第85回 「質問」それは聞き出す能力

コンサルタントの仕事をしていくうえで、最も重要な能力は「聴く」ということだと考えています。しかし、こちらが黙っていれば、相手が勝手に話をしてくれるわけではありません。実際は相手の話を聴くために質問して「聴き出している」わけです。「話を聴き出すための質問」には、ちょっとしたコツがあります。

「質問」それは聞き出す能力

コンサルタントの仕事をしていくうえで、最も重要な能力は「聴く」ということだと考えています。コンサルティングが上手くいくかどうかは、クライアントの話をどれだけ聴きこんだかが成功するかどうかを左右し、クライアントの満足度にもつながる気がします。しかし、こちらが黙っていれば、相手が勝手に話をしてくれるわけではありません。実際は相手の話を聴くために質問して「聴き出している」わけです。この聞き出すための質問は、コンサルタントに限らず、必要な能力だと思います。この質問する能力、スキル、相手が自然にいろいろなことを話したがるにはどうすれば良いのかといったものは、生まれ持って備わっている能力ではありません。長い時間、さまざまな人と接するなかで、試行錯誤しながら習得することもありますが、それでは時間の無駄にもなりますから、早いうちに質問する能力を身に付けておけばいろいろ役に立つことも多いでしょう。 
また、私は学校で講師もしていますが、就職面接のアドバイスを学生から求められることがあります。その時は、面接の最後の時に、面接官から「最後に何か質問はありませんか」と聞かれたら、質問ができるように事前に準備しておきなさいとアドバイスするようにしています(質問なら何でも良いというわけではありません)。これは、質問がある学生は、当院に興味を持っている。問題意識を持っている。こちらの話を理解している。と面接官は思うことが多く、良い評価をしてくれることが多いからです。質問が無い学生は当院に興味を持っていないと面接官は考えることもあります。実は、この質問をあらかじめ考えて用意することは、話を聞き出す質問能力を向上させる訓練にもなります。

質問をする、話を聴くまえに準備することがあります。それは、相手との信頼関係を構築して、相手との距離をできるだけ短くしておくことです。例えば初対面の人には、誰もべらべらとしゃべりません。相手がどんな人か分からないのに話をする(情報提供する)ことは危険と考えます。では信頼関係を築くにはどうすれば良いのかというと、相手の話を聴くことです。鶏が先か卵が先かのような話ですが、相手の話を真剣に聴くことを重ねていくと、徐々に信頼関係が築けていけます。真剣に話を聴くということは、相槌(相手に聞いていますということや、共感、同感ですというサインを送ること)や質問(真剣に聴いているから疑問点や聴きたいことが出てきます)を挟みながら聴き、共感と納得がポイントです。そして「質問は短く」することもテクニックのひとつです。人は、自分の話を真剣に聴いてくれる人に好感を抱きます。好感を持った人には話しやすい。話を聴いてもらいたいと思います。さらに場合によっては、相手が話したがらない内容を聴き出さなければいけないようなケースもあると思いますが、信頼関係が築けていないうちに聞き出すことは、まず無理です。
相手の話を聴くこと。これは簡単なようで、難しいことです。仕事柄、さまざまなお立場の方がたと会食する機会がありますが、私が相手から何か話を聴き出される立場になることもあります。そのような時に、私から何か話を聴き出したいはずなのですが、自分が率先していろいろお話をしてくれる人にたまに出会います。大抵酒席であることが多いのですが、反面教師として、ありがたくその方のお話を拝聴させていただいています。また、この話題について情報交換したいなと思い、その話のネタを振ることもありますが、そのネタをスルーされることもあります。この「ネタを振る」という行為は、相手から話を聴き出すときの呼び水のような役目にもなりますから覚えておいても損をしないテクニックです。今回のケースはこちらが意識してネタを振りましたが、多くの場合は、相手は意識せずにキーワードを発していることがほとんどです。このような相手の話のなかにあるキーワードやヒントを聴き逃さないようにしてください。ちなみに意識的にネタふりをして、スルーされると、人はその話題について話をしないまま終わることが多いでしょう。さらに人によっては、気分を害することにもなりかねません。その場の空気を読む、臨機応変に状況認識、状況判断して、その場に応じて質問することが重要です。役職が上位の方々は、やはり上手な方が多い印象です。下手な営業マンに多いタイプですが、自分の話したいことを一方的に話すことは何も得ることはありませから注意が必要です。上手になるためには、日ごろから人と話をするときに、意識して話をするという癖を身に付けることです。そして相手の話を「音」として聞くだけではなく、相手の表情、口調、話すスピード、目線、しぐさなどからも相手の感じていることを読み取ることがポイントです。「音」としては「YES」と言っていても、心の中の「NO」を聴く力を養ってください。

「話を聴き出すための質問」には、ちょっとしたコツがあります。それは、仮説を立てるということです。相手の情報であれ、聞き出したい内容のことであれ、仮説を立てておくことが重要です。事前にあらゆる視点から情報収集を行い、集めた情報から仮説を立てておきます。その仮説を頭に置きながら、相手の話を聴けば、おのずと質問は頭に浮かびます。もうひとつの方法は事前に情報収集を行うことは同じなのですが、そこから仮説を立てていくうえの過程において、出てきた疑問を質問するということです。しかし、出てきた疑問を数多く質問すれば良いのではなく、複数の質問の中から最も重要な質問(物事の本質に関わること)を見つけ出しておくことが大切です。鋭い質問は、相手から感心され共感され、次の段階の話を聴き出すチャンスにもつながります。逆にありきたりの凡庸な質問には、「この程度か」などと見透かされ、引き出せるはずの話も引き出せなくなってしまいます。いずれの手法でも構いませんが、事前にできるだけの情報を収集しておき、頭の整理をしておくことが肝要です。
話を聴くということはカウンセリングに似たところがあります。相手が自分でも気づいていないことを、カウンセラーの質問に答えていくうちに気づく。カウンセラーは質問するだけではなく、相手の回答に対して、「今のあなたの言ったことは○○ということですね」などと聞いた話をまとめて言い換えます。この「話をまとめ、言い換える能力」も重要です。
以前恩師にあたる方から「脳みそに汗をかきなさい」と言われたことがあります。知恵を絞れという意味もあったと思いますが今、私はクライアントとの会話に最大限の能力、五感を総動員して脳みそに汗をかきたいと思います。

皆さんは、どう思いますか?

次回は1月16日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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