第81回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その17~ 設計部門に存在する壁、設計部門の統合の実際 その1

競合がある以上、事業部や企業でさえもが分割・統合を繰り返してサバイバルしていきます。結果、異なる企業や事業部の設計対象製品であった設計部門も統合されることになります。今回はそういった統合の際の、部門全体の効率向上にとどまらず生産部門も含めた全体の効率向上を目指すための考え方を述べてみたいと思います。

設計部門に存在する壁、設計部門の統合の実際 その1

本当に暑いですね!
予想したとおりの酷暑です。冷たーい三冷ホッピーと二人三脚で乗り切る夏となりそうです。既にホッピーの空き瓶が例年より多くテラスを占領しているような気がします。

そもそも統合する気がない?

ある事業部長との面談でした。設計部門統合の話題を「御社の設計部門には、二つの設計系統がまるで別会社ように存在しますね」と持ち出すと、「将来的には統合は必須だと思っています」との意見が聞けました。
「思っている?! 本当に統合する気があるのですか?」と問いただしたい気持ちをぐっと抑えてヒアリングを続けます。

事業部長は続けて「見ても分かるとおり、製品の特性・仕様も全く異なり、統合は難しいと今まで先延ばしにしていました」との言葉。間髪入れずに私は「どこが異なるのですか? いずれもメカトロニクス製品ではないですか? 私には同じ技術カテゴリーに見えます」と反論。
事業部長「……」

そうです。だいたい事業部長からして統合する気が無いのです。当初は問題意識から「統合したい」などという雰囲気を醸し出す事業部長ですが、途端、双方の設計責任者から「そんなことできる訳がありません。設計が止まりますよ」と猛反対やら脅し(?)やらを食らい、面倒だからと先延ばしにするのです。そして最後は「私が事業部長を終えるまで何とか……」という結末でしょうか?

一方、生産部長からヒアリングをすれば、下がりきってしまったモチベーションを強く感じます。
生産部長からの嘆きは「何度提言しても似て非なる部品や、重複した購入品が別々の設計部門からのごとく出図され、つど、購買担当者が時間を掛けて名寄せを行って、できるだけまとめ購買ができるように苦労しています。それでも事業部長からは原価低減、購入価格低減、間接費用低減を迫られますが、低減を阻む原因は設計部門にあるのです。もうやっていられませんよ!」というものです。この嘆きには大いに共感をします。

しかし、ここに来て、さすがに事業環境が厳しさを増し、生産部長の嘆きでだけでは済まされず、事業部の存続の可否を迫られる現状です。先延ばしのツケは高く、結果、3割以上というドラスチックな利益改善を叶えない限り損益分岐が満たされないという現実を突きつけられて、生き残りを掛けたサバイバルゲームに否応無しに参加させられることとなります。そして丸腰でサバイバルゲームに突入しそうな勢いで、コンサルとしても放置できないケースばかりです。

設計部門の統合とは? M&A(Merger and Acquisition=合併・買収)も視野において考える

全体効率を悪くしている主因は明確なわけですから、その主因たる設計部門の統合に着手することになるのですが「どうやって?」ということになります。

まずは結論を急がず、ここで「技術部門の統合」とはどのようなことを意味するのでしょうか? 考えてみましょう。

設計者を人事異動のごとく混ぜて統合するという外形的なものでないことは自明です。そのような「形から入る統合」では実際の統合に至るまで多くの時間を要しますし、うまく行くとは限りません。絵の具ではないので「白と黒を混ぜて灰色の完成」などと容易にはいきませんし、設計者も人間という複雑系ですから「頑なに統合に抗う」ことも予想されます。従って「統合すべき対象をいかに早く認識し、それを捕捉して統合する」という視点が大切なのです。

技術という目には見えにくい無形文化財的な要素が多いわけで、それは特化した設計ノウハウを主に周辺技術や顧客文化に対する傾向と対策までもが対象となり、その表現手段として部品図面や仕様書等のドキュメント類が多岐に渡って存在することになります。

一方、視点を少し変える意味で、私の「統合体験」を紹介します。それは少し変わった形のものでした。

ある日突然、オーナー社長から「谷口、アメリカで会社買ったから、そこにあるノウハウ全部吸収してくれ」とのお達しでした。オーナーは欲しいテクノロジー・ノウハウは「買ってくる=時間を買う」というコンセプトでしたから、このような体験を数度しました。いわゆるM&Aという形態ですが、きれい事だけではありません。どうやって対応したか?

筆舌に尽くしがたい体験ではありましたが、それは後回しにして、M&Aには必ず技術部門統合と類似した対応・プロセスが必要とされることを理解してください。
では設計部門統合とM&Aの違いは何でしょうか? 概念的に比較してみましょう。

技術部門統合
おのおののノウハウを吸収・蓄積・共有し、シナジー効果を出して部門全体の新たなノウハウを構築する。設計成果物のBOMによる統一を図り流用化・標準化設計へ移行する。

M&A
買収した会社のノウハウを吸収・蓄積してシナジー効果を出して、新たなノウハウを構築する。

そうです、技術部統合には「設計成果物のBOMによる統一」「流用化・標準化設計」という下流側への大変大きな効率改善策が含まれているということです。設計部門の効率改善はもとより生産部門の効率改善により全社効率の大幅な改善が見込まれることが成果として重要となります。

一方、M&Aの場合は買収先のノウハウ吸収という側面が主となりますが、前提として設計成果物のBOM構築は完成されており、流用化・標準化設計のスキームもある程度完成されていることが必須です。さらに、もう一つの側面として競合先、もしくは将来の競合先の「消去」という実際に目を背けてはならないと思っています。これはM&Aとしての大変重要な戦略だからです。そして、この部分が大変血生臭いのです。

これからの成長を前提としている中小・中堅製造業では将来、他社やベンチャー企業のM&Aを実行する局面が想定されるわけで「関係ない、当社には無いな」とばかりは言っていられないと思います。想像力を働かせて、今回のケースを想定して欲しいと思います。せめてM&Aする側とされる側の天と地程の違いはイメージしてください。

次回は「どうやって統合するのか? どうやって技術ノウハウを吸収・蓄積・共有するのか?」という実践的な手法を述べてみたいと思います。

次回は9月7日(金)の更新予定です。

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製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin SMILE V」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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