第90回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その25~「製造業は二毛作」保守部品事業を考える Part2

「製造業は二毛作」と何度か述べています。製品で儲ける、そして、保守部品で儲ける。ところが保守部品で儲けることができない企業を多く預かります。保守部品事業の改善策としてPart1の「混沌の認識」に引き続きPart2として、その混沌にかき回される設計部門の現状や大切なCSの喪失を述べます。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その25~「製造業は二毛作」保守部品事業を考える Part2

関東の桜はとうに散ってしまいましたが、大型連休に向かって東北北部や、北海道はこれからが見ごろ。
「平成」から「令和」にまたがる桜前線です。花より団子じゃなくホッピーの小生ではありますが……

(この原稿は大型連休の突入前に書かせていただきました)

「この部品って、どの部品?」の最終処理先=設計部門

保守部門から結局、設計部門に回ってきた「この部品って、どの部品?」という「お仕事」ですが、設計部門にとっては厄介な仕事です。そうは言っても設計部門が生み出した部品ですから「誰だ、この部品を設計したのは!あっ俺だ!」てな感じです。「天に唾を吐く」とまでは言いませんが、蛸壺設計で類似部品ばかり生み出した設計部門に、この厄介な仕事が回帰したことは間違いありません。前回(第89回)紹介したケース2とケース3のその後として、設計部門での顛末を辿ってみましょう。

第89回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その24~「製造業は二毛作」保守部品事業を考える Part1

ケース2の場合

依頼を受け取った技術部長は新人のX君を呼んで、このように指示しました。
「この写真に写っている部品には類似バージョンがあるようなので、どのバージョンか捕捉・確定してくれる?」
X君固まる……、そして申し訳なさそうに「部長、どうやって捕捉・確定させるのでしょうか?」と質問。
部長「ほら、あの辺りに、この会社向けの工事ファイルがたくさんあるから、保守部門のAさんに、どのあたりの工事番号かアタリを付けてもらって探して」
X君「アタリですか……」
部長「僕も分からないし」とにべもない返事。

しょうがなくX君はAさんにそのアタリとやらを聞くことに。
優しいAさん「納入年度からすると、きっとOOOからOOOの工事番号だと思う」
X君、早速ファイル棚から少し日焼けした数冊を超えるファイルを自席に持ち込み、格闘を開始しました。

ファイルに綴じられている図面を片っ端から探していくのですが、写真に写っている部品と思われる図面を中々見つけられません。そこで再び生き字引Aさんに「組図のどのあたりの部品でしょうか?」と相談し、ようやくそれらしい図面を見つけることができました。めでたし、めでたし……ではないのです!

ちょっと他の工事ファイルも覗いてみると同じ部品ですが図面に△1があります。そうです設変(設計変更)が行われていました。
X君「これが、バージョンがあるという意味かー」と合点がいきました。となれば他のすべてのファイルも調べる必要があります。何と他の工事ファイルには△2がありました。一応、確認の為に原図を確認したら△4にまでなっていました。
ここまで来るのに丸々1日費やしました。「あーあ、先輩に依頼されているCAD製図おくれちゃうなーー」と独り言。
結果、「設変無し」、「設変1」、「設変2」の3種類がアタリを付けた工事番号間にはバージョンとして存在することが判明。いずれも公差変更と材質変更なので写真からの比較はできません。困ったX君は部長に「どうやら3種類あるのですが……」

ここで部長はこのような判断をしました。
「そうか、これ以上客先に質問はできないだろうから、その3種類全て作って納品しよう」
「このうちどれかが使えますって」

困ったものです。保守部品で儲かるどころかこのような保守事業を続けたら大赤字です。
実は設計部長は内心設変4までの全てを納品したい衝動に駆られているのです。
ファイルに綴じられている図面が全て納入品の最終型ではない可能性も知っているからです。
まさか5種類送る訳にもいかず。さすがに3種類にとどめました。悲しいかな、設変の未反映という設計責任上の大罪の存在です。

さらにとどめが客先から届きました
「ふざけるな!3度も部品脱着させる気か!設計したのはそっちだろ、何で正しい部品が分からないだ!」と……
X君小声で「でも分からないんです。うちは……」
大赤字+CS喪失です。

ケース3の場合

保守部門からの依頼を受けて設計部長「困り顔」
「この製品、昨年退職したB先輩の設計だな。確か……しょうがないから工事ファイル探してみるか……」
しかし、これが一向に見つからない。
四方八方あたったが見つからないのです。困った設計部長、最後の手段とばかりB先輩に携帯しました。

