第152回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その81~設計部門からM-BOMをアウトプットするためには!

設計部門の設計責任としてのアウトプットはE-BOMです。しかし、モノつくりBOMの最終形であるM-BOMを設計部門から直接アウトプットしたいという希望を受けることが時としてあります。不可能ではありませんが、それをかなえる「条件」をしっかり認識する必要があります。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その81~設計部門からM-BOMをアウトプットするためには!

梅雨入りが遅れています。本コラムがアップされる頃には梅雨明けとなっているのでしょうか?
シャリ金に梅酒を掛けて酒だけは入梅いたしました。梅雨が明けるまではこのスタイルで参ります。

E-BOMとM-BOMとの違いを再度認識する

「いまさら」という気持ちを持つかもしれませんが、我慢をしてお付き合いください。しかし、BOMの原点を久しぶりに吟味することも悪くはないでしょう。

E-BOMは、「設計の視点から製品設計仕様を満足させるための部品(品目)構成情報=モノつくり情報の源泉」とあります。構成部品(品目)の親子関係や数量が基本的な情報として成立します。製品を構成する全ての部品が正しい親子関係と数量で構成されます。

M-BOMは、「E-BOMにモノつくり情報を付加したBOM=BOMの最終形=実際にモノをつくるためのBOM」とあります。
E-BOMとM-BOMとの相違がこの「モノつくり情報」の存在です。

この「モノつくり情報」とは何でしょうか?

設計者はE-BOMを製品の部品構成として指示します。購入品はカタログ品番を指定することになりますが、それでも、どのベンダーから価格と納期を交渉して購入するかというプロセスを必要とします。
まして自社設計(特にメカ系)部品は、その部品の最終形が図面情報として定義されます。この部品をどのように作製するのか、材料はどうするのか、そしてどのように定義された最終形にするのかは特殊な場合を除いてM-BOM側に委ねられます。

これらが「モノつくり情報」の主体です。実際にモノを作るためのBOMと定義している訳ですから、モノつくりには必須ということになります。

この辺りを説明すると「わが社にはM-BOMなど存在しないが製品はできている」と反論される方がいますが、生産側に勘と経験、暗黙知等々の属人情報がモノつくり情報として存在しているのです。それ故、「知っている人、知らない人、誰かに聞かないと分からないなどの不都合」が生産効率を下げてしまっています。

つまり、このモノつくり情報が生産側(全社)に共有できることがM-BOMの存在意義なのです。

従って、このモノつくり情報を設計部門がどの程度理解・認識しているのか? 自社のモノつくりをどの程度理解しているのか? がM-BOMを直接アウトプットする大切な条件になります。

モノつくり情報の難易度を知る

1. 高難度
メカ系部品の内製(自社内製作)が多用されている場合は、生産側にモノつくりに対するノウハウが蓄積されており、そのノウハウや工程が設計部門に理解されていない限り、M-BOMを直接アウトプットすることはできません。
例えば、鋳物製の部品を内製工場製作する例として、木型→砂型→鋳物吹き→面だし研削→最終研削等々、これだけでも材料鋳鉄の調達も含めて、E-BOMとは比べ物にならない階層の深さがM-BOMに求められます。さらに塗装工程が社内工程で行われる場合の複雑さとなれば、これ以上の説明は不要でしょう。
内製力は製造業としての重要な力です。他人(他社)に左右されないモノつくりを可能とし、L/T(リードタイム)や原価の管理を自らマネジメントすることが可能です。このことは中小中堅製造業の生き残り手段として重要です。そのため、そこにあるM-BOMはモノつくり情報の塊であって積年のノウハウそのものといえるでしょう。

2. 中難度
メカ系部品の外注化が進んでいて、切削系は外注A、研削系は外注B、板金、メッキ、塗装一括系は外注Cと定型発注が決まっている場合は設計部門がM-BOMを構成することは可能かもしれません。自社設計部品をあたかも購入品と類似した調達が定着している場合です。
しかし、外注全てが思いどおりのL/Tや原価で受注してくれるとは限りません。外注Cが多忙で転注したいが外注Xは板金加工のみ、外注Yはメッキのみ、外注Zは塗装のみと外注渡りを繰り返す必要がある場合、設計者がそのプロセスを理解し、外注X、Y、Zと交渉してM-BOMを再構築することは至難の業でしょう。

3. 低難度
購入品が製品の構成の多くを占めており、自社設計メカ系部品がほとんど構成されていない製品の場合です。いわゆるセットメーカーと呼ばれる製造業のカテゴリーです。この場合、E-BOM=M-BOMというカタチになります。
ただし、購入品であってもL/T、価格も含めて入手難に対応する必要がありますが、E-BOMを受け取る生産管理システム側には代替品管理機能が充実してきており、そもそもM-BOM構築が不要な環境になりつつあるといえるでしょう。

M-BOMを直接アウトプットしたい、そのことによって下流側の余計な手間を防ぎたいという気持ちは理解しますが、上記で示した(1)(2)(3)のどのモノつくり情報の必要性に当てはまるのか? その辺りをしっかりと確認したうえで結論を出してください。

M-BOMが構成するモノつくり情報が御社にとっていかに大切なモノなのか? 製造業としての存在価値に直結するノウハウそのものであることを再度認識してください。

以上

次回は9月6日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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