第166回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その94~シングルE-BOM・マルチM-BOMを深掘りする(1/3)

今更E-BOMとはM-BOMとは……と述べるつもりはありません。しかし、コンサルティングを通して「いまだしっかり理解が及んでいないな」と感じる機会が多くあります。あらためて一つのE-BOMから複数のM-BOMが生み出されることの理由の深掘りをして理解を促進しましょう。3回に分けて複数の視点から述べたいと思います。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その94~シングルE-BOM・マルチM-BOMを深掘りする(1/3)

「暑さ寒さも彼岸まで」との言葉どおりに、酷暑と併せて天候が荒(すさ)む状況が早く収まってほしいですね。
今夏の思い出二つ……

一つは私自身、線状降水帯とやらの真下で雨脚の強さをリアルに恐怖体験しました。雨(ごとき)に恐怖心を覚えたのは初めてですが「海水温が異常に高くなり、空気中の湿度が高くなってしまった結果というのは、こういうことなのだ」と身をもって理解させられた体験です。幸いにも洪水にはなりませんでしたが……

もう一つは、スマドリ@焼き鳥屋さんの出来事。「ホッピー外(そと)だけ、氷入れて」という私のオーダーに「何ですか、それ?」という超冷たい対応は酷暑によく効きました。確かに……「『ホッピーは三冷に限る!』とは、どの口が言っていたのだっけ」と自嘲気味につぶやいてしまいました。

E-BOMとM-BOMは何のためにあるのか? あえて今更……

「そのようなことは分かっている」という方は次項に進んでください。しかし、分かっているようで分かっていないという事例も多々あり、ここは大変重要な事柄であると考えています。そういう意味で、かれこれ10年以上前の本コラムを再読願ってもバチ(?)は当たらないと考えます。まして、新人といわれる域を出ない製造業ピープルには初の内容かもしれません。ぜひ、リンク先をクリックください。

第16回 「シングルE-BOM・マルチM-BOM」という考え方

第17回 「シングルE-BOM・マルチM-BOM」の具体例

第21回 E-BOMとM-BOMの境目(さかいめ)

これらの回を再読して理解してもらうと、良い復習と次回コラムに向けての予備知識となるでしょう。いずれにしても「一品熱魂」コラムの根幹をなすコンセプトですので、ぜひ、無駄足と考えずに再読ください。
リンクした回から10年以上経て、本コラムは166回目となりますがE-BOMとM-BOMの存在意義・理由に何ら変わりはありません。それでも今回その辺りを再述しようと考えた動機は、この数年で生産管理システムとの情報連携が密になって、ますますE-BOMとM-BOMの役割理解とおのおのの働きに対する考え方との区別が必要になってきたと感じているからです。

つまり……
流用化・標準化設計プラットフォーム(E-BOM構築・生成) ⇔ 生産管理システム(M-BOM構築・生成)という「双方向密連携」にどのような情報を往来させるべきか? そのためのE-BOMとM-BOMのあり方は? 情報の中身は? ということです。
モノつくり情報の「源泉」となるE-BOMと、実際のモノつくり情報となるM-BOMを、「わが社ではどのように考えるべきか?」ということについて、設計側・生産側でしっかり認識し合わないと、せっかくの双方向密連携機能が宝の持ち腐れになってしまいます。

シングルE-BOM・マルチM-BOMの存在理由

先述した10数年前のコラムに添えた図を少しバージョンアップして載せます。

基本的な考え方としてのシングルE-BOM・マルチM-BOMという関係は何も変わっていません。図にいろいろなポイントは記してありますが、「なるほど、そうですね」ということであれば次回のコラムを楽しみにしてください。少し??? ということであれば、もう少し読み進んでください。

しかし、肝はシンプルです。図に書かれている下記の意味が理解できれば良いのです。

モノつくり環境が異なる

=工程、外注先、ベンダー、支給部品の有無 などが異なる

=購買、外注、生産工程、在庫、原価 などの管理が異なる

⇒M-BOMも異なる

詳細な解説は次回以降にしますが、今回ではザックリとその意味合いが理解できれば次回へのスタートラインには立てたということです。

10年前の蒸し返しと言われれば、そのとおりかもしれません。ただ、この十数年の間にお預かりした製造業や現在進行形の製造業も含めて、「一般論は理解できますが、わが社にとって最適なE-BOMとM-BOMのあり方がよく分かりません」という実情が大変多かったと記憶しています。
設計側、生産側おのおのの実情や抱えている問題を避けて通らず、額を合わせて共有したことがない状態で「わが社にとって最適なシングルE-BOM・マルチM-BOM」を語ることは残念ながら無意味であり、その解に到達することはできないとご理解ください。

E-BOMとM-BOMとが相互に有機的に機能して、初めて全社効率改善が可能となります。つまり、もうかる製造業になることができるのです。

今回のコラムで目指すもの

今回のコラムの目指す理解として、まとめますが……
「一つのE-BOMからモノつくり環境に応じた複数のM-BOMの存在があり、そのことがE-BOMとM-BOMという二大BOM形態を必要とする理由なのだ。そして、E-BOM側の流用化・標準化設計プラットフォーム+M-BOM側の生産管理システムと、それらを有機的に機能させる情報連携とによって全社効率を高めてもうかる製造業を目指すべきだ」というところまで到達してもらえれば良いと考えます。

次回へ続く……

以上

次回は11月7日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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