第42回 製造業相談コーナーでの出来事 その3

薫風香る清々しい季節となりました。2015年、年初から始まった弊社年間最大イベント「実践ソリューションフェア」におけるセミナーの講演も無事に終え、この製造業相談コーナーでの出来事シリーズも今回をもって次のテーマに移りたいと思います。シリーズ最後の相談事は…

「海外進出にあたり海外に工場を建てたのですが、M-BOMをどのように管理すべきなのでしょうか?」

このお客様の場合、既にBOM構築はできていて、少なくとも設計部門でのE-BOMと本社工場でのM-BOM構築はできているとのこと。「では、海外工場の製造環境に見合ったM-BOMを再構築すればよいのではありませんか?」と、私からの回答に対してお客様からは「谷口さんの言うシングルE-BOM、マルチM-BOMの考え方は全くその通りだと思うのですが、E-BOMにまで変更の影響が及ぶと思われる製造環境の相違が存在することが判明し、困っています」というもの。どうやら調達できる部品や材料の規格(板厚、径、材質組成詳細 等々)が日本と海外工場とでは大きく異なり設計仕様にまで及ぶ可能性があるというのです。

「あのー、それはすごく大切なことですね!工場を建てる前にしっかり調査したの?」という言葉を飲み込みました。今更になって工場を建てなおすわけにもいかないでしょうから…。読者の皆さん、海外進出にあたって事前の調査項目は多岐に亘ることは想像していただけるでしょうが、インフラや労働環境、税制、法制度が優先されるあまり、ローカルコンテント(Local Content)と呼ばれる現地調達環境の調査が不十分である場合を多く見受けます。

結果、日本から材料を調達する、まして納期が間に合わず空輸する羽目になり、喜ぶのはロジスティクス屋さんのみで何のための海外工場なの?という事態を招きます。現地調達が上手くいって初めて海外工場の存在価値なのです。
現地調達ができる率がその海外工場の存在価値のバロメーターと言ってもよいかもしれません。

ここからが本題になります。
少なくとも調達できる材料が本来の仕様と大きく異なるといった場合、どのようにM-BOMを考えるかですが…場合分けをして考えましょう。

【1】材料仕様が異なった現地品を使用しても、最終製品の仕様が完全互換できる

見た目も変わらないし、製品仕様が完全互換できるのであればM-BOMの材料品目コードを日本製から現地製に置き換えるだけでよいですね。まあ、この場合だけであったら、今回の相談は無かったでしょうが…

【2】材料仕様が異なった現地品を使用すると製品仕様の互換は維持できるが、外観、重量等微細な差異が出てしまう

製品としての仕様は満足できるが、要求仕様外の部分で相違が出てしまうという場合です。
その相違をどのように捉えるのか?です。あれだけグローバル化の進んでいる自動車産業でさえ、この相違は存在します。分かりやすいところでいえば、同じ車種の日本製と海外生産製のタイヤのパターンは明らかに異なります。これをどうしても解決したいのであれば、「日本から同一メーカーのタイヤを輸入する」、「日本のタイヤメーカーを誘致する」等、中小製造業のできる現実枠を超えた話になってしまいます。具体的な回答としては、品質管理の側面からGO/NO GO判断をして、「E-BOMは同一だがM-BOM側の相違で管理をしていく=シングルE-BOM、マルチM-BOM」ことになります。現地品に少し工程を加えて、少しでも日本製に近づけるという努力も必要かもしれません。いずれにせよ、M-BOMに追加工程を付加していくことになります。

【3】材料仕様が異なった現地品を使用すると、製品仕様の互換を維持できない

この場合はさらに場合分けが必要です。

【3】-1 日本から材料もしくはユニットを送り、その部分の現地調達を諦める

この場合、コストアップと直結して海外工場の存在価値が薄れてしまうのは言うまでもありません。ただし、ノウハウ流失を防ぐためにあえてこの方法を選択していた時期もありますが、今ほどリバースエンジニアリングが進んだ現状ではその意味は薄れてきています。
現地調達できる率が減れば減るほど日本工場とM-BOMが近似していくことは想像していただけると思います。

【3】-2 現地品で仕様を満足させるために再設計を行う

似て非なる製品を設計していくことになります。結果、新たなE-BOMが構築され、それに基づいた海外工場用M-BOMが構築されることになります。日本製と海外製の二つの製品ラインを管理していくこととなり、設計変更等が発生する度にこの二つのラインを同時に管理せねばなりません。品種が多くなれば、管理負担は相当なものです。では、思い切った統一方法として、安価な(はずの)海外工場製部品やユニットを逆輸入して日本生産品に引き当てるという発想です。円安傾向の現在はメリットは多くないかもしれませんが、品質管理、在庫、何より設計管理的には選択の余地があると思います。

中小製造業の海外工場運営にはこのBOMの問題ばかりではなく、設立国家の文化や習慣への対応(戦い?)も悩ましい課題として存在し、何よりこれらの課題を日々マネージメントしていかなければならない人材の確保が最も難しいと考えます。「この人材を他からリクルートすることは失敗に直結する。社内の人材育成から見出すべし。」という持論は、最も大切にしている海外工場運営の要です。

次回は6月5日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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