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改正前の電子帳簿保存法第10条の内容と改正後の保存要件
改正され、2019年12月16日に施行された電子帳簿保存法の旧10条では、電子取引において授受した国税関係帳簿書類の電子データ化に関する要件を定めていました。
しかし2022年1月1日からの法改正では、第10条の一部を要件緩和し、第7条として定めています。保存区分「電子取引」における保存要件については引き続き従う必要があるため、要件緩和の内容と併せて確認する必要があるでしょう。
目次
電子帳簿保存法と旧10条の内容
かつて電子帳簿保存法の第10条で、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存について定めていました。しかし、2022年1月1日に施行された同法令には第10条が存在しません。電子帳簿保存法の概要を振り返るとともに、第10条にあたる箇所を把握します。
電子帳簿保存法とは
国税関係帳簿書類の電子保存に関し、保存方法や運用、管理について取り決めている法律です。法令で定めている要件を満たしたうえで電子データ保存を認めると同時に、電子データで受け取った取引情報の保存義務も定めています。国税関係帳簿書類を扱う全ての企業および事業者が対象で、1998年に制定されて以来、改正を重ねてきました。
そして2021年にも大幅に改正され、2022年1月1日に施行されています。国税関係帳簿書類を電子データ化するにあたり以下三つの保存区分があり、それぞれの要件に従って電子データ化し保存します。
- 電子帳簿等保存
- 電子的に作成した帳簿や書類をデータのまま保存する
- スキャナ保存
- 紙で受領また作成した書類を画像データで保存する
- 電子取引
- 電子的に授受した取引情報をデータで保存する
電子帳簿保存法の旧10条(2019年12月16日施行)とは
保存区分「電子取引」における保存要件は、改正された年ごとに、定めている箇所が異なります。
- 2019年12月16日に施行された法改正時:保存区分「電子取引」保存要件は旧10条で定めている
- 2022年1月1日からの法改正時:保存区分「電子取引」保存要件は第7条で定めている
電子データの保存要件を確認する際は、必ず最新の法令を確認しましょう。ただし過去の保存要件を振り返る場合は、保存区分「電子取引」における保存要件は上記のように定めている箇所が異なるため混乱しないようにしましょう。
電子帳簿保存法旧10条にある保存要件の改正内容
電子帳簿保存法の旧10条で定められていた内容は、要件緩和などが行われ、2022年1月1日に第7条として施行されました。電子データ保存の義務化に関わる内容も含まれているため、改正内容について把握する必要があります。
電子帳簿保存法旧10条(2019年12月16日施行)の内容のポイント
2019年12月16日に施行された改正電子帳簿保存法旧10条では、電子取引における取引情報を紙に出力し、保存することを認めていました。当時、電子データで保存するためには多くの保存要件を満たす必要があり手間がかかるため、紙のまま保存する企業もありました。
電子帳簿保存法第7条(2022年1月1日施行)に記載されている保存要件の内容
電子データ保存を推進するため、2022年1月1日に施行された改正電子帳簿保存法では、紙の保存について、一部認めないとしました。
紙での保存が認められないのは、電子取引で授受した国税関係書類です。これらは電子帳簿保存法の保存要件に従い、電子データのままで保存することと定めました。
電子データで保存しやすいよう、2022年1月1日施行の改正時に保存要件を複数緩和し、電子データの管理運用を行いやすくしました。
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存
第7条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
旧10条(2019年12月16日施行)と第7条(2022年1月1日施行)の変更点
国税関係帳簿書類を保存する際に、電子取引の保存区分にあたる場合は、真実性の要件と可視性の要件を満たす必要があります。電子データ化による保存と管理を容易にするため、以下のような要件緩和が行われました。
旧10条(2019年12月16日施行) | 第7条(2022年1月1日施行) |
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第10条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。 ただし、財務省令で定めるところにより、当該電磁的記録を出力することにより作成した書面または電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合は、この限りでない。 | 第7条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。 |
電子帳簿保存法の改正による対応方法
電子取引において授受した国税関係帳簿書類を電子データ化するためのルールは、現在第7条で定められています。しかし企業や事業者は、残り二つの保存区分「電子帳簿等保存」と「スキャナ保存」にも注目し、それぞれの要件を満たすための対応が必要です。
管理している書類の保存区分を確認し管理する
まずは自社で管理している国税関係帳簿書類を洗い出し、三つの保存区分のうちどこに当てはまるのかを見極めましょう。さらに、それぞれの保存区分における保存要件を確認します。
電子的に作成した国税関係帳簿 | 保存区分「電子帳簿等保存」の保存要件を確認する(注1) |
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手書きの箇所がなく紙で保存している国 税関係帳簿書類 | 保存区分「スキャナ保存」の保存要件を確認する(注2) |
メールやインターネットなどの電子取引に おいて授受した、電子データでの国税関 係帳簿書類 | 保存区分「電子取引」の保存要件を確認する(注2) |
- (注1)電子帳簿等保存の保存要件について、以下の記事で詳しく記載しています。
- (注2)スキャナ保存、電子取引の保存要件について、以下の記事で詳しく記載しています。
電子データ化できる紙の書類を洗い出す
以下に当てはまる国税関係帳簿書類は、電子データでの保存またはスキャナ保存ができます。
自己が一貫してコンピュータで作成 した国税関係帳簿 | 電子データのまま保存できる |
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自己が一貫してコンピュータで作成 した国税関係書類 | 電子データのまま保存することが義務付けられている |
用紙で受領した国税関係書類 | スキャナ保存できる
|
ただし2022年1月1日よりも前に授受した紙の書類においては、所轄税務署長の承認が事前に必要です。2022年1月1日以降に授受した紙の書類に関しては、事前の手続きは不要です。
電子取引で授受した取引情報の保存要件は第7条を確認する
2019年12月16日に施行された改正電子帳簿保存法の旧10条では、電子取引にて授受した国税関係帳簿書類を電子データで保存する旨や、電子データで保存しなくてもよい場合について記載されていました。
しかし、2022年1月1日に施行された改正電子帳簿保存法では、同様の内容が第7条に記載されているうえ、電子データ以外の保存に関する文章がなくなっています。また保存要件は財務省令で定めるところとされています。そのまま定めている場所が移動したのではなく、より電子データ保存が普及するよう改正されました。
電子帳簿保存法は今後も改正される可能性があるため、常に最新の情報を確認しましょう。
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本記事の監修者
岡 和恵
大学卒業後、2年間の教職を経てシステム会社に入社。
システム開発部門でERP導入と会計コンサル、経理部門での財務および税務会計を経験。
税理士、MBA、CFPなどを取得。
2019年より税理士事務所を開業。会計・税務の豊富な実務経験と知見を活かし、税理士業務のほか監修者としても活躍中。
保有資格
・税理士・CFP
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