第13回 外注型(下請け)製造業を救う全方位受注 ~その1~

早いもので今年も“師走”となりました。
このコラムの執筆を始めてから、あっという間の一年。少しでも皆さんに役立つ情報を発信できていたらと思う次第です。

さて、本コラムは2012年の市況を予測して始めたわけではありませんが、何の偶然か?製造業ニッポンにとって本当に厳しい一年となってしまい、企業規模に関わらず想像を超える環境の変化を強いられました。
そしてこの変化は時代の要請としてこれからも続いていく予感がします。
反省ももちろん必要でしょうが、「ますます多くを考えて、知恵を出していかなければ生き残れない!」と感じるこの師走でもあります。

前回は以下の様に結びました。
今回のテーマの理解につながる問題提起ですので、もう一度その意味を考えてみてほしいと思います。

“かつて外注型(下請け)製造業を「手間賃仕事」と呼んでいました。つまり労働集約型の最たる形です。
ですから圧倒的な海外低賃金と戦う術もなく、多くの中小外注型製造業が消えていきました。しかし、ここで少し考えてみていただきたいのです。「作り込む力」「超短納期」という製造業ニッポンの存在のよりどころはいまだ健在であるということ。
そのよりどころを十分に活性化させられる!であろう仕組みとしてM-BOM構築というテーマを外注型製造業に持ち込んだことを。
既にお気づきでしょうが、この仕組みにおいても設計部門改善と同様、付加価値の生成は上流側にあります。
製造業ニッポンの強みを活かす上流側志向は、たとえ下請けの外注型製造業であっても、これからますます重要な考え方となるでしょう。
“すべては生き残るために!・・・です”

製造業ニッポン確立の過程において、外注型製造業の果たした功績は多大でした。
多くは自社設計部門を持たず、顧客のわがまま(?)な設計成果物を「知恵と工夫」でモノに変えていく能力は本当にすばらしいと思います。
しかし、巻頭での振り返りのごとく、多くの外注型製造業は気がつくとその能力を利益に結び付けることができなくなって「器用貧乏」と化し、悔しい涙を飲む結果となってしまいました。
この財産といえる「知恵と工夫」を体系化・具体化して付加価値として顕在化させる仕組みがM-BOM構築なのです。

何度も申しますが、「工賃」としての「下流側の付加価値」は競争力として既に存在せず、残された最後の砦は「上流側の付加価値確保」しかありません。
つまり、M-BOMという設計成果物から生成されるモノつくり情報によって「作り込みや短納期」に磨きを掛けていくことを指します。
そして、それは同時に幅広く仕事を獲得する能力「全方位受注」を可能にしていくことにもなるのです。

多少、前回と重複する内容や解説にもなりますが、前回の文面からはピンとこなかった読者にも「ああなるほど!」との気づきを得ていただき、仕組みのイメージを共有するためにも、もう少し深堀をしたいと思います。

まずは、このイメージを確立・共有するために図1を添えます。

図1

私がお預かりした多くの外注型製造業が、主要顧客(図1の例ではA、B、C社の3社)で売り上げの7割を占めるというような実態でした。
このような受注環境は、経営危機管理的にみても、一刻も早く脱却すべきです。
主要顧客がいつ海外へ移転するかわかりません。
たとえ、主要顧客の窓口の資材部長は「うちは国内特化でがんばるから!」などといっていても、上層部の決めごとである海外移転には抗することはできませんし、「国内特化と言ったじゃありませんか!」と食い下がっても後の祭り。また、大企業であっても突然の大リストラに伴う業務縮小による需要消滅という現実をつい最近見せつけられたばかりです。

そのようであれば、A社から・・・X、Y、Z社まで幅広く受注できる能力を身に付けるべきです。これがすなわち、「全方位受注」となります。

そのためには各社各様の設計成果物を、わかりやすく解読できるように、自社のM-BOMに構築し直して、自社の設計成果物として管理できる形にすべきです。

例えるとすれば、各社の設計成果物を海外言語(英語、ドイツ語、中国語・・・)とみなすと、自社M-BOM構築は、ちょうど日本語への翻訳作業といえるでしょう。
2~3社対応であればバイ・リンガル、トライ・リンガルという属人作業で何とかなっていたのでしょうが、あまねく顧客の成果物への対応を可能にするためには、すべての言語を日本語に置き換える能力が必要です。

そしてさらに、その自社M-BOM構築によって翻訳された「モノつくり情報」を、下流側(製造側)へスムーズに連携できる仕組みも必要です。
下流側は日本語で全社一気通貫のモノつくりをする、というイメージです。
これにより、異言語が日替わりで流れてくるモノつくりとは異なり、日本語という同じ構えのモノつくりが可能となり、品質の安定に大きく寄与することを理解して頂けると思います。

さて、自社M-BOM構築における必要性について述べてきましたが、次にそのメリットについて触れてみます。

【自社M-BOM構築によるメリット】

1:顧客設計成果物の統一管理
あらゆる形態の設計成果物の受け入れと管理。顧客の設計外注としてM-BOM構築を請け負うことも可能。

2:代替品提案
サプライチェーン寸断や難入手部品に強い。在庫品の効率活用(調達利益の確保も可能)。

3:超短納期
見積提示も含めたトータルな納期短縮(M-BOMによる正確・迅速な見積作業)。海外生産品の抗しえない物流に係る納期ロス(ロジロスと呼ばれる)に対し、絶対的な強みを持つ。

4:高品質
設計成果物の統一管理がもたらす設計変更等の正確な反映。自社M-BOMによる一気通貫モノつくり。

この自社M-BOM構築によって、上流側に付加価値を持たせた外注製造業になることができ、従来型の手間賃ビジネスから、幅広い顧客に対する「全方位受注」ビジネスへと変革することができます。

なお、自社M-BOM構築をする上では、それを実現させる仕組みが非常に重要となります。その仕組みを「M-BOMソリューション」と呼んでいます。
流用化・標準化設計に必須な設計プラットホームとしての「E-BOMソリューション」と類似していますが、「M-BOMソリューション」は下流側の生産管理システムと連携(BOM連携)することを前提とした仕組みであり、「どうやって造るのか?」というモノつくり情報の付加による造りやすさの追求も含まれ、似て非なるものです。
このあたりの詳細は次回以降にまわしたいと思います。 

参考)
E(Engineering)-BOM (Bill Of Materials)
     設計者の視点から製品設計仕様を満足させるための部品(品目)構成情報
M(Manufacturing)-BOM
E-BOMにものつくり情報を付加したBOM=BOMの最終形=モノつくり情報

次回は2013年1月11日(金)更新予定です。

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製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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