B先輩と一通りのご挨拶を済ませ、話を切り出しました「あのー、先輩設計製品の工事ファイルが見当たらず、困っているのですが……」
B先輩からは平然と「おー、あのファイルなら我が家にあると思うよー」
設計部長「えっ!!」
B先輩悪びれずに「あの製品の設置作業で家と客の往復で会社なんかほとんど行ってなかったし、だから、設置完了して、そのまま家に置きっぱなんだよー」

設計部長はコンプライアンスがどうのこうのということはさておき、「まずは宅急便で返却してください」と依頼しました。無事、ファイルも返却され、当該シャフトの図面にB先輩が済まないとばかりに付箋が貼ってあり、部品確定は完了。めでたく(?)正しい部品を正確にお届けすることができました。めでたし、めでたし……ではこれまた無いのです。

部品をお届けして数日後お客様の設備保守部長から電話が設計部長に掛かってきました。
客「あなたが設計部長?」なんか怒っていそうな口調です。
部「そうですが……」
客「ちょっと、うちまで来てくれる?」
部「今からですか?」
客「そう!!」とただならぬ雰囲気。
部「部品違ってました?」
客「いいや、合ってるよ。でもとにかく来て」と強引です。ましてや大お得意さんでもあり、設計部長、車を飛ばして訪問しました。

設備保守部長は開口一番「部長、このシャフト交換してみてくださいよ」と新しい部品を渡されました。
設計部長は半信半疑で「はー」と怪訝そうに作業を開始しました。ここでようやく全体の意味が分かりました。交換するシャフトにアクセスできないのです。触れないのです。つまりこのままでは古いシャフトを外せないことに気が付きました。客先に設置後は周辺に付帯設備が存在し、邪魔しているのです。生産現場とは環境が大きく異なります。
設備保守部長は言います「何とかシャフト外したとしても、この環境で、どうやって心出しするの?」
設計部長は「そうですね、すみませんでした配慮が足りませんでした」と謝る事となりました。

質問です。「生産」と「保守」の唯一の相違点は何でしょうか???

「生産」は部品を「足す」作業です。
「保守」には古い部品を外すという「引く」仕事があるのです。その後新しい部品を「足す」のです。

そうです、儲かる保守事業にしたければ、この「引く」作業の認識と客先の現場は生産現場のようなモノを組み立てやすい環境ではない事を想定すべきなのです。つまり、設備保守作業者の視点に立った保守部品を提供すべきなのです。
例えば心出し済みのユニット交換等を考えたいものです。

今回述べた二つのケースはお預かりしている会社で実際にあったことです。このようなケースが綿々と毎日続いているのです。どれほどの設計工数を無駄にしているのか想像してもらえると思います。あの超多忙な設計部門の工数を!です。

文面からの反省項目が多々あると皆さん感じていると思いますが、まずは「この部品って、どの部品?」がいかに設計部門の負担となり、設計効率向上への阻害要因であることを認識しましょう。どうやったら設計部門レスで正しい部品を捕捉し、提供できる様になるのか?大変重要なテーマです
そして、正しい部品の提供だけではCSは上がらないことも併せて認識ください。保守目線がとても大切です。

設計部門レスで正しい部品の捕捉とは……
設備保守作業者視点や立場に立った保守部品供給とは……

次回に回しましょう。

次回は6月7日(金)の更新予定です。

ご案内

書籍

当コラムをまとめた書籍『中小企業だからこそできる BOMで会社の利益体質を改善しよう!』を日刊工業新聞社から出版しています。
BOM構築によって中小企業が強い企業に生まれ変わる具体策とコツをご提案しています。

Nikkan book Store(日刊工業新聞社)
中小企業だからこそできるBOMで会社の利益体質を改善しよう!(日刊工業新聞社Webサイト)

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部品構成表管理システム 生産革新 Bom-jin

製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin SMILE V」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

ハイブリッド型生産管理システム 生産革新 Raijin SMILE V

「生産革新 Raijin SMILE V」は、標準品や規格品の“繰返生産”と、個別品や特注品の“個別受注生産”との両方に対応したハイブリッド型の生産管理システムです。また、部品構成表管理システム「生産革新 Bom-jin」と連携し、設計部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減、納期短縮、生産効率の向上を実現します。

この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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