トラック新法とは?~2026年以降の主な改正内容と運送会社が進めるべき対応を解説~

2025年6月に公布された「トラック新法」は、物流業界に大きな影響を与える法改正です。正式には「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」および「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」から構成されており、物流の持続可能性確保を目的としています。
2024年問題による時間外労働規制の開始以降、ドライバー不足や輸送力不足への懸念が高まっています。2030年には輸送能力が大幅に不足するとの試算もあり、従来の長時間労働を前提とした物流体制の見直しが求められています。トラック新法は、こうした課題に対応し、安全で持続可能な物流インフラを実現するための制度改革です。

トラック新法とは?

トラック新法とは

トラック新法は、運送業界における健全な競争環境の整備と、ドライバーの処遇改善、安全管理の強化を目的として制定されました。これまでの価格競争を中心とした業界構造から、適正な運賃と適切な事業管理を前提とした持続可能な事業環境への転換を目指しています。

なぜトラック新法が制定されたのか

トラック運送業界では、慢性的なドライバー不足、高齢化、人件費や燃料費の上昇、長時間労働などの問題が長年指摘されてきました。特に2024年問題による時間外労働規制の適用により輸送能力の低下が懸念されています。こうした課題を解決し、将来にわたり物流機能を維持するために法改正が行われました。

トラック新法の施行スケジュール

主な改正内容は段階的に施行されます。

施行時期主な内容
2026年4月1日再委託回数の制限(努力義務)
白トラ(無許可運送事業者)への委託禁止強化
2028年までトラック運送事業の許可更新制導入
適正原価制度の導入・ドライバー待遇改善の義務化

トラック新法の五つのポイント

健全な取引関係と責任の明確化に向けて、2025年4月1日に施行された内容からさらに一歩進んだ対策が2026年以降、段階的に導入されます。そのポイントは大きく五つです。

(1)トラック運送事業の許可更新制を導入

トラック運送事業の許可更新制を導入

これまで運送事業許可は一度取得すれば継続的な更新審査がありませんでした。しかし、今後は5年ごとの更新制へ移行し、法令順守状況や運行管理体制、安全管理体制などが審査対象となります。運行記録や勤怠管理記録の保存だけでなく、それらを適切に運用する管理体制も重要になります。

(2)適正原価を下回る運賃・料金の禁止

適正原価を下回る運賃・料金の禁止

これまでの「標準的運賃」に代わり、法的拘束力を持つ「適正原価」が導入されます。適正原価を下回る契約は問題視される可能性があり、適正運賃による契約が求められます。ドライバーの待遇改善や安全管理の強化を実現するためには、適切な収益確保が欠かせません。

(3)再委託回数を2回以内に制限(努力義務)

再委託回数を2回以内に制限(努力義務)

多重下請け構造の是正を目的として、再委託は2次請けまでに制限されます。元請け事業者には委託先を把握し、「実運送体制管理簿」を作成・管理することが求められます。

(4)白トラ(無許可業者)への委託禁止

白トラ(無許可業者)への委託禁止

無許可事業者への委託が発覚した場合、荷主側にも罰則が科される可能性があります。運送事業者だけでなく荷主企業も委託先の許可状況を適切に確認する必要があります。

(5)ドライバー待遇改善の義務化

ドライバー待遇改善の義務化

能力や経験に応じた評価制度の整備や適正な賃金支払いが求められます。そのためには労務管理を適切に行い、自社の運行状況や労働実態を可視化することが重要になります。

トラック新法で運送業界はどう変わるのか

トラック新法の施行により、運送会社にはこれまで以上に厳格な管理体制が求められます。

  • 運行管理や安全管理が不十分な場合、許可更新に影響する可能性がある
  • 価格競争中心の受注から適正運賃を前提とした競争へ移行する
  • 受注量だけでなく、コンプライアンスが重要な経営課題となる
  • ドライバーの待遇改善が法令上の要請となる
  • 委託先管理の重要性が高まる

また、貸し切りバス業界では既に許可更新制が導入されており、厳格な監督体制の下で事業者数が減少した事例もあります。今後は運送業界においても管理体制の差が競争力を左右する要因となるでしょう。

