第119回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その51~設計プロセス革新研究会の講師を承って~その2:流用設計は設計者からチャレンジを奪うものではない~

公益社団法人 大阪府工業協会様が主催する「設計プロセス革新研究会」の講師を第一回に続き第四回を承りました。この研究会も折り返し点となり、聴講者各位の意識の高まりを感じる中で、私の訴求の核心である流用化・標準化設計が設計者に及ぼす影響への誤解や杞憂(きゆう)について講義しました。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その51~設計プロセス革新研究会の講師を承って~その2:流用設計は設計者からチャレンジを奪うものではない~

本コラムの編集責任者から「そろそろシャリ金が季節感的にチョット……」というアドバイスをもらい、かき氷風に楽しんでいたハニーバーボンも底をついたことから三冷ホッピーに衣替えしました。ご無沙汰でした三冷ホッピー!
最近はやっている俳句に「シャリ金」は季語たる佇まい(たたずまい)を備えているだろうか? などとぼんやり考えています。

「流用化・標準化設計は設計者からチャレンジを奪うものではない」は古くて新しい課題

この課題は5年ほど前に本コラムで詳細に取り上げました(第55回~第61回)。
多忙な皆さんもぜひ、もう一度読み返してもらいたいと思います。この課題をセミナー・テーマに選んだのは当協会のセミナー開催責任者です。私の関与はありません。その意味を考えると、設計効率向上の手段として流用化・標準化設計を選択しようとした時に必ず(?)浮上してくる課題、もしくは疑問なのかもしれません。

確かに、今でも津々浦々で行うセミナー終了時、質疑応答のトップ3の座を揺るぎないものにしていると思っています。
誤解の根本は「既にあるレゴブロック(今ある設計資産)しか使わず、設計を繰り返す事は新しいノウハウや知見へのチャレンジを設計者から奪ってしまうのではないか?」という短絡した考え方からの由来ではないでしょうか。

先述したコラムを理解された皆さんには、「なるほど誤解だ」と共感してもらえると思いますが、「いまだに流用化・標準化設計への改革を覆う誤解として存在している、もしくは存在する可能性があるのだ」と認識する必要性をあらためて感じています。

至極端的に述べれば……
設計部門を二階建てにして、

一階
BOMによる流用化・標準化設計の部屋=不具合のない「正」となる設計成果物のアウトプット=ECM(注)の実行
二階
新規開発。新規テクノロジー開発の部屋=不具合は新規知見・ノウハウの種=設計者技量アップの育成道場
  • (注)ECM:Engineering Chain Management

この一階二階の仕切りといいますか、存在意義をはっきり区別することにより設計部門をマネジメントしていくことが、今回の課題を解消する方法といえます。

「一階では余計なチャレンジを行うことを禁じ、二階では思い切りチャレンジを奨励する」というメリハリの利いたマネジメントが必要なのです。さらに、設計者も一階と二階を行ったり来たりすることで、ECMというある正確性を求められる設計プロセスと、自由な発想で不具合を恐れない設計プロセスとの両刀使いに成長して、設計者としての自己実現をかなえてもらえると思います。

残念ながら、この一階、二階が混然一体となってしまっている設計部門からは、下流側も含めた全社効率を向上できる設計成果物は期待できません。私がお預かりする設計部門のほとんどがこのような初期状態であることも事実です。

「一階と二階の建坪比率は?」セミナー後の質問から

セミナー後の質疑応答から「設計部門を二階建てにリフォームするという考え方はよく理解できました。しかし、その建坪比率はどのように考えたらよいでしょうか? 例えば一階2:二階1とか……」という質問もありました。

なるほど、それぞれの規模感の決定根拠とでも言いましょうか……面白い質問ですが、ここには経営的視点が必要とされる良い質問です。

その比率決定には経営層の経営判断が常に必要でしょう。
一階は「今日の飯」を支える、つまり本業としての屋台骨を支えられる生産(売上、利益)を可能とすることを理想とします。とにかく一階からアウトプットされた設計成果物の不具合は、そのまま売上・利益「減」に直結します。
自(おの)ずと、実績のある設計成果物の組み合わせとして流用化・標準化設計が必須となっていきます。

では、二階はというと……
この部屋の運営資金は多くの場合「研究・開発費」という経費科目となります。
この研究・開発費をどの程度の規模にするのかは、「明日の飯」への投資として、中期、長期経営計画との同期ばかりではなく「節税対策」として今期の利益をにらみながらの規模になり、まさに経営層マターであると思います。

とはいうものの、それには業界標準も存在していて、いくら利益があっても、中小・中堅製造業ではたとえ高利益であっても通常、売上の5%程度が限度でしょう。

つまり、一階が50億規模の売上では二階の運営資金は多くても2.5億ということになります。もっとも、二階の活動から全く売上が立たないということはないでしょうが、多くの場合、不具合解消で無利益もしくは赤字というのが実態だと考えます。従って間接的に研究・開発費での補塡(ほてん)となってしまいます。

結論として二階が一階より建坪が大きいということは考えられません。頭でっかちにはならないということです。さらに、一階の建坪や規模の大きさが二階の活動を支える資金を生み出し、活性化させる訳です。その意味で一階の「稼ぎ」がモノ言う訳です。

これが「一刻も早く一階を完成させましょう」と声高に私がアピールする理由でもあります。

以上

次回は11月5日(金)更新予定です。

(PS)

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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