第15回 外注型(下請け)製造業を救う全方位受注 ~その3~

「M-BOMと全方位受注の関係」

前回はM-BOMの考え方、あり方、そしてトレンドとしてのグローバルBOMという考え方もあわせて紹介しました。
M-BOMがある程度理解できた段階で「では全方位受注(※)とどの様に結びつくのか?・・・」という疑問が湧いてくると思います。
ここのあたりを今月は解説していきたいと思います。
(※「全方位受注」についてはコラム第11回、第13回をご参照ください。)

第11回 グローバル化と下流側の生き残り策 ~その1~

第13回 外注型(下請け)製造業を救う全方位受注 ~その1~

外注型製造業は基本的に、得意先からの設計成果物、すなわち、他人(他社)の設計成果物をモノつくり情報の源泉としています。
ですので、主要得意先3社ぐらいで7~8割の売り上げを安定的に確保できた時代では、得意先おのおのの設計成果物に対する習熟を重ねていけばよかったわけです。しかし、そんな時代や環境はとうに過ぎ、経営的視点から見た危機管理としても「得意先の分散化」が必須になっていることは何度も述べました。
いつ海外移転してしまうか分からない得意先にすがることを止め、急な取引停止による「企業としての突然死」を何としても避けねばなりません。

この解決には・・・
得意先の分散化を図る = 全方位受注能力の獲得
なのです。

設計部門における流用化・標準化設計とBOM構築が未だ目標・ゴールとして存在しているゆえんは、中堅・中小をはじめとする多くの製造業がそれに至っていないということです。
つまり、設計部門から出図される設計成果物が、流用化・標準化されておらず十人十色ということです。
得意先10社の対応であれば10種類の、20社対応であれば20種類の設計成果物と格闘することが要求されます。
この個性豊かな(?)設計成果物群をモノつくり情報としてそのまま生産部門に流しても、うまくモノつくりができないという顛末は想像して頂けると思います。

私は例としてコラム第12回に以下の様に述べました。
“各社各様の設計成果物を外国語に例えると、それらをすべて日本語に翻訳し直して生産するイメージです。
つまり、あらゆる設計成果物に対してマルチ・リンガルの能力を持つことです”と。

第12回 グローバル化と下流側の生き残り策 ~その2~

この意味は理解して頂けると思いますが、マルチ・リンガル能力の獲得こそ得意先の設計成果物(=外国語)を自社のM-BOM(=日本語)に再構築する能力であり、それがあって初めて全方位受注が可能になります。

具体的なイメージで見てみましょう。

ここで申し上げたい重要な視点は・・・

  1. 外注型製造業の下流側の付加価値は競争力として大きく低下している(=儲けがない)
  2. A社~X社までどの様な設計成果物も受け入れられることに付加価値を求める(=翻訳できる能力、上流側に残された付加価値の獲得)
  3. この付加価値とは、
     A.顧客の設計成果物の統一管理(自社M-BOMに置き換えて管理)
     B.顧客の設計変更に正確に対応できる → 伝言ゲームやメモ設変からの脱却
     C.サプライチェーン寸断や短納期に強い代替品提案能力や迅速な見積提示
     D.自社M-BOMによるつくりの安定
     E.結果、高品質・短納期というアジア製造業へのアドバンテージの確保

統一M-BOM管理の仕組みとして、ITが必要であることは今時の環境としては当然なのですが、大切な要件はM-BOMを構成できる能力の有無です。

A社~X社までの対応と簡単に言いますが、設計成果物の形や精度は本当にピンキリだと思います。
私の経験ではE-BOMには程遠い、メモ書きに近い物、図面の隙間に小さく部品リストが載っている物、中には現物提示(これと同じモノ作ってほしい)もありました。

それらを解釈してM-BOMに翻訳する能力は、現場と経験から習得していかざるを得ないと思いますが、その作業やデータを再び属人化させないためにもオープン化されたパッケージを仕組みとして導入すべきでしょう。

イメージとしては以下のとおりです。

いかがでしょうか?・・・
製造業ニッポンは、現在置かれている厳しい環境に適合するために苦労しながら脱皮を繰り返し、その結果、試作・開発型製造業に移行すると想像しています。

であれば、試作・開発につきものの問題や不具合を解消させるために、必要な部品やユニットには短納期ゆえの「付加価値価格」を許容すると思います。
安価だからといってアジア圏からいつ来るか分からない納期を待つことはできないでしょう。
ましてや、やっと納入された部品やユニットが設計成果物解釈の相違や見逃しで用を足さない(使えない)可能性は大いに予想されます。

その意味では新しい国内特化・外注型製造業としての存在の形を検討する好機であると思います。M-BOMと共に・・・です。

次回は3月8日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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