第49回 「設計者を育てる」ということ その7

-設計者育成の鍵・「失敗のさせ方」-

今年もいよいよ師走です。心なしか暖かいと感じています。COP会議も開催されていましたが、この暖かさも地球温暖化に関わっているのでしょうか?いずれにしても穏やかな年末年始を迎えたいものです。

設計者を育てるというテーマも、今回でまずはピリオドを打ちたいと思います。設計部門永遠のテーマですから再登場させたいテーマではありますので、時を見てあらためて触れて見たいと考えています。

さて、今回は本題の「失敗のさせ方」の新人設計者育成の肝である「修羅場ゴッコのプロデュース」の延長線上にある中堅設計者に対する育成・指導について考えたいと思います。

前回も述べましたが、設計業務とは因果な商売です。「設計をする=何らかの問題を作る」 となるわけですから、中堅にもなって、会社や自分を取巻くいろいろな事情を理解してくると「問題を作らない設計」を考え始めます。「なんだ、問題無いじゃないか」と言わないでください。この「問題を作らない設計」が中堅の成長を時として止めてしまうのです。

しかし、ここにも難しい矛盾が存在して、設計部長として中堅に設計を委ねる時点で「問題を作るな」と指示している場合も存在していることも事実です。

では、その問題を作らない(あるいは、できるだけ少なくする)設計とはどの様な設計なのでしょうか。

シンプルに表現すれば「保守的でチャレンジしない設計」となるでしょう。
「過去実績のある、裏の取れた部品・ユニットを組み合わせて設計」ということになります。そうです、これは流用設計の基本動作です。流用設計自体、問題を低減する根本であり、それ故、私も強く推奨しています。

従って、この部分は揺るぎ無いのですが、一方で新規テクノロジー開拓や新たなユニットの開発には別次元の設計環境で徹底したチャレンジ設計が求められます。問題を山ほど作って、地道に解決してノウハウを蓄積することが必要となるからです。

つまり、流用化・標準化設計の環境とチャレンジ設計の環境のメリハリの利いたマネジメントが設計部長に求められます。私はこのイメージとして「二階建ての設計部門」という表現をしています。

今日の糧を稼ぐ基本となる一階は流用化・標準化設計。そして明日の糧となるであろう新規テクノロジー開拓、新規ユニット開発は二階(もしくは屋根裏)でチャレンジ設計にそれぞれ分けてマネジメントすることを勧めています。

この二階の主はやはり中堅の、それも優秀な設計者となるでしょう。優秀な中堅も流用化設計だけであれば、そのうちノウハウの「ネタ切れ」起こすことになります。従って、この二階でのチャレンジ設計が最も有効な中堅設計者の育成となると考えています。そしてできればアシスタントとして若い設計者をローテーション配置できれば尚良しです。

中小企業の場合「開発費」という経費計上できる金額、つまり設計機械には限りがあると思いますが、顧客との共同開発等も好機と捉えて、この二階に設計者を「隔離」して浮世離れしたチャレンジングな設計に没頭してもらうことです。この一階、二階のメリハリ無しに「問題作るな、でもチャレンジしろ、新たなノウハウを生み出せ」などと設計部長が言い始めると混乱が始まるのです。

この二階部分から生み出されるチャレンジ設計成果物が御社の新たな柱として成長して行く様は中堅設計者の弛みの無い育成機会としての存在と相まって、設計部門が抱える根本問題を解決して行くと考えるのです。

新人を一人前の設計者に育成していくこと、そして中堅にも弛みの無い設計スキルの蓄積をさせること。これらを同じ環境・プロセスで進めることは難しいと考えています。手間もかかるし、時間も気も使う。しかし設計部長としては正面から取り組むべき事業だと確信します。
それほど、大切なことだと思うからです。

皆様、良い新年をお迎えください。

次回は2016年1月8日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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