第44回 「設計者を育てる」ということ その2

梅雨空も真っ只中。お米には慈雨であることは承知していますが、週末の楽しみとしている草野球の中止がこのところ続いています。体が鈍りますが、しばらくの我慢です。

さて、前回は設計者として、立ち上がり時期の素質と素養がいかに大切か。そして、素質と素養の良い若い設計者の獲得は経営者マターとして大変重要であるという話をしました。今回はその設計者を受け入れる側である会社の「設計部門」のあり方を考えてみましょう。
このあたり、皆さんはどのようにお考えでしょうか?

メカ屋、エレキ屋、ソフト屋。それぞれ、設計者として特徴・特質はありますが、まずはもっと大きな括り「設計部門としての新人設計者の受け入れ態勢」という切り口で見てみましょう。

このような事例を見たことがあります。「保護者制度」です。「新しく入って来た設計者の保護者」という名の管理責任者を任命して、「しっかり育ててくれよ!ミスしたら保護者の責任だよ!」という設計部長からの「ありがたい」指示が下ります。一方、新人設計者には「君は保護者A君の仕事を見て、ノウハウを盗んで、早く一人前になってくれよ!」となるわけです。それを見て「今時、先輩の背中を見て育つかー……?」と思わず唸ってしまった記憶があります。

こうなると、A君は新人設計者にミスをさせまいと、ひたすら自分の設計の外注仕事に専念させます。設計の外注仕事といえば、CADで作図、設計資料を探す、見つける、の手伝い。少し慣れると、書いた外形図や回路図からの部品のバラし等々……。
このような仕事が綿々と継続されることになります。こうなると新人は「何も考えずに」これまた、ひたすらA先輩の設計したものを「定型処理」し続けるわけです。

「定型処理」ですから学習曲線はとても良く、処理速度は年々上がり、A先輩は「君もだんだん設計者らしくなってきたね」などと無責任な感想を述べるようになります。そして新人は「そうか私も設計者になってきたんだ」と勘違いをしてしまうのです。

私は、この保護者制度が悪いとは言いません。少なくとも放置プレーは無くなりますし、入社時のオリエンテーション過程には有効かもしれません。問題は保護者制度が生む「定型処理の長期継続」がもたらす深い罪の存在です。それは新人が「設計という仕事はこんなものなんだ」と誤解してしまうことです。

来る日も来る日も、A先輩が作った、似て非なる設計の片棒を担がされ、だんだん「小Aさん化」していく自分に疑問を持たず、先のA先輩の感想も手伝って「これが設計だ!」と勘違いしてしまうことです。

私は、厳しいようですが、この「勘違い」をしてしまった設計者は「終わり」だと考えています。つまり設計者になれていない、なれない、ということです。

このような「保護者制度」を採用していない設計部門でも、類似した「定型処理の長期継続」を強いていることはありませんか。定型処理という組織的に「塩漬け」にされた新人設計者に未来はないと思いますし、設計者人生として、それはあまりにも哀れだと我が身に置き換えて思うのです。

それでは、本来はどのようにあるべきでしょうか?

先に述べたように、必要最低限の新入オリエンテーションは行い、最低限の設計ルールと設計業務フローの習得は必須としましょう。そして、その後のあるべき姿として、二つのテーマを提案します。

  1. 流用化・標準化設計プラットフォームの存在
  2. 失敗のさせ方=修羅場ゴッコのプロデュース

この二つのテーマについては、次回「その3」に続けましょう。

次回は8月7日(金)更新予定です。

関連するページ・著者紹介

この記事のテーマと関連するページ

部品構成表管理システム 生産革新 Bom-jin

製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

ハイブリッド型生産管理システム 生産革新 Raijin SMILE V 2nd Edition

「生産革新 Raijin」は、標準品や規格品の“繰返生産”と、個別品や特注品の“個別受注生産”との両方に対応したハイブリッド型の生産管理システムです。また、販売管理と一体化された組立業向け製販一気通貫型のシステムであるとともに、部品構成表管理システム「生産革新 Bom-jin」と連携し、設計部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減、納期短縮、生産効率の向上を実現します。

この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

BOMの検討に役立つ資料

BOM導入をご検討されている方向けに、BOMについてを解説したハンドブックを作成しました。無料でダウンロードいただけますので、お気軽に下記バナーよりダウンロードしてご活用ください。

製造業専門サイト

生産管理ナビ

生産管理・BOM管理特集のスペシャルサイトです。フェア・イベント情報や関連コラムなど、製造業の皆様向けのコンテンツをまとめてご紹介しています。

BOM構築による流用化・標準化設計・設計部門強化を解説するセミナー動画をご用意しています。

高効率設計を実現するための流用化・標準化設計や、設計~製造の一気通貫を実現するためのBOM構築を中心に解説した動画を配信しています。
その他にも、製造業の皆様に役立つセミナー動画を多彩にご用意。無料でご視聴可能ですので、お気軽にお申し込みいただき、情報収集にご活用ください。

動画視聴を申し込む

公式Facebookにて、ビジネスに役立つさまざまな情報を日々お届けしています!

お仕事効率研究所 - SMILE LAB -

業務効率化のヒントになる情報を幅広く発信しております!

  • 旬な情報をお届けするイベント開催のお知らせ(参加無料)
  • ビジネスお役立ち資料のご紹介
  • 法改正などの注目すべきテーマ
  • 新製品や新機能のリリース情報
  • 大塚商会の取り組み など

お問い合わせ・ご依頼はこちら

詳細についてはこちらからお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ

0120-220-449

受付時間
9:00~17:30(土日祝日および当社休業日を除く)
総合受付窓口
インサイドビジネスセンター

ページID:00089063