第45回 「設計者を育てる」ということ その3

-流用化・標準化設計プラットフォームを考える-

酷暑という表現がふさわしい日々が続きます。ビールの喉越しはすこぶる良いのですが、さすがに、この暑さには滅入ります。各位ご自愛のほど。

さて前回の提案として設計者を継続的に育成していく手段として下記の二つの提案を行い、今回に繋げました。
 1:流用化・標準化設計プラットフォーム存在
 2:失敗のさせ方=修羅場ゴッコのプロデュース
では、順番に1の流用化・標準化設計プラットフォームから始めましょう。

「設計プラットフォーム」と聞いてイメージは浮かびますでしょうか?一言で表現すれば、「御社の設計者全員がこのプラットフォームのうえで設計し、設計成果物を生み出すための仕組み」です。まだ「??」でしょうか?

誤解を恐れずイメージ先行で述べてみましょう……。設計者を失礼ながら羊さんに例えます。このプラットフォームとは「囲い」のある羊さんの群れる草原のようなイメージです。さしずめ設計部長は羊飼い? ということになりますか?(笑)肝は羊さんがどんなに元気でも、この「囲い」は越えられないということです。越えそうになると羊飼いの部長さんが「囲い」を「越えちゃダメ」とその羊を追い返すわけです。この「囲い」をもう少し的確に表現すると「ルール」ということになるでしょう。そうです、設計業務の運用ルールを維持管理する仕組みなのです。

蛸壺設計の最大の罪悪は「野放図設計」を許してしまうことです。例えれば蛸壺羊さんは草原の続く限り好き勝手に好みの草を食みながら羊飼いの目の届かない遥か彼方に行ってしまいます。羊飼いの部長さんも目の届かない、遙か彼方の蛸壺羊さんを見失ったままです。まさに「野に放つ設計」になってしまうということです。設計者の人数分の設計手法で設計成果物が生み出され、当然、そこには似て非なる設計成果物が氾濫することになります。一度しか使われない「使い捨て図面」も、この環境から生み出され「高効率設計」などという言葉や発想は蛸壺羊さん同様、水平線の遥か彼方に存在することになります。

ですから、この現象を防ぐための「囲い」つまり「ルール」が必須なのです。できれば「囲い」というルールの限界に頼ることなく、牧羊犬の如く羊さんの群れを的確にとらえて同じ方向に導いていく様を想像していただき、そのような管理(=マネジメント)を実現する仕組みを考えたいものです。

ただし、「今どき、牧羊犬よりキッチリ管理できる仕組みは無いの?」と問われれば、やはりITの活用ということになります。時に、ITは融通が利かないと言われますが、設計運用ルールを例外なくキッチリ管理してくれますというメリットもあるのです。

この話をすると、早速すばやく反応する羊さん……ではなく、設計者が現れます。その特徴は、蛸壺設計者に多く、開口一番「そんな制約条件の多い環境で設計、ましてや創造的設計はできません」と言う方です。私も反応して「創造的設計ねー?……優れた設計者とは与えられた条件下で最高の性能をもたらせる人と考えますが……どこまでも凝りたい、記憶に残る使い慣れた部品でないとダメ、独自性を出したいなどという創造的という名の下の、わがまま設計ができなくなる事への恐れではないですか」と申し上げるのです。論議となることもしばしばです。

しかし、この論議を重ねていると、同時に蛸壺設計者もある意味「犠牲者」なのだと感じてしまうのです。押し迫る出図納期、共有できない設計ノウハウ、信じられるのは我が身のみ……選択肢は蛸壺設計しかなかった……。これも一つの設計者人生としての哀れかもしれません。

であればこそ、これから設計を知っていく若い設計者が、蛸壺設計のもたらす野放図設計という悪習へ進むことをどうしても防がねばなりません。そのためにも一刻も早く設計プラットフォームの構築を急ぐべきなのです。設計者を育てていくという環境設定に、このプラットフォームは不可欠ですし、設計者人生をまっとうに歩ませるための入口なのだという認識を持ってください。

次回はその設計プラットフォームの構築時に同時に考えねばならない流用化・標準化設計を可能とするプラットフォームについて述べてみたいと思います。

次回は9月4日(火)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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