第14回 外注型(下請け)製造業を救う全方位受注 ~その2~

謹賀新年
新たな政治も新年と共に始動、株安、円高に歯止めが掛かり、今までとは異なるトレンドを感じさせていますが、ご祝儀相場で終わらないことを切に祈ります。
何より、製造業疲弊の諸悪の根源といってはばからない円高には画期的な修正が加わることを望みます。

前回のその1に引き続き、全方位受注を可能にするための自社M-BOM管理という考え方を、もう少し具体的にブレークダウンしたいと思います。
M-BOMに対する考え方は、設計組立製造業ばかりでなく生産部門を抱える製造業すべてに関わる大切な要件です。
何度も繰り返しになりますが、M-BOMを語る前にE-BOMを再度認識しましょう。

E(Engineering)-BOM (Bill Of Materials)とは
     設計者の視点から製品設計仕様を満足させるための部品(品目)構成情報

つまり、製品を構成し、その仕様を満足させるために必要なユニット群の部品構成やユニット群同士の関わりを設計者の視点から示した情報です。
従って、ここにはその部品のつくりや生産過程・工程は情報として存在しません。
設計者が欲しい部品の最終形を表現もしくは指示してあるだけで、入手法やどうやってつくるかは情報として存在しないのです。
そして、このE-BOMに「つくりの情報」を付加し、再構成したものがM-BOMとなります。
では、この「つくりの情報」とは何でしょうか?

まずは構成部品を「社内設計品」と「社外設計品」に二分して、各々の考え方を述べます。

1:社内設計品
図面等々の設計情報を使って自社内で「自由」に完成形を設計することができます。
お気づきのとおり、この「自由」が曲者です。
そして、野放図ではなく、ルールでこの「自由」に縛りを持ち込んだ設計が「流用化設計」と呼ばれるもので、それをさらに極めたものが「標準化設計」となります。その部品の完成形への過程・工程(どうやって作るか)はそれらが部品の仕様を左右しない限り指示されていません。従って「つくりの情報」が実際の部品を得るためには別途必要になります。

さらに社内設計品を細分化すると、以下の二つに分かれます。

1-A:外注に製作依頼する場合(外注品)
つくりの過程・工程は外注に依存することになります。
ただし、一外注で完成させられない場合は(メッキ、特殊塗装、表面処理、材料調質等)外注間の渡りを外注管理する必要があります。

1-B:内製する場合(内製品)
自社に部品内製工程を保持している場合は生産工程(材料、設備、人、工程)の管理が必要です。
当然「つくりの情報」は必須かつ重要になってきます。従って、精度の高いM-BOMがなければ高効率生産は望めません。
M-BOMを構築していない場合であっても、何らかの類似した情報を作成して対応しているのが実際です。

2:社外設計品(購入品)
設計仕様を満足する部品をカタログから選び、購入するメーカーの品目コード(型式コード)を指示すれば事は済んでしまいます。
ですから一見安易に見られがちなのですが、本当にそれでよいのでしょうか?
海外進出に伴った直近のトレンドであるグローバル化に耐えられるBOM(=グローバルBOM)は、設計者がメーカーの品目コードを直接指示することを原則禁じています。
その代わりに使おうとした部品の仕様を指示することになります。
つまり、設計者が指示した仕様を満足する部品であれば、世界中のメーカーから安くて短納期の物を調達することができます。
これは、現地調達という手段を活用することができ、海外工場へ本国から部品を発送するコストと時間を省いたモノつくりができます。
納期遅延のため100円の部品を10000円の空輸コストを掛けて現地工場に発送するなどという本末転倒から脱却できます。
従って、設計者がメーカー品目コードを直接指示する場合は、その部品で無ければ設計仕様を満足できない、もしくは顧客指定等の場合に限ってということになります。

以上の分類から明らかなように、「つくりの情報」を必須とするのは1-Bの内製品です。
材料調達、作業工程の分解・管理、工程順番。
そして、何より大切なつくりの手段として、サブアセンブリー等の仕掛部品を中間在庫として持って生産効率を上げる際もM-BOM構築は重要です。
M-BOMは、高効率の生産工程を可視化して正しく表現、伝達できるすばらしいツールです。
ですから、E-BOMからM-BOMの変化が大きいのがこの場合の特徴です。
なお、1-Aの場合においても先述した様に外注間の渡りに必要な外注管理情報は必須です。

<シングルE-BOM・マルチM-BOM>
先述したグローバルBOMに視点を置くと、最近のトレンドとして「シングルE-BOM・マルチM-BOM」という形態が求められています。
海外移転が進み、生産拠点も日本、ベトナム、中国・・・と同じ製品を異なる生産拠点で生産する場合、一つのE-BOMから各々の生産拠点のつくりの実態に合わせたM-BOMが必要になるのです。
特にマルチM-BOMでは、同一な製品、部品でも「つくりの情報が異なる」ことで「品目コードも異なる」という概念の理解が必要です。
「つくりの情報」も含めて一意の認識ができる(この場合、どこでどの様に作ったか)品目コードになっていなければなりません。
従って、製造業のグローバル展開をこのBOM構築能力無しに図ることはできないと考えています。

まとめますと、やはり何と言ってもM-BOMの基礎情報となるE-BOMの精度、流用度、標準度が後々まで影響を及ぼすことを認識すべきです。
優れたE-BOMにこそモノつくりの利益を確保し普遍的なモノつくりを支える、つまりグローバルM-BOMとなり得ることに気づかれたでしょうか?
流用化・標準化設計により精度の高い優れたE-BOMを構築し、そのE-BOMから生産効率を高めることができる「儲かる」M-BOMを構築することなのです。
次回はこのM-BOMと全方位受注との関係を結び付けるための具体的な考え方を説明します。

次回は2月1日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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