第64回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その2~ 「Top Down and Bottom Up! トップダウンとボトムアップを考える」

設計部門改革への原動力はどこから生まれ、どうやって維持・継続されるべきなのか? トップダウン・ボトムアップと呼ばれる典型二例を基に考えてみましょう。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その2~ 「Top Down and Bottom Up! トップダウンとボトムアップを考える」

最近チョッとデラックスな55ホッピーを愛飲しています。レギュラーホッピーより高く、量も少ないのですが「金宮」との相性は尚良し。唯一残念なのは少ない分3回分けは難しく、2回分けとなってしまうところ。「量より質」というホッピーワールドでは発想し得なかった切り口が迫って来ているような……良いことか? 悪いことか?

今回は特定の会社にフォーカスしたものではなく、そもそも設計部門改革の実体であるBOM改善コンサルを実行するという改革の御旗は誰が掲げるべきか? そして、その御旗を常に掲げ続けるためには何が必要なのか? という設計部門改革への決断と実行に関わる考え方や各社で起きていた事象を共有してみたいと思います。

会社なのだから社長のトップダウンは不可欠なのですが……

「経営的必然性として全社効率を高め、利益体質にして生き残りを掛けるべく、いよいよ手つかずであった設計部門改革に乗り出したい!」という社長の思いは最も重要です。たしかに、この思い・決断なしには何も始まらないのですが、しかし、多くのコンサル・ケースで「笛吹けど踊らず」という実態を垣間見ることとなります。そこには社長の「俺の言うことには逆らわないだろうし、言うことは聞くはず」という勘違いや慢心が存在し、設計部門も「また、社長面倒くさいこと言いはじめたなー、こんなに忙しいのに」の本音。そして、最後は「聞いたふり」をするだけというヒエラルキーの欠片も存在しない悲しい例を案外多く見るのです。

根本原因として設計部門に対するモチベーション・プランニングの欠如ではあるのですが、それ以前に「社長へのリスペクト」という社員行動の原動力となる大切な意識構造が希薄、もしくは存在しない会社は案外多く、会社経営の根幹である、この部分への社長の気づきのレベル差は会社ごとに案外大きいと感じています。

社員は社長の行動を良く見ていて「安易な思いつきの改革連発」を重ねて、結果、社長自身が「狼少年状態」に落ち入ってしまうと、「今度こそ改革!」と叫んでみても「どうせまた、プロジェクトが発足して、自然消滅さ……」と社員は達観してしまいます。社長もいろいろなことを考えていることは認めますが、軸足がしっかりしていないと、このような結果になりがちです。

そこで私のコンサルとしての出番です。一言で言えば「今回の社長の経営判断の保証人」としての存在です。

疑心暗鬼になってしまっている社員、特に設計部門に対し、社長になり替わってモチベーション・プランニングを実行する訳です。肝は第三者のコンサルとして「今回の改革は御社の生き残りに不可欠です。間違いありません! 今まで、煮え湯を飲まされた人、二階に登って梯子を外された人、詰め腹きらされた人、今回は私がそのようなことが無いように改革達成まで見守り、同行いたします」という宣言です。

当然ここはコンサルとしての私の腕が最も試される時であることは間違いありません。したがって、全ての会社で上手くモチベーション・プランニングを導けたわけではないのですが、この「社長へのリスペクト」に何らかの不全を起こしている中小企業には、改革への行動への原動力として私のような「保証人」が必要になるという持論です。

「保証人」の私が信用されてようやく「スタート地点に立てた」ことになります。ようやくここから始まるのです。PJ(プロジェクト)メンバーを厳選し、錦の御旗をしっかり掲げ続けるために私のコンサルは開始されます。掲げ続けることの苦難は想像に難くないと思いますが、ここでは、コンサルというより社長決断への保証人たる私の信頼度が最も試されることになります。

もちろん、社長へのリスペクトがしっかり存在し、上意下達が叶うヒエラルキーがしっかり存在する会社には、私のような第三者の入り込む余地はありません。蛇足ながら……。

ボトムアップは時間との闘い! 社長の傾聴力が物を言う

ボトムアップを考える時、現状否定という勇気ある提言を可能とする人材が組織に存在することは大変頼もしく、かつ、貴重です。しかし「問題提起上手の解決下手」で終わってしまうことなく、組織全体の動きになるまで牽引できる人材は稀でしょう。特に設計部門改革となれば、ボトムアップとして改革の錦の御旗を掲げ、訴求する人材は限られます。

私の経験上、設計部門改革の錦の御旗を掲げる人材はその多くが「中途入社」でした。つまり大海を知っていて「比較文化論」が語れる人材が、唯一、今置かれている設計部門の現状否定ができるのです。「何か、やっていること、おかしくありませんか!?」と……

問題はその思いが「トップに届く時間」と「現状否定潰しの時間」との「時の競争」が始まることです。
設計部門内には、この現状否定によって「波立ち」、肯定派、否定派が発生しますが、明らかに肯定派はマイノリティー。したがって「何か面倒くさいことを言う奴が入って来た」と否定派は潰しにかかるわけです。潰さなくとも無視します。

したがって、中途入社社員(組)の耐久力・持久力と思いの強さが、この勝敗を決めます。ある設計部長の場合は中途入社で現状否定の必要性を強く感じていましたが、「この思いを実現するためには自身がまずは設計部長のポジションを得てから」との長期戦略に立ち、この強い思いを7年かけて実現して設計部門改革を実行しました。素晴らしいビジネス展開であると感心しましたが、残念ながら、これは大変稀なケースです。多くの場合、中途入社で改革の御旗を掲げる可能性のある人材であっても、時間と周囲環境が現状否定という「改革へのトリガー」を時間と共に中和させられてしまうのです。

社長の感性、傾聴力が敏感であれば、中途入社社員(組)の現状否定を聞き入れて、改革の旗手を見いだすことができるはずです。その意味で、せっかく苦労して中途入社させた設計部門人材の最初の有効活用は「比較文化論」をいち早く語らせることなのです。
社長自ら「A君、うちの設計部門どう思う?」と……。

トップダウンとボトムアップが最初から形成され、上手く噛み合う会社であるならば、とうの昔に設計部門改革は成就しているでしょう。
言い換えれば、このどちらも上手く形成できないからこそ、私の出番の機会が多いのだと考えています。

トップダウン・ボトムアップの形成にはいずれも社長の力量が問われることを述べました。このことを意味して私は「会社は社長以上になり得ない」と常々言っています。
それは私自身の社長業としての実体験も踏まえて、多くの反省が残る所だからです。

以上

次回は4月7日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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