第104回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その36~設計部門のテレワーク考察 その2:エレキ・制御系CADの導入コンサルをテレワーク体験しました

コロナ禍も数カ月が経過し、設計部門のテレワークが可能な会社、未だに会社に行って設計を強いられる会社、テレワークのアイデアはあるが設計プラットフォーム等の条件が整わない会社。まだら模様の設計部門のテレワーク状況ですが、新たな試みとしてエレキ・制御系CADシステム新規導入のコンサルをテレワーク環境で実施しました。そして、実施した結果はどのようで、何が分かったのでしょうか?

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その36~設計部門のテレワーク考察 その2:エレキ・制御系CADの導入コンサルをテレワーク体験しました

テレワークもすっかり定着して、ホッピー開始時間が幾分早まった感じです。これも、通勤時間という無為な時間経過を待たずに済む効果だと思います。とっとと仕事をすませてホッピータイム! 仕事のメリハリもテレワークの方がついて、成果主義を実感できる今日このごろです。

エレキ・制御系CAD新規導入コンサルをテレワークで実施

小生がお預かりしている会社(設備設計製造)が新規にエレキ・制御系CAD(制御盤設計、PLC設計、電子回路設計、配線、ハーネス設計の効率化を目的に)の導入を決定し、稼働への導入コンサル実施の日程を検討していたときにコロナ禍となりました。

このCADはZ社製で導入コンサルはZ社のコンサルが担当することとなっていました。
私は、既に導入済みの「流用化・標準化設計プラットフォーム(生産革新 Bom-jin)」との連携方針を決定することを目的に、オブザーバーとして参加する準備を進めていた矢先のコロナ禍でした。さらに緊急事態宣言によりZ社の方針で出張自粛となり、対面訪問ができなくなり「導入コンサル当面延期か?」という機運になっていきました。

ここでエレキ・制御系CADシステムの特徴を、メカ系CADと比較しながらレビューしてみましょう。流用化・標準化設計の視点から眺めるとメカ系CADとは大きく立ち位置が異なることが分かります。

メカ系CAD

メカ系CADは自由に部品(ユニット)を生み出せる。従って、類似設計を防止するために「流用化・標準化設計プラットフォーム」でその部品(ユニット)の2Sを行って分類・整理管理する必要がある。

「部品・ユニット」の分類・整理(=カタログ化) ⇒ 「流用化・標準化設計プラットフォーム」で行う

エレキ系・制御系CAD

エレキ系・制御系CADは基本的には購入品を組み合わせて設計を行うことが前提。そのため、既にメーカーによって属性情報も含め購入品がカタログ化されている。

「購入品」の分類・整理(=カタログ化) ⇒ CAD側で既に存在する

上記の相違から、設計者自身が部品を生み出すメカ系CADと購入品の組み合わせで設計するエレキ・制御系CADとの間には大きな相違が存在し、この相違をしっかり受容できるCADも含めた一気通貫システムであるべきなのです。
この相違はしっかり認識してもらいたいところです。

さて、コロナ禍はどうなっていったでしょうか?

暫時(ざんじ)様子を見ていましたが、収束の目途も立たず、何とか進捗(しんちょく)させる方法はないものか? と思案に暮れていました。そして思い切って「テレワークでチャレンジしてみましょう!」との提案に、当初、対面指導を望んでいた設計者達は躊躇(ちゅうちょ)していました。その躊躇も理解できました。

  • 指導する、される側双方とも初めての試み。
  • リモート・オンラインミーティングを駆使して進捗させるイメージが共有できない。
  • 何より指導効果が対面と同等になるのか?

