第130回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その60~公益社団法人 大阪府工業協会主催 設計プロセス革新研究会 講師を預かって~設計部門の効率改善を背水の陣で目指す!~

昨年に続き大阪府工業協会が主催する設計プロセス革新研究会は、設計部門の業務革新を目的にその考え方や具体的な方法を胸襟を開いて討議・研究する会合です。そこにはコロナ禍や部品不足を要因とする設計部門の追い詰められた現状を垣間見ることができました。講師としての視点で振り返ってみたいと思います。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その60~公益社団法人 大阪府工業協会主催 設計プロセス革新研究会 講師を預かって~設計部門の効率改善を背水の陣で目指す!~

東北、北海道の豪雨がやみません。災害も発生してしまいました。一方、東京以西は酷暑が続きます。日本も気候が極端化しているように感じます。「ちょうどいい塩梅(あんばい)」という言葉がありますが、気候もシャリ金ホッピーの混ざり具合もこの「塩梅」が大切ですね。

公益社団法人 大阪府工業協会主催 設計プロセス革新研究会

当協会主催の設計プロセス革新研究会は、昨年に続き本年も開催の運びとなりました。

公益社団法人 大阪府工業協会

全8回の開催で、参加者は設計部門を持つ中小中堅製造業の設計部門の幹部層です。日本を代表する中堅製造業も参加しており、企業名を問わず抱える問題の普遍性を感じました。私は第1回と第4回の講師として本会を預かります。

本会の特徴は、いわゆるセミナーという一方通行ではなく、三部構成となっています。

一部
コーディネーターが設計部門業務の基本的な視点や考え方を示しました
二部
講師としての私は具体的に起こっている設計部門の現状指摘やその原因への問題提起を行いました。特にECM+SCMという考え方の重要性と中小中堅製造業のDXとしての具体的な方法であることを訴求しました
三部
研究会としての肝である質疑応答をはじめとして、意見や考え方が全員で討議されました

同じ製造業とはいえ、最終製品は異なるわけで、枝葉の相違が存在するなか、「設計部門の効率を改善するために」という論点で意見・考えが収束していく様を見て参加者の真剣度を感じることとなりました。逆にいえば、それほど現状は厳しく「何とか改革の糸口を見いだしたい」という意識の表れだと思います。

withコロナと簡単にいいますが、それに伴う生産現場というエッセンシャルワーカー集団の不安定な工数確保と部品不足はSCMとしての下流側全体を疲弊させます。
従って、設計部門の効率を少しでも改善して、SCMがうまく働く環境を一刻も早く構築したいと考えているのでしょう。しかし、初回の段階ではその方針や具体的な手段については暗中模索状態で、この研究会で見いだしたいということだと理解しています。

参加した幹部層から聞けた本会に参加した理由や現状(私見を添えて)

三部の全体討議では有意義な意見交換や現状認識が行われました。その中で私の記憶に強く残ったものを列記します。

  1. 現在、顧客は国内外共に列を作って受注の順番を待ってもらっている(納期協力加重というご褒美を持ってくる発注先もあるとか=とにかく納期ということ)。

    (私見)「何とうらやましい」などと言っていられません。この状態の継続は企業の存在価値が少しずつ失われていくばかりか、待つことにシビレを切らした需要家は多少のリスクを冒しても他社(アジア製)の開拓に走る可能性もあります。コンペティターを増やす結果にもなりかねません。

  2. 受注は受けられない+部品不足で出荷できないという二重苦である。キャッシュフロー効率は悪化の一途である。

    (私見)先月のコラムで述べたとおりの現象が残念ながら起きているわけです。

  3. 設計工数の限界=売り上げの限界の典型となっていて、何とか設計効率を向上させるべく、社長命が下っている。

    (私見)経営層もようやく(?)気付いてきましたが「方法論は考えろ」的な丸投げをされた設計部門責任者は頭を抱えています。

  4. 流用化・標準化設計への移行が必須と考えているが、その過程・進め方(プロセス)が現状の方針で良いのか否かの確認をしたい。

    (私見)これは重い意見です。設計部門責任者として設計部門効率改善は必須という認識を持ち、既に試行錯誤の段階に踏み込んではいますが、いろいろな矛盾や現業との摩擦も起きて、「本当にこの方針で良いのだろうか?」という「漠然とした不安を抱く」というのです。これだけしっかりと先見の明(めい)をもって改革に臨んだ設計部門責任者でさえ、やはり「不安」なのです。「この研究会でこの不安を払しょくしたい」と述べていました。思わず、心の中で「頑張ってください!」と叫んでしまいました。

  5. 最終的には受注の取り方(営業改革)も必要と考えている。

    (私見)これは大変重要な意見です。このコラムで何度も述べてはいることですが、設計部門の非効率の一因は営業部門にあります。従って最終的には営業部門の改革はECM+SCMの最後の仕上げであると思っています。

5項目に集約しましたが、それだけでも設計部門の効率改革へのアプローチの難しさは理解してもらえると思います。本研究会のテーマである「設計プロセス革新」を文字にすることは容易でも、それをかなえるための方針設定や具体的な行動は多くの困難を伴っているのです。しかし、そうであっても生き残りを掛けたDXとしての重点施策であることに間違いはありません。

第4回の本研究会は10月開催予定です。その会で討議された内容は再び講師の視点で本コラムにて紹介をしたいと考えています。

以上

次回は10月7日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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