第176回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その98~N社全社効率改善改革の社内資料を共有します その1アプローチ編

中小中堅製造業を取り巻く環境は待った無し! で生き残りへの改革が迫ってきます。効率改善改革に挑むN社の社内資料公開の許しを得ましたので、共有します。悩める製造業の改革への気づきとなることを望みます。大変貴重な資料ですので、複数回に分けて解説・共有したいと思います。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その98~N社全社効率改善改革の社内資料を共有します その1アプローチ編

7月の前半は中南部アフリカ・フォーラムに参加していました。最大の話題はザンビアのCopper Belt(銅鉱床帯)の採掘権を巡り、欧州・米国・中国・日本がどのように関与していくのか? でした。レアメタルもそうですが、中国の圧倒的な影響力を肌で感じます。それに比べて日本の存在感についても考えさせられました。

というわけで、涼しいケープタウンにしばらく滞在し、暑熱順化ないまま酷暑の日本帰国でこたえます。しかし、中南部アフリカ、どこに行ってもノンアルコールビールがありました。特にザンベジ川のほとりで野生の象さん、カバさん、キリンさんたちと一緒に飲むノンアルコールビールは格別でした。

N社への謝辞

まずは、本コラム(愛読者各位)のために社内資料の公開を許可していただいたN社経営層各位に感謝いたします。ここまで率直な資料を公開できる機会はまれなことと思っています。それ故、改革の必要性を認識しながら、諸条件から躊躇(ちゅうちょ)している中小中堅製造業の経営層の背中を押す一助となることを望んでやみません。

N社の経営層は全社効率改善改革にどの様アプローチしたのか?

はじめにN社の概要をご紹介します。中堅(従業員150名)の自社ブランドを持つ生産設備の設計製造業ですが、社歴は100年以上で製品群は業界デファクトとして認識されています。しかし、業務の流れとしては社歴の長い会社に起こりがちな「昔から、このやり方でやってきました」という現状維持の連続であったと考えています。もちろん、現状に疑問を抱き、効率改善へのチャレンジを試みた痕跡は認識できるのですが、長い社歴という「大きな慣性力」にあらがえるような根本からの改革には至らなかった様子でした。

そのような歴史の中、前社長が果敢に挑戦を開始。同時に当社・大塚商会とコミュニケーションを開始していただき、周到な計画を立てるべく共有を図ってきました。途中、社長交代というイベントがありましたが、新社長の理解と共有により改革継続というバトンを引き継ぐことができました。さらに幸運にも、前社長が改革プロジェクトのアドバイス役として残留することとなり、改革方針・動向の継続性を保つことができました。

私自身、「経営者交代による改革中断」という青天の霹靂(へきれき)を体験したことがありますが、その徒労感、ガッカリ感たるや筆舌に尽くし難いものがありました。経営層の経営(改革)方針の継続(=忍耐)は大きな改革の成就には不可欠だと考えています。従って、全社効率改善という大きな改革の実行・成就には経営層マターとして中長期の視点とリソースの確保が不可欠なのです。

中期経営計画という改革の骨子の存在

先述しましたが、経営層の中長期経営のコンセプトを支えるものは「中期経営計画」です。

この計画を伴わない改革運営は考えられません。まして、全社効率改善という大改革に経営計画が伴わないのであれば、経営層の経営目標として改革自体が存在しないことと同義です。

  • 改革方針と目標
  • リソース確保
  • 進捗(しんちょく)管理

この経営計画三種の神器なしに改革は成就しないということです(後に少し詳しく述べます)。

プロジェクトだけ立ち上げて「改革実行よろしく!」と丸投げしてしまう経営層に遭遇したことがありますが、そのような改革は必ず頓挫してしまいます。

N社の改革に向けての中期経営計画を見てみましょう。

大目標は「儲(もう)かる製造業へ脱皮する」ということです。経営層から聞こえてきた「円安で何とかパクパクしている金魚状態」との自嘲気味なつぶやきからは「危機感」を率直に感じました。愛読者各位においても「ウチも同じ」ではないでしょうか。

大目標への改革手段として

  • 見積精度の向上(利益確定の精度向上)=属人化から流用化・標準化へ
  • 設計成果物(図面)の2S=設計成果物を2Sして共有できる設計資産とする
  • 流用化・標準化設計を支えるBOMと設計プラットフォームの構築

以上が骨子として読み取れます。

この中期経営計画の存在が改革成就に向けてのコンセプトとなり、経営層はもとより全社員が改革の目標と方角を認識するための大切な「改革の原本」となります。改革中の紆余(うよ)曲折は想定され、迷走もあるでしょうが、そのような時はこの「改革の原本に立ち返る」ということが大切です。

再度述べますが、中期経営計画の普遍的な働きとして期待するのが、以下となります。

  • 改革方針と目標の告知=この経営計画に基づき全部門が具体的施策を練り、コミットする(=こうやって実現する)
  • リソース(ヒト・モノ・カネ)の確保=改革遂行への予算化=いつ、どのくらいのリソースが必要なのか
  • 進捗の管理(確認と修正)=マイルストーンの設定と進捗度合いの確認と対応策

改革という全社的に見ても負荷の重い経営層マターに対して、中期経営計画こそ経営層自身の期待役割を求める仕組みとして重要であることを再度認識してください。

なぜ効率が悪くなってしまったのか?=なぜもうからなくなってきたのか? という自己現状分析の大切さ

私は「現状否定」なくして改革のモチベーションは生まれないと、終始コンサルティング中に述べます。しかし、ここには「過去否定」は含まれていません。それは、少なくとも会社誕生以来、現在までの努力の結果、今の会社が成長し、存在するわけで、現在までの会社存続に対する努力を否定するものでは決してありません。

あくまで改革に必要な視点は「現状のままの継続で生き残りが図れるのか?」なのです。

従って未来という方向に視野を向け直して、「現状のままで良いのか?」⇒「現状分析」⇒「現状否定」という流れが必須なのです。N社はその必須性に気づきをもって全社共有を図る意味で「現状分析」を実行したのです。

中期経営計画の重点施策の起点でもある「設計部門の流用化・標準化設計」についての分析資料を添付します。

愛読者各位の反応として「わが社のこと? わが社と同じ問題だ!」と思ったのではないでしょうか?
原因分析の詳細やその評価は省きますが、私が「N社は改革をきっと成就できる」と確信を持った理由として

「要因は独立しているのではなく連鎖している。誰かの責任ではなく仕組みの問題が大きい」
との結論を導いたことにあります。

書いてしまえば、たった一行なのですが、経営層自らこのような現状否定をもたらす勇気には敬服します。

「部門まして社員の責任ではなく、会社の仕組み(=経営)の問題である」と結論付けたのです。経営層といえども「人の子」です。会社の仕組みに対する問題提起は時として天に唾することとなり、その意味では覚悟を持っての現状分析であったと想像しています。しかし、「改革すべきは改革する」という強い意志の裏打ちを同時に感じることになりました。

初回は改革へのアプローチ編として解説し、共有を図りました。
改革へのアプローチとして……

  • 中期経営計画
  • 現状否定に向けての自社現状解析

これらがいかに重要か理解してもらえたと思っています。

次回は直接改革の推進にあたるプロジェクトチームや社員に対する「改革への働きかけ」をどのように行ったのか?
各部門・社員に対する動機付け(モチベーションプランニング)の実際をN社資料と共にご紹介します。

以上

次回は9月4日(金)の更新予定です。

書籍ご案内

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