第17回 収入改善編 レセプト請求のミスを削減

■レセプト業務の改善ポイント
ご存じのとおり、病院収入は診療報酬明細書(レセプト)で成り立っています。
しかし、これもまた周知のとおり、確実に漏れなく不備なくレセプトが作成されている、とは言い切れません

レセプト業務の改善は医事課の永遠のテーマですが、今回はレセプト業務の改善ポイントをお話ししたいと思います。

レセプト業務の改善ポイントは、「手間をかけずに、漏れ防止の仕組みを構築する」ことです。
レセプトコンピュータ(以下レセコン)の導入が進んでいるにも関わらず、レセコン入力やカルテ記入・伝票起票時点での人の作業はまだ残っています。
人の作業があれば、そこにエラーがないとは言えません。
しかし、気を付ける点は絞られています。医師のカルテ記入、伝票起票の漏れ、カルテの必要項目を拾ってのレセプト作成、レセプトチェック、必要に応じて医師に確認などです。
また前提条件としては、コンピュータのバグつぶしとデータのメンテナスが確実にできていることですが、意外にできていない施設もありますから注意してください。
このような対応は医事課内にコンピュータに詳しい人間がいるかいないかという個人のスキルに依存しているところも大きいようです。

■なぜレセプトミスは発生するのか
レセプト業務でのミスがなぜ発生するのかを考えてみると、各業務プロセスにおいて、「必ずしなければいけないこと」の漏れや勘違い、知識不足が挙げられます。
「人間のすることだから、ある程度は仕方がない」とあきらめていませんか?前述したようにミスする可能性が高い箇所は分かっているのですから、その部分に対してWチェックをするとかリカバリー策を講じるとかの対応をすればよいのです。

現在の業務プロセスを徹底的に洗い出す。
その各プロセスで発生しそうなミスや以前発生したミスも洗い出す。
そのうえで、そのような現象が発生しないようにするには、どんな防止策があるのかを考えるだけです。
防止策の考え方は、まずミスの発生を抑える方法は複雑な業務から簡単な業務へ移行できないかという視点が重要です。
それでもミスが発生した場合のリカバリー策も考えておく必要があります。

■レセプトチェックのプロセス
レセプトのチェックについて漏れなく進めるポイントは、次の5つのステップにおいて、事実の洗い出しとその対応策です。

【STEP 1】 カルテやレセプト用紙などの現物でのミス
実際にミスが起きたカルテや伝票、レセプト用紙を見ながら内容項目ごとにミスが起きやすい内容をチェックします。
必ず間違えやすい箇所やその原因となるものが見つかります。そのような部分を注意するようなチェックリストなどを作成したり、勉強会などで皆の共通認識にしたりすることでミスの発生が抑えられます。

【STEP 2】 発生ミスの前後対策
「後で確認しようと思っていた」などは、ミスの発生の原因には多く聞かれる理由の一つです。
なぜ、その時にすぐに確認できなかったのか?その理由は何か?原因となる理由を取り除くためにはどうすればよいのか?後で確認しようと思っていて、もし忘れてしまったら、どこかで忘れてしまったことを気づかせてくれるチェック体制はあるのか?などの原因の分析とその対策を考えます。

【STEP 3】 各自の自覚
いくらどんな対応策を講じても、レセプトを作成する人に自覚がなかったらレセプトミスは無くなりません。
レセプトの作成を担当している医事課職員は、医療機関の収入部門を支えている重要な部門員であり、その重要な業務を担当しているという高い自覚が求められます。
レセプトに不備や間違いがあると支払審査機関から差し戻されます。
差し戻されたレセプトは多くの手間や時間をかけて、再度レセプト請求するわけですが支払われる月は一か月先になります。
また、査定により請求金額より少なく支払われることもあります。
このようなことが多く続けば、当然医療機関の収入が減り経営を悪化させる原因となることは明らかです。
そのようなことにならないためにもレセプトを入念に作成、確認しなければならないという各自の認識が重要です。

【STEP 4】 よくある原因の理解と業務改善
繰り返されるミスの内容、多くの人が侵すミスの内容は病院によって多少異なりますが、ここでは、よくある請求漏れの事例をご紹介します。
 ●請求書作成前
  ・電話再診料
  ・他院撮影レントゲン写真の診断料
  ・損保会社などから送られてくる病状照会のための面談料および付随文書料
 ●請求書作成後
  ・不具合発見後、患者からの領収金額と一致させる再依頼の励行
  ・会計カード等と手書き点数修正
  ・コンピュータ利用時、修正・徴収プログラムの活用
 ●システム
  ・会計カードとカルテの構造の関係が診療ごとに会計カードに反映される形態か
  ・カルテと会計カードが分離している場合の会計カード紛失
  ・返礼レセプトの未処理

【STEP 5】 発生原因の理解とその対策
原因分析と対策立案は個人で行うのではなく、チーム全員で行うべきです。
以下に一般的なレセプトチェック漏れとその対策を記述します。
 ●一般的なレセプトチェック漏れ
  ・計算漏れ、給付割合ミス、被保険者証の確認ミス(登録者や期間等)、関連法規の未習熟、点数表の理解不足、薬価基準の引き方不足(薬名単位、単価)、転記ミス、誤記、カルテの見落とし

 ●考えられる対応策
  ・セット化、自動算定、オーダリング化、3枚複写方式、保留分処理のプログラム処理化、約束ノート活用

■さいごに
今回は医事課によるレセプト作成に焦点を当てましたが、最近のレセプトは医事課だけでは作成できないケースも散見されます。
医師や看護師、コメディカルの協力なしでは、レセプトが作成できないケースが多くなりました。
とは言ってもレセプト作成の中心は、やはり医事課に間違いありませんので、医事課がしっかりと他の職種を巻き込むような活動をして、漏れのないレセプト作成を目指してほしいと思います。

皆さんは、どう思いますか?

次回は4月10日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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