第69回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その6~ 「バリアント図」という過去資産との戦い

流用化・標準化設計の基礎を構築する設計成果物の2S(整理・整頓)ですが、その2Sを悩ます「バリアント図」の存在をどのように扱うのか? コンサルの事例から対応策を考えてみたいと思います。

「バリアント図」という過去資産との戦い

関東地方はカラ梅雨に重ねて酷暑です。3冷(冷えた、ホッピー+金宮+ジョッキ)のホッピーですが、この暑さです。邪道と言われてもカチワリ氷を追加して4冷でホッピーを楽しんでいます。

バリアント図はどうして生まれたか? バリアント図出生の秘密に迫る!

設計者の皆さんに「バリアント図」をあえて説明する必要は無いかもしれませんが、認識合わせとして述べますと……

例えばシンプルなシャフトの図面の場合(下記図面例参照)、図面上の長さ表記はl(エル)径はφ(ファイ)という代数が記されていて、同じ図面上に表が添付され、l=100、150、200……φ=10、15、20……さらに公差も同様に表分類記述されているような図面です。どの組み合わせを指し示すかは、この表から部番等を頼りに「人間」が拾い出す・選択する。というルールです。

それぞれの寸法・公差は一覧表になっていてメニュー選択形式や複雑なものはマトリックス選択形式になっている場合もあります。マトリックス選択形式に至っては百種類を超える順列組み合わせとなる場合もあります。
よって、ここに図面として描かれているシャフトはあくまで「形状」を人間に知らしめるだけのものと言えます。

現在、バリアント図がもたらす最も大きな弊害は、「一体どれを作れば良いのか?」という人間の選択判断を常に必要とし、表の見間違いやマトリックスの選択違い等々、人間の判断がかかわる以上責められない不具合の存在です。
皮肉なことに、この組み合わせ数が多いということは多用されている証拠でもあり、その会社の主要構成部品である場合が多くあります。

なぜバリアント図が生まれたのか? ですが、まさに私が設計をしていた時代の遺品(?)置き土産(?)なのです。
その当時CADなどありません、T定規+三角定規と製図板、良くてあこがれのドラフター。いずれにせよ図面は手書きの時代でした。従って、設計者はどうしたら作図時間を節約できるか? に傾注します。

そこで、相似形状・同一形状の寸法違いは一枚の図面に先述した一覧表を張り付け、作図枚数(時間)を節約したのです。しかし、その当時から(私が知るところでは)一品一葉を貫いていた設計部門があり、組み合わせ種類分「第二原図」というトレペに写真コピーをコピー屋さん(そういう仕事が当時存在していました)に頼んで、修正液(シンナー)で不要寸法を消して一品一葉の図面に仕立てていました。

何がその当時一品一葉の管理を悩ませたかといえば「設変」の時です。バリアント図であれば一枚だけ修正すれば良いのですが、一品一葉は図面の枚数(=品目コード数)だけ修正する必要があります。これは、かなり心が折れそうになる作業でしょう。それでも一品一葉にこだわっていた設計部長の顔が忘れられません。素晴らしい先見性です。これらの事情から、バリアント図は必要(悪?)とされていたわけです。

バリアント図のメリット、デメリットは以下ということになるでしょう。

  • メリット……作図枚数を減らし作図時間の節約や設変時の修正枚数を減らせる。
  • デメリット……常に人間の判断が必須で、設計者の寸法取り違い、生産工程での寸法取り違いから逃れられない。

しかし、今時の判断としてCADや設計成果物のDB化の存在から上述したメリットは無くなりつつあります。

従って、新規図面にバリアント図の採用はご法度です。これは賛同していただけると思いますが、問題は設計成果物の2Sを担当している設計部員にとっての悩みです。諸先輩の残した過去のバリアント図でどのように2Sをすれば良いのか?……という切実なものです。「それも数百枚もあります」となればことは深刻です。

バリアント図の2S対応策

対応策1:
正攻法から参りましょう。これは言わずもがな、この2Sを好機にCADで一品一葉に図面を起こし直して、バリアント図からの決別を図ることです。このことにより一品目コードに従属する図面は一葉となり、形状は図面に描かれている通とおりの一意の情報となります(=一品一葉の完成)。設変の時の元バリアント図仲間の管理は親族図面としてDB上でひも付けをしておけば設変・管理漏れは防げます。まずはこの方法を推奨します。
しかしながらバリアント図の図面枚数やバリアント図内の順列組み合わせが多数で、とても新規図面を一品一葉で起こす時間とパワーが無いという場合も存在するでしょう。

対応策2:
一品目コードに対しバリアント図の寸法等選択部分をあらかじめ選択し新図番を取って「疑似一品一葉」にする。

一枚のバリアント図面を品目コード数だけコピペして順列組み合わせで不要な表記部分やマトリックス部分を二重線抹消や黒塗りを施して必須な寸法等表記のみ見えるようにして人間の選択誤りを防ぐ手段です。図面の見栄えは多少悪くなりますが、人間系の不具合を起こすことは無くなります。

対応策3:
順列組み合わせの数だけ品目コードを採番するが付随する図面は一枚。つまり「多品一葉」は継続されます。
ただし、品目コード体系に仕込みを作り例えば「枝番管理」とする。
12345-01、12345-02、12345-03……

この表記によりバリアント図の部品であることが認識され、寸法表の選択を枝番から行うルールとします。
残念ながら図面上の人間の判断は無くせませんが、かなり誤りの確率を減らすことはできるでしょう。
推奨はしませんが、バリアント図が過去設計資産として多く存在して居る場合の「妥協策」として存在すると考えています。

バリアント図はCADの無かった時代の名残ではあるのですが、先述したようにその当時から一品一葉を貫いていた設計部門が存在したことも確かです。その設計部長の口癖は「図面上には無駄な情報は書かない。あいまいな図面にしない」でした。だれが見ても一意で定まる図面を目標としていました。設計者同志の共有や類似図面(設計)の防止策を念頭にマネジメントをしていたのです。もちろん、その設計部門はとうの昔に流用化・標準化設計に移行しています。

設計部門のマネジメントはまさに「先憂後楽」です。将来に憂いを先送りしない設計マネジメントの大切さをバリアント図から感じている今日このごろです。

次回は9月1日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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