第48回 「設計者を育てる」ということ その6

-流用化・標準化設計プラットフォームを考える-

今年は幸運にも岩手県の猊鼻渓(げいびけい)の紅葉を目にすることができました。
寒さの訪れの早さに驚き、色を変えた木々の様は「鮮やか」の一言でした。

さて、前回までは、流用化・標準化設計プラットフォームという設計環境構築に向けての設計者を取り巻く環境について話を進めてきました。いよいよ今回からは、その環境の下で若い設計者を育てるという課題に取り組みたいと思います。流用化・標準化設計環境から高効率設計環境が生まれ、設計部門に設計者を育成するという「ゆとり」が時間と共に心理的にも生まれてきたという大前提がまずは必須です。

2015年7月の本テーマその2(※)で既に述べた設計者育成の鍵は
「失敗のさせ方=修羅場ゴッコのプロデュース」
でした。これだけでは誤解も含め、イメージが拡散してしまうのかもしれませんが、今回と次回をもってその意味を解説したいと思っています。次回を読み終えた後に「まー、そういうことだよね」と各位に私の考えが届き、共感いただければ本テーマを閉じ、次のテーマに移ることができると思っています。
※第44回 「設計者を育てる」ということ その2

常々思うのですが、設計者とは何と因果な商売なのでしょう。
設計するとは「問題を作る⇒解決する」というサイクルを綿々と繰り返す商売なのです。
「だったら問題なんて作らなきゃ良いのに!」となるのですが、そう単純ではありません。
もちろん、設計の最中は問題を作っている意識は無いのですが、「想定」を超えて問題となってしまうというのが本音です。

設計者は、大げさかもしれませんが自然界の森羅万象を背負って設計している訳で、それらを見誤らずに味方にすれば「成功」し、敵に回せば「失敗=問題」となってしまうのです。

結局は「味方にしている」という「想定」が何処まで正しいのか?見通せているのか?という際限のない話になってしまいますが、私はここを「設計者の技量」と定めています。ここは設計者の方には共感していただけると思います。

したがって「想定」を越え問題を作る、作ってしまうというところには、「解決する」という次のステージのトリガーとしての重要な役目が存在することになります。
「解決する」というステージには、自意識の中ですが、明確でないにしてもある意味のPDCAを、それも必死に回すので(笑)そのプロセスには成長(=育成)の機会が存在します。

ですから、問題のある設計を「なんでこんな設計するんだ!」と単純に叱責してはいけないと考えています。その設計には少なくとも成長のきっかけは存在するのですから。
しかし、しかしです……ここら辺りの見極めが最も重要で難しいのです。「解決できる」という前提が上手く見通せればという条件が常に存在するのです。

私も思い起こせば、「うーむ、彼に解決できるかな?」と同時に「後で解決に手を貸してあげられるかな?」という、何と設計部長たる自分に対する「設計者としての技量」を推し量る局面でもありました。何が問題の根本なのか?それはそれは、なかなか私自身が試されるステージであったことを思い出します。

「修羅場ゴッコのプロデュース」としての場面はここから始まるのです。
修羅場とは、言わずと知れた問題解決のプロセス、そうですPDCAを必死で回しているプロセスです。
寝ても覚めても「何がいけないんだ?どうするかー?」と死ぬほど考える。それも迫る納期と戦いながら。頭の中真っ白で視野狭窄に陥っている若い設計者に対し、もし、設計部長や先輩が「この辺りじゃないかー?」などと上手く解決の糸口を与えられれば最高です。正に地獄に仏です。同時に「何故そう見立てたのか」という解決への助言は一生の宝になるはずです。

その七転八倒させられた問題でさえ、解決して後で考えてみれば「当たり前だよねー」となるのが常です。自然の掟・節理に逆らっていただけなのですから。でも、それだけに、それらを見通せなかった設計者としての技量不足は大いに反省させられるのです。最後は「なるほどね!!」という納得なのです。
ですから問題解決という死ぬほど考える修羅場がどれ程若い設計者を鍛えてくれるのか。説明は不要だと思います。

となれば、後は設計部長や先輩設計者が「ゴッコ」の由来であるプロデュースという、つまり想定内でこの若い設計者に与える問題解決プロセスの台本が描けているか否かです。
描けていれば多少手足の骨折はするかもしれませんが、きっと若い設計者は成長してくれるはずです。反対にプロデュースをサボって「とにかく解決しろ」と放置プレーとなれば、せっかくの若い設計者が首の骨を折りかねません。
「解決ができる、解決させてやれる」という「失敗のさせ方の台本作成=修羅場ゴッコのプロデュース力」の有無が、最終責任への腹の括りも含めて設計部長の設計者育成という最も難しい部門課題に対する解決技量その物だと考えています。

次回は中堅設計者に対する設計技量の継続的成長について考えてみましょう。忘年コラム(?)になりますね。

次回は12月4日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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