これらがその理由です。

そのような中、コロナ禍の収束が数カ月単位になりそうだという見通しが定着して、このままズルズル日程を引き延ばすことは賢明ではないという意見が双方に聞こえるようになりました。「ここはチャレンジということで、思い切ってテレワークで稼働コンサルを実施しましょう!」との再度の呼びかけに対し「指導効果が万全でない場合は、再度対面コンサルを実施してフォローアップを図る」という条件付きでスタートしました。

手探りのテレワーク・コンサルであったが……

まず、受講側は一人2画面モニターで片方にCAD、もう一方にMicrosoft Teams画面という形で行い、前方大画面にリモートでコンサルに操作されたCADを投影しました。コンサルの操作を即、自席のCADでハンズオンして「体」で覚えて行く方法です。

Z社のコンサルも初めての体験でもあり当初は戸惑っていましたが、要領は間もなく得た様子で、日に日に進捗がスムースになった印象でした。

今回の体験から、指導するコンサルの「腕」が如実に理解や進捗に直結することが露呈したのも事実です。

「腕」とは……

  • 受講者の不明点を速やかに理解してCADの実操作でうまく導く能力
  • 案外「枝葉」や「例外処理的」な疑問で立ち止まっている受講者(設計者)に対し、その疑問を理解し、丁寧に答えていく能力(設計業務そのものへの理解力)
  • CADの機能を隅々まで理解して、設計過程で生じるさまざまな困難に対し「CADの機能がいかにうまく対応できて、設計効率を上げる結果をもたらすのか」の説明能力

これらが必須であることです。

つまりテレワーク・コンサルができる能力とは、これら高い指導能力を要求されるわけで、浅い理解・知見のコンサルではすぐに力量不足が露呈してしまうと思います。その意味ではコンサルに厳しい指導環境であることは間違いありません。逆に、コンサルの指導評価、つまり指導が上手・下手がハッキリ分かれるテレワーク・コンサルといえるのかもしれません。
簡単にいえば「ごまかしが効かないテレワーク・コンサル」ということでしょう。
私自身、身の引き締まる思いです。

受講した設計者からの今回の試みの評価は高く、「やってよかった」という総合的な感想でした。
何より、「疑問が出たら手軽に気軽にテレワークで指導が受けられる」という経験則は「わざわざ会社に来てもらう」という今まで感じていた「遠慮」を払拭したのかもしれません。コンサル指導のハードルを下げたことは間違いありません。

あえてテレワーク・コンサルの欠点をさがすと……

全て対面より良いのか? といえばNOです。以前から私自身が感じて述べていましたが「受講者の顔色がうかがえない」という欠点です。

対面では各受講者の表情から「概ねの理解度を推し量ること」ができます。
実際、今回のテレワーク中に何度も「皆さん解りました? 今大事な部分ですよー」を発しても、都度、無反応もしくは「大丈夫です」のオウム返しです。しつこく「本当に大丈夫?!」と声を多少荒げると「実は……」と質問が返ってくるのです。

昔、学生のころ、授業中意識が散漫になった私に対し教壇から「チョークを投げて」牽制(けんせい)してくれた教師がいました。
今はそのようなハラスメントはできないのでしょうが、受講者の顔色をうかがいながら、「いかがですか!」と「見えないチョーク」を投げられる対面コンサルも捨てがたいと思います。双方の時間を無駄にしないためにも大切な牽制かもしれません。

今回はさすがに、設計者として自分の技量に直結するコンサルなので聴講したふりの「テレワーク忍者」(私はそう呼んでいます)はいませんでしたが、不特定多数に対するテレワーク(オンライン)啓蒙セミナーなどでは対面でしか共有できない顔色も含めた現場の雰囲気を欠くことになり、見えないチョークの「圧」のかけ具合のコントロールに腐心しているのも事実です(笑)。

しかし、これも時間の問題なのでしょうか? 米国ではAIを使った居眠り運転検出アルゴリズムを聴講者側PCに使って、セミナー内容に対する集中度を講師に知らしめる実験が始まったとの話を耳にしました。まさに「テレワーク忍者」撲滅システム?

テレワークはいったいどこまで行くのでしょうか……???

以上

次回は8月7日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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