第40回 この恨みハラスメント

「ハラスメント」と聞くと、皆さんはセクハラやパワハラを思い出すと思いますが、ちょっとWebサイトで検索してみたら、なんとハラスメントの種類は26種類もあるのだそうです。
中には強制的に歌わせるなどのカラオケハラスメントや血液型の固定概念によるブラッドタイプハラスメントなど首をかしげたくなるハラスメントもありますが、ハラスメントは、受けた側が「嫌だな」と思う気持ちが非常に重要ですので、今はこのようなハラスメントもあるのですね。

クライアントの病院で、ある日、院長から相談を受けました。
「実はある部署の所属長がパワハラしているらしいんだ」
退職していった職員がその最後の日に院長に泣いて訴えたそうです。
その所属長は朝早く出勤し、道路を掃除して、道行く誰にでも明るく挨拶するような方です。「仕事もそこそこきちんとしてくれているので、できれば自主的に態度を改めて、おとなしくなってほしい」「自分が現場に出ていくことは構わないが、できれば最後の手段にしたい」とざっとこのような趣旨のお話しでした。

退職していった職員の涙の訴えですので、嘘とは考えにくいですが、パワハラの証拠もあるわけではありません。

パワハラかどうかの見極めのポイントは4つあります。

 1、上司から部下へ、あるいは医師から看護師など立場の強いものから弱い者への行為なのかどうか?という点
 2、看護師なのに看護業務以外の清掃だけするように命令されたなど、合理的な命令かどうか?という点
 3、「君は頭悪いね」「君みたいな人間は、いない方がましだ」など仕事とは関係がない人間性を否定するような言動かどうか?
 4、以上の三つの事柄が繰り返し行われているかどうか?もちろん一回だけなら良いという訳ではありません。

パワハラを含むハラスメントが現場で行われていると、当然その影響は大きいです。

今回は、まずアンケート調査を実施することを提案しました。
職員満足度調査の設問のなかにハラスメントに関する設問を入れ、アンケート調査を実施しました。よほどうっぷんが溜まっていたのでしょうか。アンケート表にびっしりと書いてくる人、わざわざ自分でレポート用紙に書いて別紙添付してくれた人(最高で11枚のレポート用紙が添付されていました)も多数いらっしゃいました。記載内容を確認すると、「皆の前で大声で罵声を浴びせられた」「私服にダメ出しされた」「自分好みの洋服を買ってくるので服のサイズを教えて」「顔はかわいいのに性格がきついな」など前述したパワハラの見極めポイントに全て該当しています。パワハラ以外のセクハラに近い言動もありました。また勤務時間内にも関わらず、競馬新聞を読んでいるとか、同じく業務時間内に勝手に外出して所在不明になる、私用電話を頻繁にしているなどモラルハラスメント等の問題も浮かび上がってきました。
何月何日こんなことを言われた、されたなど記録を取っているという方もいました。
これは非常に危ない状況の現場です。

アンケート調査の実施の目的は、状況把握や事実確認もありましたが、第一の目的は自主的にパワハラを抑制してもらうことでした。
アンケート票は当然、当該上司も記入しますので、パワハラに関しての設問があることに気付きます。普通の人だったら、この設問を見た時に「まずい」と思うはずです。こちらのもくろみ通り、今はおとなしくしているそうです。

アンケート調査の結果は、全ての部署を取りまとめ、全体報告会を開催します。
この報告会では虚偽の報告はしませんが、特定の部署や特定の職員が判明してしまうような報告は控えます。
ただし、全体の平均値と自部署の平均値の比較表は各部署の所属長へお渡しします。この比較表で自部署の改善点や問題点を理解して頂き、より良い職環環境にするために活用してもらいます。
さらに毎年、同様のアンケート調査を実施し、改善されたかどうか経時的な変化も確認できます。このようなアンケート調査後の報告会はアンケートを回答してくれた職員の方々への我々の義務でもありますが、今回はパワハラ上司に対しての牽制でもあります。

このままおとなしくしてくれて、仕事への姿勢も改めてくれれば良いのですが、時間が経つと共にまたパワハラが起きてくる可能性もあります。
そのため、数か月後にハラスメントに関する職員研修を現在企画しています。
さらにハラスメントは非常にデリケートな問題ですので、誰にも相談できないことが多く、(今回のケースも退職最終日に訴え)もっと早い段階で相談できる体制を整えることが重要です。
今までは看護部長がその窓口になっていましたが、形骸化していて、誰も相談に行っていないのが現状です。そこで、院内の相談窓口は引き続き看護部長にしていただき、もうひとつ外部にも相談できる窓口(社会保険労務士)を作ることにしました。職員は任意でどちらの相談窓口も利用できる体制を整えました。もちろん職員に対し、2つの相談窓口ができたことを周知徹底したのは言うまでもありません。

働きやすい職場になると良いのですが…。
尚、記載内容の関係から、事実をもとにしていますが、脚色を加えていますのでご了承ください。

皆さんは、どう思いますか?

次回は4月8日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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