう。

その意味において、蛸壺設計の原因の主体は設計部門のマネジメントにある訳で、蛸壺設計に陥ってしまう環境を放置した責任は大きいと思います。私が最近声高に推奨しているDXとしてのECM(エンジニアリングチェーン・マネジメント)とは真逆のマネジメントです。

そうであれば、ここで大きな気づきを得て

  • 蛸壺設計からの脱却への決意形成(設計者のモチベーション・プランニング)
  • 設計部門の二大問題の解消
  • 流用化・標準化設計プラットフォームの構築
  • 設計部門の二階建てリフォーム

という改革に順次臨んでほしいと強く思います。

これらの改革プロセスはまさに設計部門のDXそのものであり、ICTによる支援をうまく活用しながら設計効率の改善をかなえて、最終的には全社効率改善に結び付けてほしいと思います。

蛸壺設計からの脱却に始まって、設計効率の改善(ECM)から全社効率改善(ECM+SCM)に至る全社改革の全容は前回、前々回のコラムに直結する内容なのです。

第115回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その47~中小中堅製造業のDXはこう考えよう!(1/2)

第116回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その48~中小中堅製造業のDXはこう考えよう!(2/2)

9月に本研究会での講演の機会をいただいているので、この辺りの解説・深堀も含めて、あらためて考えや意見を共有する機会としたいと考えています。今から楽しみです。

以上

次回は9月3日(金)更新予定です。

書籍ご案内

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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