トラック新法対応チェックリスト

まずは自社の現状把握から始めましょう。

トラック新法対応チェックリスト

チェックが付いていない項目があった場合は、早急に管理体制の見直しを検討しましょう。

トラック新法と併せて向き合うべき四つの経営課題

法改正への対応だけでは、今後の事業継続を十分に支えることはできません。運送会社は次の四つの課題にも直面しています。

(1)人材不足・高齢化

人材不足・高齢化

ドライバー確保の構造的危機

  • 若年層が少なく、中年層に偏った年齢構成
  • 属人化・ブラックボックス化が進む現場
  • 採用しても定着しない職場環境

(2)コスト上昇・価格転嫁困難

コスト上昇・価格転嫁困難

利益を圧迫する構造的コスト増

  • 人件費・燃料費のジリジリとした上昇
  • データなき価格交渉は荷主に押し返される
  • 物流費10%上昇→物価全体を0.2%押し上げ

(3)安全・コンプライアンスリスク

安全・コンプライアンスリスク

一度の事故が会社の命取り

  • 飲酒・過労 → 社名報道 → 信用失墜・取引停止
  • 許可取り消し・業務停止は即経営危機に直結
  • 法規制強化で「知らなかった」は通じない

(4)輸送力不足

輸送力不足

荷物が運べない時代が来る

  • 問題意識は8割超、取り組みは5割未満
  • 労働時間は全職業平均より400~450時間長い
  • 年収は全産業平均より20万~60万円低い
  • * 出典:国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」2024年12月、内閣府「マンスリー・トピックス No.74」2024年11月、日本商工会議所「商工会議所LOBO調査」2024年7月、国交省「改正物流法」概要資料

(1)人材不足 × (2)コスト上昇は、二重苦の構造。どちらも「デジタル化」なしには解決できない根深い課題です。
一つの重大事故・法令違反が謝罪会見 → 取引停止 → 最悪の場合は倒産へ直結します。
「なんとかなっている」は過去の話です。

デジタル化による業務標準化・採用力強化・コスト可視化・データに基づく価格交渉力の強化が急務です。

トラック新法対応にDXが求められる理由

これらの課題に対応するためには、デジタル技術の活用が欠かせません。DXは単なる業務効率化ではなく、コンプライアンス強化や経営基盤の強化につながります。

業務標準化

業務標準化

業務手順や運行管理情報をシステム化することで、属人化を防ぎ、誰でも同じ品質で業務を遂行できる環境を整備できます。

コストの見える化

コストの見える化

燃料費、人件費、運行実績などをリアルタイムに把握することで、適正運賃の交渉や利益管理に活用できます。

コンプライアンス強化

コンプライアンス強化

点呼記録や運行データ、アルコールチェック結果などを電子的に管理することで、監査対応や証跡管理の精度を高められます。

データに基づく経営判断

データに基づく経営判断

感覚ではなくデータを基にした意思決定を行うことで、収益改善や将来予測の精度向上につながります。

トラック新法対応・人材確保・コスト管理 全ての課題の中心に「DX」があります。

デジタル化は「コスト」ではなく「投資」。
見える化 → 標準化 → 自動化 → 意思決定の高度化
このサイクルが競争力と成長力の源泉になります。

トラック新法対応を支援するソリューション

運送事業者向け販売管理システム

日報管理、請求管理、実績管理を一元化し、運送業務全体の効率化を支援します。実運送体制管理簿の作成にも対応しています。

デジタルタコグラフ~ドライバーの運行を把握~

運行実績や拘束時間を記録し、改善基準告示への対応や安全運行の推進を支援します。

呼気アルコール測定システム~点呼業務を確実に~

対面点呼、遠隔点呼、自動点呼に対応し、アルコールチェック業務の確実な運用を支援します。

就業システム~ドライバーの就業状況を把握~

ドライバーの労働時間を正確に把握し、時間外労働規制への対応を支援します。

ドキュメント管理システム~各種情報の記録・保管~

各種記録や帳票を電子的に保管し、検索性と管理性を向上させます。

よくある質問

トラック新法はいつから施行されますか?

再委託制限や白トラ対策は2026年4月から施行されており、許可更新制・適正原価制度・ドライバー待遇改善に関する義務化施策は2028年までに施行される予定です。

実運送体制管理簿とは何ですか?

運送業務の委託先や再委託先を記録・管理するための帳簿です。多重下請け構造の透明化を目的としています。

荷主企業にも影響はありますか?

あります。無許可事業者への委託に対して罰則が適用されるため、荷主企業も委託先の確認体制を整備する必要があります。

DXはトラック新法対応に必要ですか?

法令上必須ではありませんが、運行管理・労務管理・書類管理を効率的かつ継続的に運用するための有効な手段です。

まとめ

トラック新法は、物流業界の持続可能性を高めるための重要な制度改正です。許可更新制の導入・適正運賃の実現・再委託管理の強化・ドライバーの待遇改善など、運送会社にはこれまで以上に高度な管理体制が求められます。

これからの運送業には、法令対応だけでなく、人材不足やコスト上昇への対策も欠かせません。業務の「見える化」や「標準化」を進めるためにもDXを活用した経営基盤の整備を検討してみてはいかがでしょうか。

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株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

運輸・配送にかかわる企業へのアプリケーション導入の現場から、問題提起と解決策をお伝えします。