第105回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その37~流用化・標準化設計をSlow & Steady(ゆっくり着実)に実現した好事例を紹介

今回は弊社のシステム導入事例集に掲載いたしました株式会社キラ・コーポレーション様(愛知県)の流用化・標準化設計実現への取り組みについて、コンサルタントの目線から改めてご紹介いたします。全社でSlow & Steadyに実現させた本例は他の設計部門を持つ製造業にも多くの気付きをもたらすと思います。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その37~
流用化・標準化設計をSlow & Steady(ゆっくり着実)に実現した好事例を紹介

止まることを知らない新型コロナ禍です。感染症との闘いは「人類の永遠の課題」とのことですが、ワクチンや特効薬の早期出現を待つばかり。それまではホッピーの金宮の割合を多くして体内アルコール消毒に励む毎日です。

2012年から始まった流用化・標準化設計へのチャレンジ

そもそもの始まりは、株式会社キラ・コーポレーション様の社長の先見性に由来するものでした。

「これからはしっかりBOMを構築して設計効率を上げ、最終的には全社効率を上げる必要がある」という考えから当社の流用化・標準化設計プラットフォームの導入が指示され、稼働に向けて活動が始まりました。しかし、当初しばらくはその活用がうまく図れなかったとのことでした。

これは、私も同様の現象を他社で多く見ています。
いわゆるトップダウンは存在するがボトムアップが弱く「親の心子知らず」状態に陥ってしまうのです。

そのような状態の中で、本改革は技術管理室・和田氏の「このプラットフォームをもっと積極的に活用することはできないのだろうか?」という素朴な疑問から始まったわけですが、そこには「設計BOMが製造業の全ての根幹をなす」という揺るぎない自信に裏打ちされた考えが存在しました。従って、当初から実行すべきことは明確に見えていて技術部の標準化の具体的な取り組みとして、

  1. 3D CADの導入
  2. 3Dを考慮したルールの整備「品目コードおよび図面番号のつけ方」
  3. 流用化・標準化設計プラットフォーム「生産革新 Bom-jin」の導入と実運用

という3本柱を強力に推進していきました。その意味では、和田氏にとって目標も仕組みづくりも明確だったので迷いは全くなかったといえるのではないでしょうか。

しかし、一方でBOMの概念は設計部門にはなく、それこそ「1からのスタート」を余儀なくされたと思います。それでも、流用化・標準化設計へのチャレンジを図った和田氏の勇気と強い意志には敬服します。

その当時は、基本仕様の部品表から顧客の仕様に合わせて部品(ユニット)を加・減していた様子。これを続けると類似機種がドンドン増えていくことになります。同社の場合、製品がNC制御生産設備という特質もあり、結果、保守部品の対応も際限がなくなってしまうことになります。

そこで、和田氏はまずはこの流用化・標準化プラットフォームを使って社内の生産基盤の構築を目指すことにしました。
品目コードやBOM構築の基本体系を形づくり、標準的な機種のBOMを構築して、それを軸にカスタマイズ部分のBOMを追加していく設計フローを確立しました。

文字に表すと上記数行の行いですが、この作業の実行にはどれ程の「継続は力」を必要とした作業であったかを想像すると、本当に頭が下がります。私がお預かりした製造業の案件全てに存在する変化や改革に対する「抵抗勢力」との闘いは、まさに「継続は力」を強いる作業だからです。

それは、実運用をしながら改善活動に取り組み、変革の肝となる設計BOM構築の重要性を説き、社内で地道な啓発活動を行いながら推進する長い道のりだったと思います。

他の製造業の改革プロジェクトにおいても、当初は経営者も「頑張れ!」とプロジェクトを応援するのですが、1年もたつと「まだそのようなことやっているのか!」とプロジェクトメンバーの努力と汗を亡き者にしてしまう現実を目にします。

経営者にとって「我慢強く見守る」ことがいかに難しい姿勢であるかを知っている私には、同社の8年間の軌跡は大変貴重な実例として存在します。私が、本コラムや拙著でも述べている「Slow & Steady」をまさに実践した好事例です。下にコラムのリンクを貼りますので参照ください。同社とは異なる事例ですが「我慢強く見守る」という視点では重なります。

第63回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その1~ 「Slow & Steady」

CADとの連携やパーツリスト自動生成、出図の自動化などの設計者負担軽減への取り組み

和田氏と共に新たに加わった黒柳氏とのチームワークで設計者の負担を軽減する取り組みも行われました。
多くの設計部門が「CADを設計の主体にしてしまう」という誤りを犯してしまう中、同社は「確定BOMと確定図面」を扱う流用化・標準化設計プラットフォーム「生産革新 Bom-jin」を主体とし、プラットフォームからCADに情報がさかのぼる考え方や製品として成立しない組み合わせの禁則ルールなども制定して設計環境を整えていきました。

製品に添付するパーツリストをBOMから自動生成したり、出図業務という設計者には案外煩雑で面倒な作業をRPA化したりして、設計者にとって設計という本来業務を乱さない工夫を通し、設計者の負担軽減に寄与しています。
「設計環境を整え、設計効率を高めるための技術管理」という部門ミッションの好例を見せてもらったと考えています。

下に当社の事例に掲載している株式会社キラ・コーポレーション様事例をご案内します。
より具体的にこの事例を知ることができると思いますのでぜひ一読願います。

株式会社キラ・コーポレーション様 導入事例

以上

次回は9月4日(金)更新予定です。

書籍ご案内

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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