第38回 設計工数の限界×外注能力の限界=売上の限界

謹賀新年
本年もこのコラムを大切に育んで行きたいと思っています。愛読者各位の応援を得てこそのコラムです。どうぞ本年もよろしくお願いします。
このコラムの肝である、コンサルタントの仕事でお預かりしている各社案件からリアルに起きている中小中堅製造業の「景色」をお伝えできればと考えています。

さて2015年も明け、昨年の年初よりは中小中堅製造業の景況感は良くなっていると感じています。
季節柄、年末年初の挨拶も兼ねて各社の経営層と面談する機会を多く得ることができるのですが、「景況感が良いなどと単純な表現をしていてよいのだろうか?」という思いに駆られています。それは機能不全に近い、製造業としてはある意味致命的な問題を抱えたままの企業を多く見るからです。

私が設計効率改善の前提として「設計工数の限界が売上の限界」というテーマを掲げていますが、最近、上流ばかりでなくモノつくりの下流側においても協力会社といういわゆる外注製造業のキャパシティーが限界にあって、生産工程でボトルネックというか閉塞を起こしているという問題があります。外注がものすごく忙しいのです。

各社のお客様から「じゃー、納期どのくらい延ばせばやってくれるの」という暖かい(?)申し入れに対して「(外注が混んで)いつできるか分かりません」という、つれない返事しかできなくなっているのです。設計効率が悪い主因で、超多忙な設計者のメンタルヘルスの側面まで心配する必要が出てきているのに、さらに輪をかけて生産ができないという「負の相乗効果」は、足し算ではなく、正に上流側と下流側の問題が掛け算で売上を苦しめています。儲けられる時に儲けられない。これは致命的な現象と思いませんか?

私見では中部、関東、関西の順番で外注能力(工数)がひっ迫していると感じています。
特に中部の「パンク感」はひどく、私がお預かりしている会社のトップも年始年末の重要ミッションは「どうか仕事を引き受けて下さい」という外注へのお願い行脚。正に発注側と受注側の主客転倒現象が起きています。

問題の主因が何であるか?これは明らかな「外注依存シンドローム」にあります。
自社の設計+自社のノウハウで生産していたように思えていた我社の製品が「実はあの外注の能力無しには完成しない」という現実を、今、この経営者は思い知らされているのです。
「外注を使うな」ということではないのです。外注依存、特に固定化した外注依存によってブラックボックス化してしまった製品(部品)に問題があるのです。ですから転注もままならず。固定化した外注にお願いをして回らなくてはならなくなってしまうのです。これでは自社ブランドが泣いてしまいます。

解決にはBOMの構築が不可欠です。
これも私の謳い文句「3A(Anytime, Anywhere with Anybody)モノつくり」の真骨頂である「何時でも・何処でも・誰とでも」という全方位モノつくりを可能にする設計成果物こそBOMなのです。
末端部品まで確実にE-BOM展開することによって、さらにモノつくり情報を付加しM-BOMまで展開構築すれば、外注に対し「そこの所、いつもの通り上手くつくっておいて」というような外注依存シンドロームからの脱却ができるのです。

さらに生産管理側の外注管理機能は同時に必須要件となります。支給部品の管理や無償/有償、発注価格の管理も含め「当然の管理」が必要です。そのリワードとして日本中(アジア圏も含む)の外注と取り引きが可能になります。
丸投げ固定外注という「他人の台所と料理人のノウハウ」を利用したモノつくり、生産工程がいかに好景気(=多忙)に弱いのかということを理解すべきです。
せめて外注という「他人の台所」を使うのであれば、誰が作っても「同じ味になる」ような「レシピ」は必須です。「塩少々、砂糖少々、お酒適宜」などという「曖昧レシピ」では駄目なのです。
ですからM-BOMまでしっかり構築して「脱・外注依存シンドローム」を目指すべきです!

次回は2月13日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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