FAXの電子帳簿保存法への対応法|送受信したデータの保存方法とは

FAXには、受信したデータを用紙で出力するタイプや電子データのまま受信するタイプなどがあります。FAXで受領(じゅりょう)したデータまたは用紙が、国税関係帳簿書類の場合は保存義務があります。ただし、受信するFAXのタイプにより保存方法が異なります。

授受したFAXデータを電子データのまま保存するか、用紙のまま保存するかは電子帳簿保存法で定められている電子取引に該当するか否かにより異なります。

FAXで送受信した書類の電子帳簿保存法への対応

FAXで送受信した書類も、FAX機器のタイプによっては電子帳簿保存法の対象となり、要件に沿った保存が必要な場合があります。FAX機器のタイプ別に、必要な対応方法を記載します。

受信した内容を紙に出力するタイプのFAX

対象の書類を用紙で送信する、または受信したデータが用紙で出力されるタイプのFAXの場合、書面による取引があったものとして取り扱うため、電子取引には該当せず用紙での保存が認められます。またスキャナー保存の要件に従えば、用紙をスキャナー保存して原本を破棄することもできます。

スキャナー保存するための具体的な要件を以下の記事に記載しています。併せてご覧ください。

電子帳簿保存法におけるスキャナ保存|改正のポイントと保存要件は?

受信した内容を電子データ保存できるタイプのFAX

電子取引に該当するため、電子データでの保存が必要です。2022年1月1日以降に授受したFAXのデータは電子データでの保存義務が生じます。保存期間は、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間、また事業年度で欠損金額や災害損失欠損金額が生じた場合は10年間です。

電子取引で授受したFAXのデータは、以下の電子取引データの保存要件に従い保存します。

真実性の要件

以下四つのうち一つ以上を満たせばよい

  1. タイムスタンプが付与された後、FAXデータの授受を行う
  2. FAXデータの授受後、速やかに(またはその業務の処理にかかる通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付与するとともに、保存を行う者または監督者に関する情報を明確にしておく
  3. 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの履歴が残るシステムまたは記録事項の訂正・削除が行えないシステムで契約書の授受および保存を行う
  4. 正当な理由がない訂正・削除の防止に努めるため、事務処理規程を自社で定め、規程に沿った運用を行う

可視性の要件

以下三つの要件を全て満たすこと

  1. 保存場所に、電子計算機(パソコンなど)、プログラム、ディスプレイ、プリンターおよびこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に明確な状態で速やかに印刷または表示できるようにしておくこと
  2. 電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
  3. ファイル名などでA~Cの検索機能を確保すること
    A:取引年月日、取引金額、取引先名の記録項目により検索できること
    B:日付または金額の範囲指定により検索できること
    C:二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により記録できること

保存義務者が、税務職員による質問検査権に基づく当該電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索項目のうちBとCが不要

さらに、保存義務者が小規模事業者で、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は、全ての検索項目が不要

  • * 小規模事業者とは、電子取引が行われた日の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの期間(基準期間)の売上高が1,000万円下の事業者を指す

出典:「電子帳簿保存法が改正されました」(国税庁・PDF)

【FAXのタイプ別】電子帳簿保存法の対象内容

FAXデータの保存方法は、送信側または受信側、FAX機器のタイプにより異なります。電子帳簿保存法に沿った保存方法について、FAX機器のタイプ別または送信側と受信側において必要な対応を見ていきましょう。

【送信側】電子データで送信するタイプのFAX

ペーパーレスタイプのFAXで送信した場合は、電子取引に該当します。送信側は、送信したFAXデータを控えとして電子データで保存する必要があります。受信側の出力方式が電子データか用紙かは問いません。

【送信側】紙を読み取って送るタイプのFAX

用紙で出力されるタイプのFAX機器を用いて印字された用紙を送信する場合、電子取引には該当しません。そのため、送信した用紙は紙のまま保存できます。受信側の出力方式が電子か用紙かは問いません。また義務ではありませんが、要件に沿っていればスキャナー保存ができます。

【受信側】電子データで受け取るタイプのFAX

ペーパーレスFAXで受領した場合は電子取引に該当するため、電子データのまま保存する必要があります。送信側の出力方式が電子か用紙かは問いません。

【受信側】受け取ったデータが紙で出力されるタイプのFAX

用紙で出力するタイプのFAX機器でデータを受領した場合、電子取引には該当しません。そのため、受領したFAXデータは用紙のまま保存できます。また送信側のFAXタイプが電子か用紙かは問いません。また義務ではありませんが、要件に沿っていればスキャナー保存ができます。

電子帳簿保存法に基づきFAXをペーパーレス化するメリット

FAXで授受した書類において用紙での保存が認められる場合でも、電子帳簿保存法で定められた要件に沿えばスキャナー保存ができます。スキャンするため手間がかかりますが、積極的に電子データ化することで、書類管理やコスト削減においてメリットがあります。

業務の効率化

ペーパーレスタイプのFAX機器を導入すれば、業務の効率化が進みます。FAXデータをリモートワークなどでも取得できる仕組みが整っていれば、書類の管理や押印のために出社する必要がありません。また文書を保管するスペースが不要になり、ほかの用途に有効活用できます。

コストの削減

ペーパーレスタイプのFAX機器を使用すれば、以下におけるコストの削減につながります。

  • 印刷のためにかかっていた用紙代やインク代
  • リース契約で使用している複合機のカウンター料金(カウンター料金とは、印刷枚数に応じて料金が加算される保守料金のこと)
  • 文書の管理に必要なファイル代

保管や操作が簡単

昨今では電子データの管理に特化したソフトウェアや機器が販売されています。そのため電子データ化を進めた方が、はるかに書類の管理が容易になる可能性が高いでしょう。

電子データの管理ができる統合型グループウェア「eValue」は、ファイルの検索機能や強固な情報漏えい機能など、電子データの管理が容易になる機能が豊富です。電子帳簿保存法に則っているため、要件を網羅した保存が可能です。また今後法改正が行われたとしても、法改正に伴ったシステムが提供され、安心して利用できます。

「eValue」の導入事例を以下からご覧ください。

「eValue V」を利用した請求書のスキャナ保存事例(株式会社OSK)~導入メリット編~[3分57秒]

電子取引に該当するFAXデータは電子データで保存する

FAXで授受したデータにおいて、電子取引に該当する、かつ国税関係書類に該当する場合は、電子帳簿保存法に従って保存する必要があります。

ただし、全て電子データで保存する必要はありません。用紙で出力または送信するタイプのFAX機器を用いる場合は電子取引に該当しないため、用紙のまま保存できます。しかしペーパーレスタイプのFAX機器を用いてデータを送受信する場合は、電子取引に該当します。授受したデータは電子データのまま保存しましょう。

用紙のまま保存できる書類も、コストや必要な工程の大幅な削減につながるため、ペーパーレスタイプの複合機の導入または積極的なスキャナー保存がおすすめです。

電子帳簿保存法におけるスキャナ保存|改正のポイントと保存要件は?

本記事の監修者

岡 和恵

大学卒業後、2年間の教職を経てシステム会社に入社。
システム開発部門でERP導入と会計コンサル、経理部門での財務および税務会計を経験。
税理士、MBA、CFPなどを取得。
2019年より税理士事務所を開業。会計・税務の豊富な実務経験と知見を活かし、税理士業務のほか監修者としても活躍中。

  • 保有資格

    ・税理士・CFP

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