第39回 中小製造業・設計部門幹部の嘆き

小生の仕事柄、設計部門からの相談ごとはそのまま「お仕事」に直結する大切なソリューション需要のネタです。ここ最近、「流用化・標準化設計により設計効率を高めていく」というコンセプトの理解を説いて回る機会が多いのですが、その時に設計幹部からの「悩み」よりも「嘆き」を多く聞くことになります。

その大半は「設計効率を高めたいが、その前に若い設計スタッフの技量が上がらない」というものです。設計者としての「腕」がどうにもこうにも上がっていかないという嘆きなのです。

私は設計者として「知らないこととできないことが一番悲しいこと」と常々言っていました。ですから「知っていて、できる設計者」になる為にはどのようにしたら良いのか?という話の展開なのですが、その前に…

何故、若い設計者の技量が上がらないのか?その主原因の深掘りをしましょう。

1:毎日、似て非なる使い捨て図面を漫然と書かせている
似て非なる、一度しか使われない使い捨て図面を漫然と何枚書かせていても技量など上がりようもありません。最も怖いのが「設計ってこういうものか」と幼児体験してしまうことです。このような設計スタッフは「現状否定」という改善へのモチベーションを感じる能力さえ失ってしまいます。結果、今の設計手法が「普通」となるわけです。そこには「設計効率を少しでも上げて設計者としての自己実現を叶えよう!」という発想は存在しません。残念ながら設計者人生を開花させる事は大変難しいと言わざるを得ません。

2:技量を上げる為の「修羅場」をプロデュースできない
1の問題を解消し、「知っていて、できる設計者」を育成する為には「修羅場ゴッコのプロデュース」を設計部門幹部が企画できるか否かにあると私は考えています。要は、若い設計者に「滑った、転んだ」という「痛い=学び」の体験環境を与えられるか否かなのです。

そもそも、設計者は因果な商売だと思っています。自分で設計して、つまり問題作って、自分で解決する。この繰り返しです。優れた若い設計者はこの因果応報の中でしっかりPDCAサイクルを回して自己成長して行きますが、皆がそういう訳にはいきません。
したがって、この修羅場を企画し、PDCAサイクルを回させるOJTの為にどうしても時間を確保する必要があるのです。慢性多忙部門と化した状態では物理的に時間の捻出が難しく、企画しようにも絶対工数不足で…となります。

つまりは技量を上げる「魔法の粉」は無いということです。で有ればどのように考えるべきか…

そこで登場するのが「探す、見つける」という無駄時間(設計していない時間)の撲滅です。

若い設計者に図面を含む設計情報検索をさせると、その会社の「探す、見つける」難易度がよく分かります。今までお預かりした会社では「知っている人は知っているが、知らない人は知らない」というようなことが起きます。つまり検索情報へのヒット率はその設計部門の経験時間に比例する傾向です。記憶と長年の勘と経験が物を言うヒット率です。

これでは、修羅場ゴッコをプロデュースする為の時間が必要な経験時間の少ない設計者ほど、検索情報を得る為に時間が掛かっている、ということになります。これは年齢の長幼だけでは無く、派遣技術者のように、その設計部門の掟に不慣れな設計者にも当てはまります。したがって、この矛盾を解決させる為にも私は設計情報(設計成果物)の2S(整理整頓)の必要性を念仏のように唱えているのです。

設計情報の普遍化つまりキーワード(属性情報)を統一して、せめて必要な設計情報検索ヒット率はその設計部門の経験値に依存しない状態まで持ち込む必要があるのです。

流用化・標準化設計のプラットホームが完成しても、若い設計者の技量が即上がる訳ではないのです。気になる先輩の設計成果物を見て贋作を作るなり、自分なりのアイデア(だいたい失敗)を盛り込むなりしながら、辛い問題解決の過程から、その設計の意味合いを理解し結果、修羅場ゴッコをくぐり抜けて「知っていて、できる設計者」になっていくのだと思います。

流用化・標準化設計のプラットホームの構築にあわせて、若い(社歴の若い)設計者の技量を上げる為にも、そのプラットホームの構築の原点である設計情報(設計成果物)の2Sが効果的でなおかつ必須であると考えているのです。

設計部門幹部の皆さん、腕を組んで「ウーン」と唸ってみても若い設計者の技量は上がりません。流用化・標準化設計時の設計者ごとの設計判断こそが、その技量のアップを求めているのです。

次回は3月6日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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